Wednesday, December 29, 2021

アベシンゾー不起訴処分の通知書

前田 朗殿

処 分 通 知 書

令和3年12月28日

東京地方検察庁

                        検察官検事 伊藤文規

 

貴殿から令和2年5月4日付けで告発のあった次の被疑事件は、再捜査の結

果、下記のとおり処分したので通知します。

1 被疑者   (1)安倍晋三

(2)配川博之

2 罪名    (1)、(2)につき、公職選挙法違反

(1)   につき、政治資金規正法違反

3 事件番号  (1)令和3年検第18083号

(2)     同 18084号

4 処分年月日  令和3年12月28日

5 処分区分   不起訴

ヘイト・スピーチ禁止法(203)タイ

タイ政府がCERDに提出した報告書(CERD/C/THA/4-8. 17 June 2019

タイは条約第4条に留保を付していたが、2016107日、留保を撤回した。現行法は条約第4条の義務に合致し、世界人権宣言の諸原則及び条約第5条の諸権利を尊重している。

憲法第25条は公的生活領域における直接差別と間接差別と闘うため補佐別の禁止を定める。公務員の雇用、財産保有と性質、取引、ビジネス党について差別の禁止である。憲法第25条は、憲法で保障された権利や自由を侵害された者は、裁判所に権利救済を申し立てることができる。とする。独立の人種差別禁止法を制定していないが、人種憎悪の煽動やヘイト・スピーチは刑法の侮辱罪、名誉毀損罪として処罰される。人種差別に関する膨大な裁判が行政裁判所で審理されている。

2014年に報告書「ICERDの留保撤回に関するタイの準備」に従って、現行法は人権原則に基づいている。特定の民族集団を差別する法や政策はない。

刑法に加えて、2008年の放送TV企業法第37条は、国家の安全、公共の秩序、人々の善良な道徳に悪影響を与える番組を放送することを禁止している。法律に違反した放送局は、第2級行政罰として5万以上50万以下のバーツを科される。1979年の消費者保護法第22条は、法律違反を直接又は間接に支持する言説を含む広告を犯罪化し、国民を文化的に貶め、人々に不統一をもたらすことは、3月以下の刑事施設収容又は3千バーツ以下の罰金である。

2010年の放送テレコミュニケーション組織法によって設置された放送テレコミュニケーション委員会は、テレコミュニケーション業務を行う企業に承認を与えるが、当該ビジネスによって人々の権利や自由を侵害しないこと、個人のプライヴァシーの権利を保護すること等を指示する。

CERDがタイに出した勧告(CERD/C/THA/CO/4-8. 3 December 2021

条約第4条の人種主義ヘイト・スピーチやヘイト・クライムを明示的に犯罪化する法律がない。その結果、人種主義ヘイト・スピーチに関する包括的な情報が報告されていない。メディアやインターネットにおける人種憎悪の煽動、特に政府職員による人種的ステレオタイプの宣伝がなされているとの情報がある。

条約第4条に沿って人種主義ヘイト・スピーチとヘイト・クライムを明示的に犯罪化する法律を導入すること。人種に基づいた犯罪について人種主義動機を刑罰加重事由とすること。メディアやインターネットにおける人種主義ヘイト・スピーチや人種主義暴力の煽動と闘い、政治家やメディア関係者による人種主義ヘイト・スピーチを公的に非難すること。

民族集団、、先住民族、アフリカ出身者、移住者、難民、無国籍者に対する偏見や否定的ステレオタイプを撤廃する啓発や教育キャンペーンを行うこと。

人種主義ヘイト・スピーチやヘイト・クライムを報告、捜査、訴追、処罰する実効的措置を講じること。

警察官、検察官、裁判官に人種主義ヘイト・スピーチとヘイト・クライムについて研修を行うこと。

Tuesday, December 28, 2021

「桜を見る会」を追及する法律家の会・緊急声明

 

緊 急 声 明

 

2021年12月28日

「桜を見る会」を追及する法律家の会

事務局長 弁護士 小野寺 義 象

世話人  弁護士 米 倉 洋 子

世話人  弁護士 泉 澤   章

                                   外

                             

私たち「『桜を見る会』を追及する法律家の会」(以下「法律家の会」という)は、本日、東京地検特捜部が、安倍晋三元首相らを再び不起訴処分にしたことについて、下記の声明を発表する。

1 法律家の会は、安倍元首相がその在任中、「桜を見る会」の前夜祭を都内一流ホテルで催した際、参加した後援会員らに対して公職選挙法で禁止されている寄附行為を行ない、その収支について政治資金規正法所定の収支報告をしなかったことは、明白な犯罪行為であるとして、2020年5月21日、東京地検特捜部に第1次刑事告発を行った。この告発は、過去に例を見ない977名もの法律家による大規模告発となった。さらに、法律家の会は、同年12月21日、検察の捜査によって新たに判明した安倍元首相が代表である資金管理団体「晋和会」の補填金の関与を追及するため、第2次告発を行った。

しかし、これらの告発に対して東京地検特捜部は、同年12月24日、後援会責任者1名を政治資金規正法収支報告不記載罪で略式起訴するのみで、安倍元首相については不起訴処分とした。

  そこで、法律家の会は、この不起訴処分を不服として、21年2月2日、東京検察審査会に審査申出を行い、これを受けて、同年7月15日、東京第一検察審査会は、安倍元首相らを「不起訴不当」とする議決を行った。法律家の会は、この議決後の同年8月27日、後援会による収支報告書訂正もつじつま合わせの虚偽記載であるとして、第3次刑事告発を行った。

 今回の東京地検特捜部による不起訴処分は、東京第一検察審査会による上記「不起訴不当」の議決と、第3次告発に対してなされたものである。

2 昨年末の12月24日になされた東京地検特捜部による安倍元首相の不起訴処分は、首相(当時)の違法行為への関与という重大な問題に踏み込むことなく、問題を矮小化して幕引きしようとした政治的な判断であり、安倍元首相も、これで政治生命の危機は乗り切れたと考えたに違いない。

しかし、東京第一検察審査会は、検察の幕引きを容認しなかった。

東京第一検察審査会は、安倍元首相の公職選挙法違反(寄附)及び政治資金規正法違反(晋和会会計責任者に対する選任監督責任)について不起訴は不当とし、さらに、晋和会会計責任者の政治資金規正法(収支報告不記載)についても、不起訴は不当と議決した。

議決は、「総理大臣であった者が、秘書がやったことだと言って関知しない姿勢は国民感情として納得できない。国民の代表である自覚を持ち、清廉潔癖な政治活動を行い、疑義が生じた際には、きちんと説明責任を果たすべきである。」と、安倍元首相の政治家としての資質の欠如を痛烈に批判した。

また、前夜祭参加者の寄附の認識について「寄附の成否は個々に判断されるべきであり、一部の参加者の供述をもって参加者全体の認識の目安をつけるのは不十分である。単純に提供された飲食物の内容だけで認識を判断するのは相当でない。」とした。

さらに、安倍元首相の犯意について、「秘書らと安倍の供述だけでなく、メール等の客観的資料も入手した上で、安倍の犯意の有無を判断すべきである。」とし、晋和会の収支報告不記載については、「前夜祭開催に西山は主体的、実質的に関与していた。領収書は、一般的には宛名に記載された者(晋和会)が領収書記載の金額(前夜祭の不足分)を支払ったことの証憑とされ、宛名となっていない者が支払ったという場合は、積極的な説明や資料提出を求めるべきであり、十分な捜査が尽くされていない。」と、検察捜査の生ぬるさを具体的に指摘して厳しく批判した。

