ルツェルン旧市街を歩き、カペル橋と水の塔を渡る。カペル広場には出店が並んでいた。イエズス教会、フランシスコ教会をまわって、美術館を訪れた。鉄道駅の隣にあり、目の前にはルツェルン湖(フィアヴァルトシュテッター湖)の遊覧船の船着き場がせり出している。対岸にはホーフ教会の尖塔がそびえる。
ルツェルンにはローゼンガルト美術館とルツェルン美術館がある。ローゼンガルト美術館は近代美術の名作ぞろいだ。クレー、ミロ、ピカソがずらりと並ぶ。ルツェルン美術館はむしろ現代アート中心だ。
2つの展示が行われていた。
1つは18世紀以来の美術と日常生活に焦点を当てている。ホドラー、ペヒシュタイン、ジョバンニ・ジャコメティ、スペッリ、ユトリロなどの絵画に始まり、現代アートのインスタレーションや映像作品に至るまで、町、街並み、家庭をはじめ、多様な作品が展示されている。バロットンの後ろ姿の裸婦像は「華麗な花を生けた花瓶のようだ」と書かれていた。展示は、春、夏に何度か入れ替えられるという。
もう1つは、CLAUDIA COMTE展「10の部屋、40の壁、1059平方メートル」という展示である。コムテはグリッドとシステムとストロークの美術家だ。絵画、彫刻、インスタレーションで、ポップアートにも近い。ブランクーシの影響を受けたようだ。タイトル通り、10の部屋にそれぞれの展示がなされている。1部屋1コンセプトだ。作品を持ち込んだというよりも、壁面に絵を描き、ラインをつくり、その中に作品を展示している。ある部屋はチーズの絵とチーズをモチーフにした立体。ある部屋はドーナツ型の石彫数点が並ぶ。ある部屋には巨大なブランコと壁にはストローク。ある部屋にはプラスチック・オブジェ。
どれもおもしろいといえばおもしろいが、何を伝えようとしているかはわかりにくい。こちらが鈍感なだけか。解説では、直線、カーブ、多彩なグリッドによる分割と流線のことが繰り返し書かれている。