Sunday, August 07, 2016

日本会議の系譜を探る

菅野完『日本会議の研究』(扶桑社新書)

著者は自称保守派で、この出版社から、日本会議の謎に迫る本が出た、と言うことは何を意味するのかと考えながら読んだ。マスコミではあたかもタブーであるかのごとき印象のあった日本会議の組織、歴史、活動を解明した最初の本だ。これに続いてこの夏何冊もの「日本会議本」が出ているが、まずは本書から。全共闘と対立した長崎大学の右派グループ、そして政治活動をしていた時代の生長の家の若手幹部たちに遡る系譜論的な手法はわかりやすい。左翼の時代が終わり、日本社会が民主主義運動を馬鹿にした時期に、デモ・陳情・署名・抗議集会・勉強会と言った「民主的な市民運動」をやり続けてきたのが日本会議と言う「極めて非民主的な思想を持つ人々だった」という。明治憲法復元を目指す非民主的思考の持ち主が、なぜ、どのようにして形成され、活動を続けてきたのか。「一群の人々」の個人的系譜に絞り込んでいるのがどこまで適切かはともかく、「このままいけば、『民主的な市民運動』は日本の民主主義を殺すだろう、なんたる皮肉、これでは悲喜劇ではないか!」。(週刊金曜日の記事によると、著者は、女性に対する暴力的な言動で話題になっているようだが。)