このような議決に基づいて再捜査をするのであれば、東京地検特捜部は、捜査対象者を拡大したうえで事情聴取を継続し、さらに強制捜査を実施してメール等の客観的資料の検討を徹底して行うなどの捜査を遂げる必要があった。しかし、議決後、東京地検特捜部が、強制捜査を含む大規模かつ徹底的な捜査を行ったなどという情報に接したことはない。今回の東京地検特捜部による不起訴処分は、おざなりな再捜査による結果と言わざるを得ない。

3 さらに、第3次告発は、安倍元首相の秘書を略式起訴する際に「訂正」された後援会の収集報告書の虚偽性を突くものであり、違法な寄付金の原資がどこから来たのかに関わる重要な告発である。収支報告書の「訂正」がつじつま合わせの虚偽記載であることが明白である以上、不起訴処分が妥当であるとは到底言い難い。森友学園問題の国賠訴訟で被告となった国は、本年12月15日に、請求を「認諾」することで訴訟を強制的に終了させ、真相を闇に葬ろうとして、世論の強い批判を浴びている。本日の東京地検特捜部による不起訴処分も、政権を忖度して真相究明に蓋をするものであり、検察の存在価値自体が厳しく問われることになる。

4 今回の東京地検特捜部の不起訴処分により、第1次・第2告発は終了したが、第3次告発については、今後、東京検察審査会への審査申し出をする予定である。

私たち法律家は、わが国で法の支配が徹底され、「桜を見る会」と前夜祭問題における法的責任の所在が明確になるまで、これからも追及の手を緩めることはない。

以上

ヘイト・スピーチ禁止法(202)チリ

新型コロナのため、人種差別撤廃委員会の国別報告書審査が何度か延期になっていた。5月にデンマーク報告書の概要を紹介して以後、紹介も中断していた。審査が再開されているので、徐々に紹介していきたい。

ヘイト・スピーチ禁止法(201)デンマーク

https://maeda-akira.blogspot.com/2021/05/blog-post_23.html

チリ政府がCERDに提出した報告書(CERD/C/CHL/22-23. 14 September 2018

20177月、議員集団が憎悪又は暴力の煽動犯罪に関する刑法改正案を提出した。新刑法147bisは、人種、民族的出身、性別、性的指向、ジェンダー・アイデンティティ又は国籍に基づく人に対する憎悪又は暴力の煽動を犯罪化する。法案は、国会の憲法・立法・司法委員会で審議中である。

201711月、政府は暴力の煽動を犯罪化する3ヶ条の刑法改正法案を国家に提出した。国会の人権・先住民族委員会で審議中である。

奉安は前の法案を引き継ぎ、国民的又は民族的アイデンティティ、性別、人種に基づくヘイト・スピーチについて刑事制裁を提案している。公務員が職務として行った場合には、平等原則違反であり、刑罰加重事由となる。

CERDがチリに出した勧告(CERD/C/CHL/CO/22-23. 9 December 2021

移住者やマイノリティに向けられた排外主義やヘイト・スピーチを予防するための措置についての情報が報告されていない。条約第4条に合致した国内法がなく、人種的優越性、憎悪に基づく思想の流布、人種差別の煽動、人種動機の暴力、人種差別煽動団体への参加を犯罪として処罰する法律がない。ヘイト・スピーチ、移住者の排斥・拒否、移住者への暴力の報告が増えている。

CERDは次の勧告をした。CERD一般的勧告第35号に照らして、条約第4条のもとでの義務を履行すること。条約第4条に完全に合致した法律を制定する。ヘイト・スピーチと人種差別の煽動に関する審議中の法案を至急可決し、履行する。次回報告書で、ヘイト・スピーチに関する捜査・刑事手続き・判決についての情報を報告する。移住者に対する排外主義や差別的ステレオタイプと闘う措置を講じる。特に公務員による差別行為に、迅速かつ例外なく刑罰を科す。

Monday, December 27, 2021

イスラム嫌悪に対抗する04

Ⅳ イスラム嫌悪に対抗する

A 国際法枠組み

B オンライン・ヘイト・スピーチに取り組む

C 最善の実行例

イスラム嫌悪と闘うために努力をしている国がある。欧州評議会や、スウェーデン、マルタ、ノルウェーは、宗教に基づく差別やイスラム嫌悪について政策勧告や行動計画を採択している。EUの欧州委員会は反ムスリム憎悪と闘う調整官を設置した。スペインのバルセロナとオーストラリアのヴィクトリア州は地域の行動計画を採択し、教育、対応能力養成、ヘイト・クライム予防措置、訴追の計画を含んでいる。ノルウェーの行動計画も反ムスリムのヘイト・クライム対策が含まれる。アンドラ、キルギスタン、スイス、スウエーデン、クロアチア、トーゴにも反ヘイト・クライム法がある。警察官にヘイト・クライム研修を戸なっているのは、クロアチア、ハンガリー、メキシコ、ポーランド、スウエーデンがある。ヘイト・クライム監視においてイスラム嫌悪を報告する制度を有しているのはOSCEと、スウエーデン、オーストラリア、ブラジル、クロアチア、ポーランド、ハンガリー、アメリカ、イギリス、カナダ、スペインである。ブラジルの女性家族省は宗教に基づく事案も含めて差別被害者のためのホットラインを設けている。

メキシコはソーシャル・メディア企業と、ヘイト・スピーチに反対する書き込みを強化する取り決めをしている。スウェーデンはオンライン・ヘイト・スピーチに反対し、警察に通報する市民社会組織に財政援助している。ムスリムに対する差別に対応して、ムスリム共同体の声を聞くために州会を組織している国はマルタ、オーストラリア、カタール、スイス、トーゴ、ベルギーである。

定義

被害者の経験を踏まえて効果的な対応をするため、教育や啓発の分野で、「イスラム嫌悪」の定義の試みが続いている。イスラム嫌悪を全体主義的政治的野心を隠蔽する手段、有害な実行を正当な批判から免れさせるものと見る見解がある。何を攻撃しているのかを見えなくさせる元とみる見解もある。イスラムの信仰ではなくムスリムの人そのものを攻撃しているからである。イスラムの正当な批判をかき消すため、表現の自由を委縮させる効果に注目する見解もある。

特別報告者は、特定の定義を示すのではなく、イスラム嫌悪のより良い概念的理解として、宗教の自由などの人権への影響を強調したい。反ムスリムの偏見がいかにして実行され、ムスリムの個人や共同体がいかなる経験をするか。寛容の原則宣言に従って、寛容は単に独特的義務ではなく、政治的法的要求なので、各国には結果に対処する責務がある。

 

Ⅴ 結論

ムスリムに対する意識的偏見も無意識的偏見も、ムスリムを非人間化し、ヘイト・クライムの動機となり、差別を助長し、社会経済的排除を加速させる。イスラム嫌悪は、国家が個人による偏見を容認することで悪循環に陥る。共同体において不寛容の行為が行われた場合、国家は宗教的マイノリティの権利を擁護しなければならない。ある宗教共同体がマイノリティである場合でも、その共同体が別の地域では主要な宗教共同体の場合もある。

