8月10日、人種差別撤廃委員会はレバノン政府報告書の審査を始めた。レバノン政府は7人、傍聴NGOは25人ほど。政府報告は、レバノンの宗教構成(シーア、スンニ、クリスチャン)、パレスチナ難民、そして現在のシリア難民が中心だった。委員の質問では、在レバノン難民のこと以外にも、世界に多い在外レバノン人についても話題として取り上げていた。
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レバノン政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/LBN/18-22.
31 August 2015)によると、レバノン憲法前文は意見・表現の自由を民主主義の保障としている。憲法9条は、信仰の自由を定め、憲法13条は意見の自由を確認し、表現の自由は口頭、文書、プレスの自由、集会結社の自由も含んでいる。
これらの権利への制限は個別に刑事立法に明示されている。刑法第317条は、派閥や宗教対立を助長する目的とする著述や言明、共同体の間に対立を煽動する著述や言明を犯罪化している。刑法第318条は、317条に示された目的のために設立された結社への参加者を処罰する。刑法295条は、戦時に、又は戦争直前に、国民感情を傷つけ、派閥や宗教対立を助長する目的でプロパガンダをなすことを重罪としている。1994年のテレビ・ラジオ放送法第3条は、オーディオヴィジュアル・メディアは自由であり、情報の自由は憲法及び法律に従って行使されるとする。憎悪及び過激主義の流布、人種主義や皮膚の色及び民族に基づく優越性を伝える行為に刑罰を定めている。
印刷物について、印刷出版法を改正した1977年の法律第24条は、出版、プレスにおける言明その他の類似の行為によって犯罪実行を煽動した者に、刑法第218条に従って、刑罰を科すとしている。犯罪を呼び掛け、そそのかす文書は煽動に当たる。同法律25条は、レバノンで承認された宗教のいずれかを軽んじ、派閥や人種的対立を助長し、平穏を害し、レバノンの安全、主権、統一を危険にする出版物の流布を犯罪とする。検察は当該出版物を差し押さえることができ、管轄裁判所に事案を送り、最低6カ月の間出版を停止できる。常習犯については刑罰を2倍にすることができる。
人種差別と闘う努力にかかわらず、多くの地方自治体はこの種の不法行為に忙殺されている。近隣諸国の政治状況の影響で、外国人労働者や難民が多く滞在し、事件が起き続けている。自治体は、一定の時期の外国人の移動の禁止によってこうした行為を予防する措置をとっている。こうした措置は、安全が損なわれ、犯罪が増加し、レバノン市民に危険が生じていることによって正当化されている。
人種的優越性や人種差別に基づく外国人労働者に対する宣伝の禁止について、2014年11月、労働省は覚書48/1を出して、人道的価値に反する広告を除去するように通達した。