Tuesday, March 14, 2017

現在の世界を法学から読み解く試み

藤田潤一郎・田中綾一編著『今、私たちに差し迫る問題を考える Vol.2』(関東学院大学出版会、2017年)
関東学院大学大学院法学研究科による市民向け公開講座(2014年度)の記録である。7本の論考が収録されている。日本国内について、「社会変動と家族法規定――非嫡出子法定相続分規定意見決定を素材として」「「移民」の権利」「ニホン刑事司法の古層――刑事裁判(官)のアニムス・アニマ」「2014年改正会社法上の監査等委員会設置会社の検討」。世界の視点からとして、「WTO紛争会稀有制度の意義と課題」「GrexitBrexit――国民投票が揺るがすヨーロッパ」「教皇フランシスコトローマカトリック教会」。
「「移民」の権利」では、外国人技能実習生制度の問題点を検討し、在留外国人の現状を整理して、「外国人労働者の受け入れ」問題ではなく、「移民」を認め、人間的な取り扱いをするよう提言する。
「日本刑事司法の古層」では、戦前の治安維持法・司法官僚制・特高警察の思想が維持・温存された戦後刑事司法の問題性を解明するために、戦前の人脈と思想を掘り起こしている。池田克、田中耕太郎、小野清一郎、団藤重光、斎藤悠輔、石田和外、岡原昌男を追跡する。私も20年ほど前まで、小野清一郎と団藤重光に焦点を当てて研究したことがあったが、その後はやりきれていないので、興味深い。
GrexitBrexit」では、EUとの関係をめぐるギリシアとイギリスの国民投票の共通点と差異を分析していておもしろい。