国際人権法は個人を保護するもので、宗教を保護するものではない。イスラムの観念や指導者は、禁止されたり、処罰されるべきものではない。強調したいのは、差別と不寛容が、民主的多元主義や人権尊重を促進する国家の責務を妨げることである。平和、統合、多元的社会は、宗教に関わらずすべての人の権利を尊重する。

宗教に基づく差別と、国籍、ジェンダー、人種等に基づく差別の交差性も重要である。ムスリム女性は女性、マイノリティ、ムスリムという「三重の処罰」に直面している。

 

Ⅵ 勧告

報告書は最後に勧告を列挙している。

国際自由権委員会、ラバト行動計画、人種差別撤廃委員会一般的勧告35号のガイダンスと定義に従って対処することが基本である。

各国へ

信仰の自由に関する制約を見直すこと。差別的制約を見直すこと。

ムスリムに対する直接差別や間接差別と闘うのに必要な措置を講じること。雇用、教育、司法アクセス、住居、健康衛生、移住、市民権に関する差別を撤廃するため、情報収集、人権侵害申し立ての人権機関、差別となる法と政策の見直し。

反テロと人権特別報告者の勧告の履行。

差別、敵意、暴力の煽動に当たる宗教的憎悪の唱道の禁止。

法執行官による差別、差別的プロファイリングに対処すること。

雇用企業に

職場における差別防止のための各種の政策を採用し履行すること。

デジタル企業に

人権に基づいたアプローチを採用し、ガイドラインを実施する事。

扇動やヘイト・スピーチに取り組む努力の透明性確保。

メディアに

ムスリムに関する報道のガイドラインの採択。ステレオタイプと一般化の回避、文脈説明、ジャーナリスト研修。

市民社会に

差別の煽動を回避し、ムスリムに関する語りの本質主義化を回避すること。多様性の尊重と連帯の構築。

国連システム

国連人権高等弁務官事務所、UNESCO、反テロ諸機関、ジェノサイド防止特別顧問などが連携して、イスラム嫌悪の防止に取り組むこと。

Sunday, December 26, 2021

イスラム嫌悪に対抗する03

Ⅰ 序文

Ⅱ 方法論

Ⅲ 任務活動

A 不寛容な語りの流布

B 差別

C 暴力

ムスリムに対する暴力が世界中で広まっており、各国当局が暴力を煽動し、暴力予防をしない例がある。国家政策とムスリム差別の間に関連があり、イスラム嫌悪が蔓延っている。ムスリムの信仰、雇用、教育、移住が国家によって抑圧されている。暴力事件は単発ではなく、路上のヘイト・クライムは各国による偏見再生産の帰結である。

ミャンマー、中国におけるムスリム・マイノリティに対する暴力は重大な関心事項である。マリ、インド、スリランカではムスリムに対する大衆暴力や過激主義の脅威が増えている。警察も大衆暴力に加わっている。

OSCE加盟29か国で2017年、ムスリムに対するヘイト・クライムが頂点に達し、アメリカでは201419年、イスラム健保による事件が1万件を超え、件数も暴力性も悪化している。ニュージーランドのクライストチャーチ事件では51人が殺害された。モスク礼拝のムスリムに対する攻撃はカナダ、イギリス、ノルウェーにも見られる。ジョージアの学校のドアに豚の頭が吊るされるなどムスリムの動物化も起きている。スイス、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ラトヴィア、フランス、北マケドニア、ギリシア、ノルウェー、フランス、アメリカ、スリランカ、インドでも同様である。

ムスリム女性はとりわけイスラム嫌悪ヘイト・スピーチの標的とされ、オランダでは90%、フランスでは81%が女性被害である。言葉による攻撃、侮蔑、身体傷害、殺すという脅迫がある。オーストラリアのある調査ではムスリム女性の96%が頭を覆うヴェールをかぶっている時に攻撃された。犯行者は公衆が見ていても攻撃を止めようとしない。60%の攻撃が、警察などが見ている場で行われた。スロヴァキアでは、路上で公然と、赤ん坊を抱いている女性のヴェールで首を絞めようとする事件も起きた。

イスラム嫌悪ヘイト・クライムは、テロリスト攻撃の後やその周年の際に増加する。イギリスのEU離脱投票やアメリカ大統領選挙の際にも悪化した。2015年のパリのテロリスト攻撃の後にもモスク攻撃が起きた。

 

Ⅳ イスラム嫌悪に対抗する

A 国際法枠組み

宗教の自由の権利は差別からの自由の権利その他の権利と相互に関連する。宗教の自由、信仰、その教育の権利への不当な制限は国際法における差別の禁止の中核に関連する。国際法は市民的政治的経済的社会的文化的権利を制限する差別政策は、宗教の自由の権利の侵害になるとする。本報告書で見てきた諸事例はムスリムを標的とした、宗教の自由に対する不当な制限である。宗教を選択する個人の自由は絶対的であり、国家が宗教の表明を制限できるのは、公共の安全、秩序、健康と道徳、他人の権利を保護するために必要な場合に限られる。各国はしばしば「国家の安全」や、「共生」を理由として宗教的衣装、宗教文書の配布、宗教教育を制限しようとするが、これらは正当な理由とは言えない。制限は、あらかじめ法律に明示され、その目的と効果において非差別でなければならない。

国際自由権規約26条は法の前の平等を定める。人種差別撤廃委員会は、人種差別撤廃条約が宗教的理由による差別にも適用されるという。国際自由権委員会は、ジェンダーに特有の宗教的衣装の着用禁止はジェンダーと宗教の双方に基づく交差的差別であるという。女性差別撤廃委員会は、宗教に基づく女性差別は女性差別撤廃条約のジェンダーに基づく差別であるという。

国際人権機関は各国に差別を惹き起こす諸条件を予防、撤廃する措置を講じるよう呼びかけている。宗教その他の理由に基づくステレオタイプの防止も含まれる。特別報告者は、各国にヘイト・スピーチに対処するためラバト行動計画を適用するよう促す。

B オンライン・ヘイト・スピーチに取り組む

デジタル企業・ソーシャル・メディア企業の中にはヘイト・スピーチ政策を採用している例がある。FacebookYouTubeTwitterInstagramSnapchatTikTok等は2016年以来EUの「違法なオンライン・ヘイト・スピーチ対策規則」に関与して、違法なヘイト・スピーチを削除している。これにはムスリムに対するヘイト・スピーチも含まれる。

FacebookYouTubeTwitterは、2019年には違法なヘイト・スピーチを92%削除した。Facebookは「監視委員会」を設置した。

もっとも悪質な書き込みを削除するように政策変更がなされたが、「ボーダーラインの書き込み」が増えており、ヘイト・スピーチ政策に合致するか否か判断が難しくなっている。オンラインの書き込みをスクリーニングするアルゴリズムが開発されているが、抽象的な書き込みを正確に分類することは容易でない。ソーシャル・メディア企業がオンライン・ヘイト・スピーチに対処する政策をとるようになったことを歓迎するが、その定義や意思決定過程は透明とは言えない。

Saturday, December 25, 2021

非国民がやってきた! 008

三浦綾子『銃口(上)』(小学館)

