Sunday, May 23, 2021

ヘイト・スピーチ禁止法(201)デンマーク

デンマークがCERDに提出した報告書(CERD/C/DNK/22-24. 7February2019

二〇一五年春、ヘイト・クライムの予防と闘いの全責任がデンマーク情報部から警察庁に移管された。警察庁は警察部局と警察官がヘイト・クライムに的確に対応できるように十分な研修を行っている。法執行官がヘイト・クライムをいかに認知、記録、捜査、処理するかは警察大学校の研修部門の任務である。警察庁はヘイト・クライムの認知のための監視計画を策定している。監視計画の実施のため、警察庁はヘイト・クライムの捜査のためのガイドラインを作成した。二〇一八年、警察庁はヘイト・クライムをすべて記録するため警察部局と協議している。

二〇一七年、ヘイト・クライム事件は四四六件報告された。一〇二人に対して九五件の訴追がなされている。約半数が被害者の国籍、民族、人種又は皮膚の色という人種主義動機で行われた。この傾向は二〇一五年及び一六年と同様である。

検察庁は刑法第二六六条、第八一条六項、及び人種差別禁止法に関するガイドラインを作成しているが、二〇一六年、改正がなされた。当該事件におけるヘイトが刑法犯罪としての動機に該当するかどうかを明確にするとともに、すべてのヘイト事件を全警察組織が統一的に処理できるようにした。ガイドラインは人種差別撤廃条約に従って実効的な捜査を行うことができるようにし、刑法第二六六条(b)違反事件で、被疑者の言動の内容にかかわらず、事案を捜査するようにした。

二〇一六年~一七年、検察はヘイト・クライムを重点項目として、ヘイト・クライム事案における解釈、判決、証拠を明確化する努力を続けた。

人種差別禁止法の適用について検察庁は記録を精査しており、二〇一三年~一八年、一三件を認知した。公訴提起したのは四件で、二件は無罪となった。一件は有罪が確定し、一件は法的警告がなされている。一件は審理を待っている。

刑法第八一条六項の人種主義動機の犯罪について統計データがないが、検察は刑法第八一条六項の事案では犯罪に人種主義動機があれば刑罰加重を求めている。

前回の報告書審査の結果、人種差別撤廃委員会はスウェーデン芸術家事件に言及して勧告を出した。これについてデンマークは追加報告を出していた(CERD/C/DNK/CO/20-21/Add.1. 20 May 2016)。事件そのものについてではなく、ヘイト・クライム/スピーチへの警察の対応についての追加報告である。ヘイト・クライムに関する対処の強化としてITシステムの利用、関係者との対話の強化、警察管区毎のヘイト・クライムとの闘い、ヘイト動機を特定するための検察ガイドラインについての情報である。その上で、刑法第二六六条(b)に従って、人種、皮膚の色、国民的民族的出身、宗教又はセクシュアリティゆえに特定の集団の人を脅迫、非人間化、侮辱する言説を広く流布した者は罰金又は二年以下の刑事施設収容とされる。刑法第二六六条(b違反事件はすべて各検察官から検事長に集約され、検事長が訴追の可否を判断する。刑法第二六六条(b)はインターネット上の人種主義ヘイト・スピーチにも適用される。ヘイト・クライム監視計画の対象でもある。警察は、「ヘイト・サイト」などインターネット上のヘイト・スピーチ、脅迫、人種主義をいかに取り扱うかのガイドを発行した。