2020年5月、アントニオ・グテレス国連事務総長は「国連ヘイト・スピーチ戦略と行動計画」を決定し、公表した。その概要を下記で紹介した。
前田朗「国連ヘイト・スピーチ戦略と行動計画」『部落解放』805号(2021年)
*
「戦略と行動計画」本体は数頁の文書であるが、これを補充する文書として「国連ヘイト・スピーチ戦略と行動計画――国連フィールド・プレゼンスのための履行に関する詳細ガイダンス」(2020年9月、全52頁)が国連のサイトに公表された。重要文書であるので、そのエッセンスを紹介したい。
*
関連する条約や国際人権文書には次のようなものがある。
1965年の人種差別撤廃条約第4条
1966年の国際自由権規約第20条2項
2012年の国連人権高等弁務官事務所・ラバト行動計画
2012年の人種差別撤廃委員会・一般的勧告第35号
2017年の国連人権高等弁務官事務所・「権利のための信仰に関するベイルート宣言」
2020年の国際自由権委員会の「平和的な集会の権利に関する一般的勧告第37号」
*
目次
事務総長まえがき
要約
Ⅰ 序文――共通アプローチ
Ⅱ ヘイト・スピーチを理解する
A 戦略においてヘイト・スピーチとは何か
B 戦略がカバーするスピーチの類型は
C ヘイト・スピーチの深刻さをいかに理解するか
D 戦略は国連フィールド・プレゼンスにいかに関連するか
Ⅳ 戦略の13コミットメント履行のための行動要点と特別勧告
1 ヘイト・スピーチの監視と分析
2 ヘイト・スピーチの原因、運搬者、実行者に対処する
3 ヘイト・スピーチ被害者を励まし支援する
4 関連する行為者を招集する
5 新しいメディアと伝統的メディアに関与する
6 テクノロジーの利用
7 ヘイト・スピーチに対処し反対する手段としての教育
8 ヘイト・スピーチの原因と運搬者に対処する平和で包摂的で正当な社会を促進する
9 擁護者の関与
10 外部コミュニケーションのためのガイダンスを開発する
11 パートナーシップを活用する
12 国連職員のスキル形成
13 国連加盟国の支援
*
13のコミットメントに27の行動が設けられ、行動が数項目あるため、全体として107項目となっている。
*
「Ⅱ ヘイト・スピーチを理解する」までは、ラバト行動計画など既存の文書に依拠している。
*
「Ⅲ 戦略の13コミットメントの履行」「Ⅳ 戦略の13コミットメント履行のための行動要点と特別勧告」は本文書の新しい部分である。