治安維持法で思想弾圧された教師たちの北海道綴方教育連盟事件を題材に、1990年から連載を始め、1994年に単行本として出版された。

戦争と思想弾圧の暗黒の時代は193040年代であり、それから半世紀後に小説化されている。治安維持法弾圧を告発する小説を、小学館が出版したのが僅か四半世紀前である。このことだけでも、時代の移り変わりの早さを思う。

三浦は、小林多喜二の母親を描いた『母』に続いて本作品を書いた。

https://maeda-akira.blogspot.com/2021/11/blog-post_28.html

主人公・北森竜太は旭川指折りの質屋の子どもであり、親戚の楠夫と同学年で幼少期を過ごす。小学校時代に出会った教師・坂部とは運命の出会いということになる。竜太と楠夫という子どもの目を通じて、192030年代の旭川という地方都市の子ども、大人、学校の日常が描かれる。

坂部に憧れて竜太は教師への道を歩む。楠夫は東京に出て学生となるが、竜太は炭鉱町の幌志内小学校教師となる。小学校も時代の縮図であり、元左翼で治安維持法制定直後に「転向」して翼賛教師となった校長が支配する場で、奉安殿、皇紀2600年と言った言葉に代表される昭和ファシズムの波の中、竜太は他の教員に感化されて、北海道綴方教育連盟の会合に一度だけ参加する。そこから事件は急展開することになるが、上巻では、末尾で突如として警察に呼び出され、私服刑事と本署に出向こうとするところまでが描かれる。

竜太が新米教員として赴任した時、校長は「私も若い時は『資本論』を読んだ」とか、「哲学は大事だ」といった語り口で、竜太の「思想調査」を試みている。竜太は実は『資本論』はもとより、社会主義文献も哲学文献もあまり手にしたことがない。

他方、三浦綾子だけに、キリスト教信仰も随所に登場する。坂部先生の妻は信仰者であり、楠夫も少女に会いたくて教会に行ってみたりする話が出て来る。幌志内小学校の木下教師も、竜太が自宅を訪れた時に机の上に聖書が置いてあったという叙述がある。上巻では、まだ伏線としてしか書かれていない印象だが、小林多喜二の母を描いた『母』でも、共産主義思想とともに、キリスト教の博愛主義が重要な思想基盤として描かれていた。

日本が戦争へとなだれ込む時代背景は、竜太の思想としてではなく、天皇制ファシズムに乗り切った校長の時代認識として示される。絶対天皇制の侵略戦争を賛美し、大政翼賛のための厳格な学校秩序を維持するために、教師を管理し、生徒を管理する。そこから浮いている若き教師たちがやり玉に挙げられることになる。随順しない者が非国民として狩り出されてゆく。

印象的なエピソードは、工事の飯場から逃亡してきた「朝鮮人のタコ」である。竜太の父親は、追われる身の朝鮮人を同じ人間だからとかばい、北森質屋に匿う。やがて金俊明はゆく先不明のまま他へと逃れて行くことになるが、竜太と姉は金俊明に凛とした人間性を見出す。北海道の「タコ部屋」と言えば、明治「開拓」期の道路工事や鉄道工事に始まり、ニシン漁の「タコ」、次いで空知地方を中心とする炭鉱の「タコ」、さらには室蘭など工業都市の「タコ」といった歴史がある。金俊明は炭鉱に送られタコ部屋で酷使され、虐待され、逃亡してきた。1930年代の話だ。

三浦はこのエピソードを1990年に書いている。1922年生まれ、旭川出身・在住の三浦にとって、「朝鮮人のタコ」の話はまさにリアリティがあったのだろう。1990年代に強制連行や日本軍慰安婦問題が浮上するが、その直前に三浦はこのエピソードを書いた。

思い起こせば、私自身、子どもの時に親戚の叔母から「飯場から逃げてきた人物をかくまった」話を聞いていた。遊び仲間の一人の子どもの父親のことだった。初めて聞いたのが1960年代終わりくらいだ。1990年代半ば、戦後補償・戦争責任が問われた時期に、叔母に尋ねてみたが、初めて聞いた時と同じレベルの、あいまいな話しか教えてもらえなかった。たぶん、叔母もその程度しか知らなかったのだろう。その人物をかくまった祖父は、私が生まれる前に他界していたので、詳しい事情は聞けないままだ。

こうした話は各地で埋もれたままになっているのだろう。朝鮮人強制連行による雨竜ダム建設により朱鞠内湖ができたのが1943年だ。北海道で劉連仁が「発見」されたのは1958年で、私が3歳になる年だ。

Friday, December 24, 2021

イスラム嫌悪に対抗する02

Ⅲ 任務活動

A 不寛容な語りの流布

B 差別

安全保障問題化

宗教共同体の安全保障問題化は、社会の安全や生存の脅威となる例外状況によって正当化される例外措置のために、通常の「法の支配」が棚上げされることで複雑な過程を経過する。過去20年以上、ムスリムは反テロ措置の濫用の矛先を向けられてきた。人種差別撤廃委員会や国際自由権委員会の報告によると、国家安全保障と反テロ措置は不均衡且つ差別的にムスリムに向けられてきた。スリランカ、オーストリア、中国、インド、フランス、タイ、ケニア、ロシア、フィリピン、スウエーデン、オーストラリア、イギリス、エリトリア、カザフスタン、オランダが好例である。その適用には透明性がなく、「テロリズム」の定義が明確でなく、その履行が十分管理されていない。

各国は教育や保健といった行政サービス領域までも安全保障問題化し、ムスリムに対する監視を強化している。医師、保健師、ソーシャルワーカー、教育者が国家の安全保障問題に駆り出されている。イギリスでは、ムスリムは17倍もの頻度で極右過激主義の嫌疑をかけられている。ドイツでは、ムスリム学生が祈りに利用する礼拝室が、当局によって過激主義の嫌疑をかけられ、閉鎖されている。スペインでは、教師がひげを蓄えると過激主義と疑われている。フランスのイスラム分離を目的とした法案は学校や団体の検査を強化しようとしている。

宗教的表現(現象)に対する直接制約

欧州、アフリカなどの11か国では、ムスリム女性が頭を覆うヴェール・衣装を公共の場で着用することが制限又は禁止されている。理由は、宗教的衣装は公共の場の世俗性に反するとか、「女性の権利を侵害する」、安全保障問題のリスクがあるというものである。学校、職場、裁判所の法廷でムスリム衣装を許容するかどうかを当局の権限としている国がある。こうした制限はすべての宗教的シンボルに差し向けられているものの、実際に影響を被るのはムスリム女性である。国際自由権委員会が指摘したように、こうした禁止はムスリム女性の宗教の自由を侵害し、非差別原則に反する。

ムスリムが宗教施設を建設・維持することのできる条件が予測不能な国がある。西欧や北米では、モスクの建設が周辺住民の反対などにより制約されている。フランスやオーストリアなど、西欧では過激主義に反対するという主張からモスクが閉鎖された場合もあり、スイスではミナレット建設が禁止された。

オーストリア、フランス、ギリシア、中国で、ムスリムが宗教指導者を任命する自由が侵害されている。中国は1990年以来ウイグルのイマームを指名してきた。オーストリアはイスラムの教授、研修、雇用、解雇を規制している。ミャンマーでは数百のモスク・委員・墓地が破壊された。

