Saturday, March 04, 2017

西欧の混迷とアジアの勃興の意味を解き明かす

進藤榮一『アメリカ帝国の終焉――勃興するアジアと多極化世界』(講談社現代新書)
アメリカ外交研究と国際関係論の碩学が、これまでの研究を踏まえて集大成した現代世界論のエッセンスである。
アメリカを中心とする西欧の文化的経済的衰退と混迷、その象徴としてのアメリカ産業・製造業の衰退、これに対して中国を中心とするアジア世界の文化的経済的飛躍。西欧の没落とアジアの台頭という、わかりやすい図式は目新しくないが、いま改めてその意味を具体的に問う著作である。
単にアジアが発展しているというだけのことではなく、ASEANが域内生産ネットワークの中心となったこと、その主導役が日本から中国に変わったこと、そして東アジアのトライアングル(日本、中国、ASEAN)とともに、南アジアのトライアングル(中国、インド、ASEAN)が形成され、両者を合わせて、アジアのダイアモンド構造への進展がみられるという。経済生産、貿易量、資本投下その他各種の指標から言って、いまやすでにアジアが世界の牽引車となりつつあり、今後その勢いは増すばかりだという。それゆえ、著者は「資本主義の終焉」ではなく「資本主義の蘇生」を語る。
グローバリゼーションがアメリカ中心の資本主義体制を支え、発展させたはずが、逆にアメリカの衰退とアジアの発展を帰結した理由を探り、そこから次を展望する。それゆえ、日同盟一本やりの安倍外交の破たんは明らかであり、異なる道を模索する必要が説かれる。
2020年や2050年の予測が示されているが、大筋は著者の言う通りだろう。多少の変動や揺り戻しはあるが、もはや現実は止められない。アメリカが断末魔の戦争に打って出ない限り。