2017年の「欧州ジェンダー平等研究所(EIGE)」によるパンフレット『女性と少女に対するサイバー暴力』の紹介である。データは当時のもの。
EIGE, Cyber violence against women and
girls, 2017.
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データの利用可能性と調査
EUにおけるサイバー暴力の情報は乏しく、被害者や被害について十分わからない。もっとも使える情報は2014年の「欧州人権機関(FRA)女性に対する暴力欧州調査」である。EUについての最初の調査である。2008年のデンマークの調査依頼、十分な調査はない。サイバー暴力が犯罪化されていないため、警察情報や司法情報は不十分である。さらに調査が必要である。
1.オンライン投稿により女性をおびき出す有害な情報(リクルート)
2.サイバー暴力被害者が経験する被害の重大性の評価
3.再バー暴力に対処する警察や司法の良き実行例
4.被害者化を予防する危険要因とリスク評価の確認と分析
法執行の対応
サイバー暴力に対処する法律を制定した国がいくつかる。イギリス、フランス、ドイツ、マルタではリベンジ・ポルノを犯罪化した。アイルランドとスロヴェニアでも審議中。サイバー暴力の女性被害者への刑事司法の対処は不適切である。イギリスではリベンジ・ポルノが犯罪化されて以後、6か月で1,160件の報告があるが、その61%には何の対処もなされていない。
2013年、「女性に対する暴力を終わらせる連合(EVAW)」が暴力とハラスメント・オンラインの訴追に関するラウンドテーブルを招集したが、司法に関する報告はばらばらで、実効的でない。刑事司法の対処が不十分なのは、オンラインとオフラインの誤った二分法が一因で、サイバー暴力を過小評価しているためである。
立法
イギリスでは2015年4月、同意のない性的写真や動画の共有を2年以下の刑事施設収容の刑事犯罪とした。2016年9月、法律施行以来200人以上が訴追された。
2016年、フランスは「デジタル共和国法」を制定し、リベンジ・ポルノの刑罰を重くした。2年以下の刑事施設収容又は6万ユーロ以下の罰金である。
同様の理解はドイツの裁判所が、2014年、元パートナーによるポルノ販売を違法とした。
調査と介入
2009年、イギリスは「サイバー・ストーキング調査センター」を摂津市、サイバー暴力の動機、影響、リスク評価を始めた。2011年、同センターはサイバー・ストーキングの研究結果を公表した。2015年、リベンジ・ポルノ被害者ヘルプラインが設立され、6か月でおよそ2000の電話があった。
2017年7月以来、スロヴェニアは「サイバー女性に対する暴力」プロジェクトを始め、啓発と教育を行い、女性に対する暴力ゼロトレランスのメッセージを出した。
結論と勧告
十分な調査や情報がないので、EUレベルのサイバー暴力について適切に評定できないが、この現象が増加し女性と少女に悪影響を与え、被害者のリアルな生活に重大な影響を及ぼしていることは言える。適切な対処をするためにさらに調査が必要である。
1.サイバー暴力が女性に対する暴力の一形態である事実を認識して定式化した政策が重要である。サイバー暴力に対処する戦略には、被害を受ける女性の声が反映されるべきである。
2.移民省・内務省のウエブサイトのサイバー犯罪の定義にすみやかにサイバー暴力の諸形態を含めるべきである。
3.EUはサイバー暴力の諸形態の定義に関する合意形成の努力をするべきである。
4.EUレベルのサイバー暴力の現象と被害についてジェンダー関連情報を収集し、効果的な介入のための指標を明らかにするべきである。
5.対策アプローチのために、女性と少女がインターネット利用空間における地位を否定されてはならない。
6.被害者の視点で対策を検討するため、質的かつ量的研究が必要である。
7.ジェンダー視点でのサイバー暴力の研修が導入されるべきである。
8.サイバー暴力について女性と少女に教育する啓発キャンペーンが必要である。
9.被害を避けるためICT業界での自主規制などの予防措置が講じられるべきである。
10.
サイバー犯罪と闘うEUレベルの諸機関はサイバー犯罪のジェンダー的形態に取り組むべきである。
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註の中で、サイバー暴力被害のために自殺した事例が掲げられている。
2016年、イタリアのティチアナ・カントンはリベンジ・ポルノ被害を受け、仕事を解雇され、自殺した。
2012年、カナダの15歳のアマンダ・トッドは同意のないまま写真をオンラインに配信s慣れ、自殺した。
2013年、ブラジルの17歳のジュリア・レベッカは、パートナーガ同意なしに彼女の性的な写真をオンラインに掲載した後に、自殺した。