近年、ムスリム共同体がチャリティ・人道支援施設を設置・運営することが制限されるようになってきた。2020年、フランス当局はテロリズムの嫌疑と称して、ムスリムのチャリティ活動を2回閉鎖させた。2020年、デリー騒動で警察官によるムスリムの人権侵害が告発されるや、インドはアムネスティ・インターナショナル・インド支部事務所を閉鎖させた。

ハンガリーは「ストップ・ソロス」と称して、ムスリム移住者を支援するNGOに対する課税を25%増とした。アメリカでは、大統領緊急権限が広範に用いられ、適正手続きを無視してムスリムを標的としている(*トランプのこと)。

経済的排除

20か国において、ムスリムが公共輸送、空港、行政事務所、商店、レストランなど商品・サービスへのアクセスについて差別体験があると報告されている。欧州のムスリムが経験する主な差別は失業である。EU15か国でムスリムの3分の1が雇用の場面で差別を経験している。ムスリムは他の宗教集団よりも失業率が高く、賃金が低く、短期雇用であり、危険な仕事である。ムスリム・マイノリティは政治、法、医療の専門職にあまりついていない。

ムスリム女性は特に影響を受けている。宗教的衣装の禁止は、女性を一定の職業分野から排除し、自ら排除(断念)を呼びなくされている。同僚からの差別の恐怖を抱いているのもムスリム女性である。イギリスのムスリム女性は、同程度の教育と言語能力であっても、白人キリスト教女性よりも71%多く失業している。

イスラム嫌悪がムスリムの社会経済見通しを蝕んでいるので、ムスリムは貧困を強制されている。イギリスのムスリムはもっとも経済的に不利益を被った宗教集団である。移住者や難民は貧困や失業に追い込まれがちだが、ムスリムであることに基づいて一層の差別がなされる。極貧は水、電気、衛生、住居へのアクセスを奪う。

教育、健康、住居

ムスリム学生は宗教的動機による敵意のため孤立感を抱かされ、学校を中退したり、低いレベルの教育しか受けられない。アメリカではムスリム生徒は他の宗教の生徒よりも2倍いじめ被害を受ける。スペイン、ルーマニア、コソヴォ、ポーランド、カナダ、イギリス、カンボジア、ミャンマーでは、教育課程がムスリムを過小評価・誤評価し、差別的に排除している。中国は数百のアラビア語のイスラム学校を閉鎖した。教師がムスリムにステレオタイプの評価をしている。ムスリムの教師はすくなく、財政支援もない。

ムスリム・マイノリティは住環境が貧弱で、排外主義と人種主義が交差した差別が加重要因となっている。賃貸料金が高額にされたり、賃貸を拒否される。レバノンではムスリムの不動産購入を禁止している町もある。ベルギーではモロッコ出身のムスリムの38%が賃貸物件を探すときに否定的な経験をしている。

国籍と移住

人権の享有は市民権、国籍、移住の地位に依存する。「テロリスト」などの名目で、ムスリムの個人や集団から国籍を剥奪する国がある。インドのアッサム州は2018年の市民登録制開始以来、ムスリムを排除し、「不法移民」としてきた。インドの市民権修正法は、周辺諸国出身のヒンドゥ、シーク、仏教、ジャイン、パーシ、キリスト教徒の市民権を認め、ムスリムは排除されている。ミャンマーは1982年以来ロヒンギャのムスリムの市民権を否定している。

排外主義から、安全保障の脅威であるとして、ムスリムの市民権を否定する国がある。アメリカはその審査プログラムで、アラブや中東出身の移住に際して、認定を遅延させ、適正な告知なしに手続きを進め、異議申し立てさせない。フランスとドイツは、親密でない異性との接触を禁じる宗教的理由から政府職員と握手をしない申立人に市民権を認めない。デンマークも同様の政策をとっていると言われる。スロヴァキア、ポーランド、ハンガリー、チェコは、キリスト教徒の難民を優先的に扱い、ムスリム難民や移住者を拒否している。EUは中東難民の受け入れ方針を示しているが、スロヴァキアとハンガリーはこれを拒否している。

Wednesday, December 22, 2021

イスラム嫌悪に対抗する01

202123月に開催された国連人権理事会46会期に、アーメド・シャヒード「宗教の自由特別報告者」が報告書『宗教に基づく差別と不寛容を撤廃するためイスラム嫌悪/反ムスリム憎悪に対抗する』(A/ HRC/46/30.25February 2021)を提出した。ごく簡潔に紹介する。

Ⅰ 序文

Ⅱ 方法論

Ⅲ 任務活動

A 不寛容な語りの流布

B 差別

C 暴力

Ⅳ イスラム嫌悪に対抗する

A 国際法枠組み

B オンライン・ヘイト・スピーチに取り組む

C 最善の実行例

Ⅴ 結論

Ⅵ 勧告

Ⅰ 序文

9.11のテロ攻撃や、その他イスラムの名において行われた行為の後、ムスリムやムスリムと見做された人々への疑念が急激に増加した。多くの諸国が、過剰にムスリムを標的とする措置を講じたり、ムスリムをリスクとして定義してきた。ムスリムを文化的な「他者」とし、ムスリムに対する有害なステレオタイプを広め、ムスリムの文化を脅威と見做してきた。

専門家や人権活動家によると、イスラムに対する否定的表象が広まり、ムスリムへの恐怖から、安全保障やテロ対策として、ムスリムの個人や共同体に対する差別、敵意、暴力が現実化してきた。ムスリムの宗教の自由を直接制限したり、ムスリムの各種人権を制限することで宗教の自由に制約をもたらしている。その結果、暴力行為が行われ、それらが不処罰のままとされている。

排除と恐怖の雰囲気の下で、ムスリムはスティグマ、恥、「疑わしい共同体」という感情を抱かせられ、一部の者の行為について集団責任を負わされている。インドでは警察官の半数が、ムスリムは生まれつき犯罪をする傾向があると信じている。2018年と2019年の欧州の調査によると、37%がムスリムに好ましくないという見解を持っている。2017年の米州の調査では、ムスリムに否定的な光が当てられている。ミャンマーでは、仏教ナショナリズムのもと、イスラムの脅威が語られ、ロヒンギャ・ムスリムに対する残虐行為が行われた。

各国はムスリムに対する差別について効果的な監視・報告メカニズムを持っていない上、国家自体がムスリムに対する差別の主犯となっている。被害者や研究者や人権活動家は現状を「イスラモフォビア(イスラム嫌悪)」と呼んでいる。「反ムスリム憎悪」という用語も用いられている。

Ⅱ 方法論

特別報告者はこの間、オンラインを通じて5つの地域の代表たちと12回のラウンドテーブルと15回の双方向会議を持った。市民社会から79件の情報提供を受け、国内人権機関から2件、各国から26か国、地域横断組織から3つの情報提供を受けた。

多くの事例で、イスラム嫌悪の差別、敵意、暴力を語る場合、宗教だけに基づいて考察することは正確でない。イスラム嫌悪は、民族、人種、外国人排斥、経済、ジェンダー、宗教など多様な偏見が重なり合っている。ムスリムの経験は文脈に依存している。ムスリムのマジョリティ居住地に住むマイノリティのムスリムに対する偏見の事例もある。ムスリム間の偏見や暴力の事例も見られる。本報告書では主に、非ムスリムがマジョリティの国家にマイノリティとして暮らすムスリムが直面する困難を取り上げる。

Ⅲ 任務活動

報告書の対象時期は20197月から20207月である。特別報告者は、UNESCOUNAOCUNOGPOHCHR(人権高等弁務官事務所)等と協力し、ヘイト・スピーチに関する問題を取り上げてきた。OSCEや市民社会とも協力してきた。

鍵となる発見

概念枠組み

イスラムやムスリムは多様な意味合いで用いられ、諸イデオロギーが重なり合っており、正確な特徴付けは文脈に依存しているが、通例はイスラム嫌悪は、イスラムを暴力、性差別主義、同性愛嫌悪を唱道する一枚岩の原理主義とみなしている。イスラムを宗教として認めず、頑なな政治イデオロギーであり、「西洋文明」を危険にさらすと見做している。イスラム追随者の側でも、ムスリムは、非信仰者に暴力を用いて信仰を押し付けようとする不誠実な他者を悪魔化している。ムスリムを人種主義化する場合もあれば、「ヴェールをかぶった女性」というようにジェンダー化される場合もある。他方、ムスリム男性は皮膚の色や髪の毛で判断されがちである。

A 不寛容な語りの流布

ムスリムに対する有害なステレオタイプは、主流メディア、影響力或る政治家、ポップカルチャーのインフルエンサー、学問論議によって形成されている。一般に、メディアではムスリムの代表はいないか、少ない。「反人種主義・不寛容欧州委員会(ECRI)」の調査によると、2016年と17年のオランダのニュース60万件以上で、ムスリムを描くのに使われた形容詞は「ラディカル」「過激主義」「テロリスト」であった。逆にオランダ人は「有名な」「平均的」「美しい」であった。各国のニュースではムスリムに関する物語では、統合の失敗や、極右のテロリストのように、否定的に焦点を当てている。スイス反人種主義委員会は、2014年から17年尾18の出版メディアにおいて、ムスリムには統合(適応)の意思がないとしており、ムスリム自身の日常生活を知らせる記事は2%に過ぎない。

多くの映画でムスリムの否定的業者と有害なステレオタイプがあり「テロリストとしてのムスリム」映画がよくあるジャンルとなっている。近年、ムスリムを肯定的に描写した映画もつくられているが、「良いムスリム対悪いムスリム」の二分法を正当化する可能性がある。多くの西欧の映画やTV製作者は「ホワイトウオッシング」を試みている。

オンライン配信

ムスリムとイスラムに対する有害な語りはYouTubeTwitterFacebookGab8chanVoatなどデジタル・メディアを通じて拡散されている。欧州ではムスリムがムスリムであるがゆえに幼児性愛と非難され、ミャンマーでは著名な仏教僧侶が、ムスリムを仏教と女性に対する性犯罪者と決めつけ、イギリスではムスリムがその衣装を着用し、名前を名乗ると、「テロリスト」「自殺爆弾」と非難される。

ムスリム女性はオンラインでもオフラインでも男性以上に標的にされる。ムスリム女性はムスリム以外の女性よりも極端なヘイト・スピーチを受ける。アムネスティ・インドによると、オンラインのもっとも攻撃的なヘイト・スピーチの55%はムスリム女性に対するものであった。イスラム嫌悪を報告した研究者、ジャーナリスト、人権活動家もハラスメントや脅迫を受けている。

欧州と北米では、著名な政治家、インフルエンサー、研究者が、オンラインで、イスラムは民主主義や人権の対極であると非難し、すべてのムスリム女性が抑圧されていると告発している。中国では、オンライン上で、ムスリムであることと中国人であることは相容れないとか、国家に、ムスリム女性をムスリムのアイデンティティを奪うことによってムスリムから解放せよと、要求している。

ムスリムをテロリストと非難する現象は、インドでは新型コロナの感染率が高まると、ハッシュタグ「コロナ・ジハード」が広められた。スリランカでもイギリスでも、ムスリムが新型コロナを広めたという言説がオンラインで広まった。

オンライン・ヘイト・スピーチがオフラインの事件の引き金になっている。著名な人物、政治集会、選挙におけるムスリムに対するテロ攻撃が唱えられる。キリスト教会攻撃の後、ある市民社会組織の報告によると、ムスリムに対するオンライン攻撃が692%増となった。引き金となる出来事は、2448時間で急速に反応を引き起こす。

Monday, December 20, 2021

キシリトール政権語録07 大きな志

参院は12月21日の本会議で、岸田文雄首相と全閣僚が出席し、2020年度決算の概要報告と質疑を行った。安倍政権時代に新型コロナウイルス対策として配布した布マスク「アベノマスク」が大量に在庫となっている問題について、首相は「厚生労働省が検品を実施したところ、約7100万枚のうち約1100万枚、約15%が不良品だった」と明らかにした。

立憲民主党の杉尾秀哉氏への答弁。首相は厚労省や納入事業者の検品費用などとして新たに計20億9200万円を要したと説明。在庫については「介護施設などへの随時配布をはじめ、費用対効果の観点から適切な策を検討していきたい」と述べ、処理を進める方針を改めて示した。 

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アベでごじゃいます。史上最長政権記録のアベシンゾーでござます。

アベノマスクの件ではまたまた脚光を浴びております。世界の首脳に先駆けて、国民の命と暮らしを守るために布マスク3枚をごく短期間で配布するという快挙を成し遂げ、1億の全国民から大感謝のスタンディングオベーションで迎えられたのは記憶に新しいところであります。

アベのマスク800万枚の保管料が9億円だっそうで、まあ、言ってみれば端金ですね。検品費用が21億円ですか。キッシーも、首相たる者がよくそんな細かな金額を計算したものです。

マスコミも志が低いというか、了見が狭いというか、笑うしかありません。アベノマスクの費用だって、たかだか260億円ですよ。それで国民の命を守り、わたくしの地位が安泰となり、お友だちにお仕事を紹介することができたのですから、素晴らしいアイデアじゃありませんか。

それにしても、みなさん、相変わらずわたくしのことばかり気にされるようですね。わたくしとしましては、リタイアした身分ですから、現首相のキッシーに迷惑がかからないように、言動には慎重に慎重を重ね、静かに潜行しておりました。永田町の生臭い出来事にはできるだけかかわらないようにしまして、発言も控えておりました。

まあ、ジミンの総裁選ではサナエちゃんを推薦しまして、敵基地攻撃論を吹聴していただきましたが、私はできる限り目立たぬように「沈黙は金なり」を貫いておりました。

その後、ホーソーダ元幹事長が衆議院議長に就任したものですから、やむを得ずわたくしが派閥の会長に復帰しまして、アベ派と呼ばれるようになりました。できる限り目立たぬように、静かに会長職を引き継ぎまして、とは申しましても最大派閥ですから、ジミンの本流でごじゃいますし、史上最長政権のわたくしが会長ですから、ヤマグチ組に負けてなるものかとばかりに大々的に襲名披露をさせていただきました。跡目相続は大変なものでございます。

国際的にも中国の暴走が目に余る状況となってきましたので、史上最長政権記録保持者で世界指折りの賢人と目されるわたくしが沈黙しているわけにもまいりませんので、中国に友人としての助言をいたした次第です。「暴走したらどうなるかわかっているだろうな。米軍様が黙っていないぞ」と軽~く脅しをかけておいた訳です。ところが、中国側は肝を震わせてムキに反論などしております。わたくしのように謙虚に、慌てず騒がずの姿勢を学んでいただきたいものです。

ラチ問題では家族会会長がお亡くなりになりまして、ご冥福をお祈りいたします。史上最長政権の私の時代には、ラチ問題には何もしないと決めておりました。やってるふりだけするのは大変疲れましたが、心だけは痛めておりました。わたくしといたしましては、できる限り目立たぬようにいたしたいとの思いから、どうせ何もしないと決めているキッシーの心情には同情を隠せずにいるわけでございます。

そうこうしている内に、国交省の文書問題が取りざたされるようになりました。モリカケ問題の文書問題や勤労統計問題に改めて光が当たりまして、みなさん、やっぱりわたくしのことを気にかけていただいております。人気者は辛いものです。

それにしても野党もマスコミも些末の文書問題に熱狂しておりますが、政治のなんたるかを全く理解していないと思わざるを得ません。アベノミクスで日本の経済を活性化させ、企業にとって世界一活動しやすい社会をつくり、国民の暮らしを向上させ、わたくしの名誉と利権を万全にした上で、お友だちにお仕事を紹介するという一石二鳥、三鳥、四鳥の大業でございます。物事は大きな視野で判断していただきたいものです。アベノミクスという完璧な経済政策をものの見事に仕上げて、日本復興を果たしたわたくしですから、些末な文書問題など歯牙にもかけません。

なにはともあれ、わたくしといたしましては、キッシー首相の足を引っ張ることのないよう、できる限り目立たぬように、政治経済社会の森羅万象に大いに口出しして参りたいと思います。キッシーが支持率を上げれば、わたくしが支えていることに注目していただけます。キッシーが転落すれば、またわたくしにお鉢が回ってきそうです。いえいえ、そんなことは毛頭考えておりませんが、選ばれし者の悩みは深いのでごじゃます。

それではみなさん、ごきげんよう。

女性に対するサイバー暴力02

2017年の「欧州ジェンダー平等研究所(EIGE)」によるパンフレット『女性と少女に対するサイバー暴力』の紹介である。データは当時のもの。

EIGE, Cyber violence against women and girls, 2017.

データの利用可能性と調査

EUにおけるサイバー暴力の情報は乏しく、被害者や被害について十分わからない。もっとも使える情報は2014年の「欧州人権機関(FRA)女性に対する暴力欧州調査」である。EUについての最初の調査である。2008年のデンマークの調査依頼、十分な調査はない。サイバー暴力が犯罪化されていないため、警察情報や司法情報は不十分である。さらに調査が必要である。

1.オンライン投稿により女性をおびき出す有害な情報(リクルート)

2.サイバー暴力被害者が経験する被害の重大性の評価

3.再バー暴力に対処する警察や司法の良き実行例

4.被害者化を予防する危険要因とリスク評価の確認と分析

法執行の対応

サイバー暴力に対処する法律を制定した国がいくつかる。イギリス、フランス、ドイツ、マルタではリベンジ・ポルノを犯罪化した。アイルランドとスロヴェニアでも審議中。サイバー暴力の女性被害者への刑事司法の対処は不適切である。イギリスではリベンジ・ポルノが犯罪化されて以後、6か月で1,160件の報告があるが、その61%には何の対処もなされていない。

2013年、「女性に対する暴力を終わらせる連合(EVAW)」が暴力とハラスメント・オンラインの訴追に関するラウンドテーブルを招集したが、司法に関する報告はばらばらで、実効的でない。刑事司法の対処が不十分なのは、オンラインとオフラインの誤った二分法が一因で、サイバー暴力を過小評価しているためである。

立法

イギリスでは20154月、同意のない性的写真や動画の共有を2年以下の刑事施設収容の刑事犯罪とした。20169月、法律施行以来200人以上が訴追された。

2016年、フランスは「デジタル共和国法」を制定し、リベンジ・ポルノの刑罰を重くした。2年以下の刑事施設収容又は6万ユーロ以下の罰金である。

同様の理解はドイツの裁判所が、2014年、元パートナーによるポルノ販売を違法とした。

調査と介入

2009年、イギリスは「サイバー・ストーキング調査センター」を摂津市、サイバー暴力の動機、影響、リスク評価を始めた。2011年、同センターはサイバー・ストーキングの研究結果を公表した。2015年、リベンジ・ポルノ被害者ヘルプラインが設立され、6か月でおよそ2000の電話があった。

20177月以来、スロヴェニアは「サイバー女性に対する暴力」プロジェクトを始め、啓発と教育を行い、女性に対する暴力ゼロトレランスのメッセージを出した。

結論と勧告

十分な調査や情報がないので、EUレベルのサイバー暴力について適切に評定できないが、この現象が増加し女性と少女に悪影響を与え、被害者のリアルな生活に重大な影響を及ぼしていることは言える。適切な対処をするためにさらに調査が必要である。

1.サイバー暴力が女性に対する暴力の一形態である事実を認識して定式化した政策が重要である。サイバー暴力に対処する戦略には、被害を受ける女性の声が反映されるべきである。

2.移民省・内務省のウエブサイトのサイバー犯罪の定義にすみやかにサイバー暴力の諸形態を含めるべきである。

3.EUはサイバー暴力の諸形態の定義に関する合意形成の努力をするべきである。

4.EUレベルのサイバー暴力の現象と被害についてジェンダー関連情報を収集し、効果的な介入のための指標を明らかにするべきである。

5.対策アプローチのために、女性と少女がインターネット利用空間における地位を否定されてはならない。

6.被害者の視点で対策を検討するため、質的かつ量的研究が必要である。

7.ジェンダー視点でのサイバー暴力の研修が導入されるべきである。

8.サイバー暴力について女性と少女に教育する啓発キャンペーンが必要である。

9.被害を避けるためICT業界での自主規制などの予防措置が講じられるべきである。

10.      サイバー犯罪と闘うEUレベルの諸機関はサイバー犯罪のジェンダー的形態に取り組むべきである。

註の中で、サイバー暴力被害のために自殺した事例が掲げられている。

2016年、イタリアのティチアナ・カントンはリベンジ・ポルノ被害を受け、仕事を解雇され、自殺した。

2012年、カナダの15歳のアマンダ・トッドは同意のないまま写真をオンラインに配信s慣れ、自殺した。

2013年、ブラジルの17歳のジュリア・レベッカは、パートナーガ同意なしに彼女の性的な写真をオンラインに掲載した後に、自殺した。

Sunday, December 19, 2021

女性に対するサイバー暴力01

EUのジェンダー平等に関する専門機関の「欧州ジェンダー平等研究所(EIGE)」がパンフレット『女性と少女に対するサイバー暴力』を作成した。2017年の作成だが、オンラインに再アップされた。

女性に対するサイバー暴力については、国連人権機関でもEUでも多様な研究が進んでいる。

国連人権理事会の「女性に対する暴力・特別報告者」の報告書でも取り上げられている。そのうち2つの報告書を下記で紹介した。

前田朗「女性に対するオンライン暴力」『Let’s90号(2018年)

前田朗「女性ジャーナリストへの暴力」『部落解放』794号(2020年)

この2つは『ヘイト・スピーチ法研究要綱』(三一書房)に収録した。

ジェンダー平等研究所(EIGE)のパンフレット『女性と少女に対するサイバー暴力』を簡潔に紹介する。

目次

序文

ジェンダーに基づく暴力の一形態としてのサイバー暴力

 ・女性と少女に対するサイバー暴力とは何か?

 ・女性と少女に対するサイバー暴力の諸形態を定義する

データの利用可能性と調査

法執行の対応

結論と勧告

序文

インターネットの普及、モバイル情報の急速な拡散、ソーシャル・メディアの利用が、女性と少女に対する暴力のパンデミックと結びついて、サイバー暴力をもたらしている。調査によると、女性の3人に1人が人生において暴力を経験している。インターネットと結びついた現象は新しいが、すでに15歳以上の女性の10人に1人がサイバー暴力を経験している。デジタル公共空間が安全で、女性と少女をエンパワーメントするものにすることが必要である。

ジェンダーに基づく暴力の一形態としてのサイバー暴力

・女性と少女に対するサイバー暴力とは何か?

これまでサイバー暴力はEUレベルでは概念的に定式化されていない。サイバー暴力の調査も十分ではなく、EU各国レベルの調査も制約がある。それでもサイバー暴力が男性よりも女性を標的としていることは判明している。1050歳の9000人以上のドイツ人のユーザーの調査(2012)で、女性の方が男性よりもオンライン被害を受けている。2014年のアメリカの調査でも同様の結果が出ている。男性のハラスメント被害よりも女性のハラスメント被害の方が深刻である。専門家は、サイバー暴力をリアル世界の暴力を切り離して理解することに警告を発している。オンライン暴力はオフライン暴力の継続である。

・女性と少女に対するサイバー暴力の諸形態を定義する

サイバー暴力には例えば、サイバー・ストーキング、同意のないポルノグラフィ(リベンジ・ポルノ)、ジェンダーに基づく脅迫・ハラスメント、「売女呼ばわりslut-shaming」、迷惑ポルノ、性的脅迫sextortion、強姦、殺すという脅迫、晒し、電子的人身売買などがあるが、これに限られない。

EIGEは、主に親密なパートナーによる暴力に焦点を当てる。オフラインと同様に、サイバー暴力には様々な形態があるが、被害者の心身に悪影響を及ぼすので、更なる調査が必要である。EUレベルで共有された定義はないので、これまでの研究を基に叙述する。

・サイバー・ストーキング

サイバー・ストーキングとはEメールやインターネット上の文章メッセージを手段とするストーキングである。これらは無害な行為ではなく、安全の感覚を失わせ、被害者に痛みや恐怖を惹き起こす。

攻撃的又は脅迫的なEメール、メッセージを送ること

インターネット上に攻撃的な投稿をすること

インターネット上で個人的な写真や映像を広めること

これらの行為が同一人に対して反復して行われる。

・サイバー・ハラスメント

サイバー・ハラスメントには多くの形態がある。

望まない性的意味合いのEメール、メッセージ

ソーシャル・ネットワークやネット・チャット室での均衡を欠いた、攻撃的接近

心理的又は性的な暴力の脅迫

ヘイト・スピーチ、貶める言葉、中傷、脅迫

・同意のないポルノグラフィ

サイバー搾取やリベンジ・ポルノとして知られるが、個人の同意なしに、性的な写真や動画をオンラインで配信することで、ある。実行犯は元パートナーであることが多い。被害者を公然と辱め貶める目的である。ただし、常に元パートナーとは限らないし、動機がつねに復讐であるわけではない。被害者のPCにハッキングして映像を入手する場合もある。

EU各国でもアメリカでも、同意のないポルノグラフィ事件が起きて、被害者が自殺している例もある。調査によると被害者の90%以上が女性であり、増加している。性暴力や強姦の映像をオンラインにアップする例もあり、2017年にはスウェーデンとアメリカで起きた事例が知られる。

Friday, December 17, 2021

宗教的ヘイト・スピーチと闘う05

Ⅲ 国連人権高等弁務官事務所及び人権メカニズムがとった行動

B 人権メカニズム

 

2020723日、国連自由権委員会は平穏な集会の権利に関する一般的勧告37号を採択し、集会は、差別や暴力の煽動となる国民、人種、宗教憎悪の唱道のために用いられてはならないとした。暴力の煽動の定義に照らして、委員会はラバト行動計画における要件、及びベイルート宣言に言及した。自由権委員会は、2020424日、新型コロナ・パンデミックとの関連で、公的言説が、マイノリティや外国人など周縁化された人々に対する唱道や煽動とならないように確保する措置をとるべきだとした。

20201124日、人種差別撤廃委員会は、法執行官による人種的プロファイリングを予防する一般的勧告36号を採択し、宗教を理由とするプロファイリングに言及した。

宗教所自由に関する特別報告者は、2020年の国連総会への報告書において、SDGsの履行に結び付けて議論している。特別報告者は、各国、国際組織、市民社会が社会統合を促進し、国連ヘイト・スピーチ戦略・行動計画、ラバト行動計画、フェズ行動計画、教育による過激主義予防UNESCO計画の活用に言及した。特別報告者は2020年の人権理事会への報告書で、宗教の名によるジェンダーに基づく暴力と差別に焦点を当てた。特別報告者はウズベキスタンの宗教の自由に関する法律起草に協力した。

 

Ⅳ 20122020年に受け取った貢献の評価

宗教に基づく人に対する差別、憎悪、暴力の煽動が増加しているが、行動計画の履行のための努力は低いレベルにとどまる。これまで、いくつかの諸国が政策目標の共有のため相互理解、対話、建設的活動のための協力ネットワークに加わり、さまざまな宗教共同体間の緊張に対処するメカニズムを置いている。多くの憲法と法律は暴力の煽動を犯罪とし、宗教に基づく煽動を禁止している。

各国の貢献は、宗教的不寛容、スティグマ、否定的ステレオタイプ、差別に対して、教育や文化活動、対話、戦略計画、メディア・キャンペーンを通じて対処がなされている。

いくつかの諸国は宗教の自由と多元主義を促進するために法的、政策的、制度的措置を講じている。近年、研修や啓発のための法的措置を講じる国が増えてきた。

 

Ⅴ 行動計画実施を加速する可能なフォローアップ措置に関する結論と考察

 

報告書は最後に結論をまとめている。

宗教に基づく差別、憎悪、暴力の煽動がオンラインでもオフラインでも増加している。新型コロナ・パンデミックの文脈で、ユダヤ人、ムスリム、キリスト教徒、バハイ教徒、マイノリティに対するヘイト・スピーチと差別が増えている。

行動計画の要点は、全体的包括的に実施される補足的措置という点にある。各国は、行動計画を履行するさらなる措置を講じることが求められている。不寛容、否定的ステレオタイプ、スティグマ、差別、暴力の煽動、及び暴力と闘う実際的行動に焦点をあてるべきである。

人種、国民、宗教憎悪の煽動に対処する措置を発展させる場合、表現の3つの類型を区別する必要がある。

(a)     刑事犯罪に該当する表現

(b)     刑事としては処罰されないが、民事又は行政制裁を正当化する表現

(c)     法的対応を要請せず、寛容と尊重のレベルの問題となる表現

扇動を禁止する法律は、特定されるべきであり、適用範囲を明確にし、国際基準に合致するべきである。各国は犯罪が不処罰とならないようにすべきである。

人種差別撤廃委員会と国際自由権委員会は有益なガイダンスを提供している(一般的勧告のこと)。ラバト行動計画は、自由な言説と煽動を区別する6つの要件を明示している。文脈、発話者、意図、内容と形式、程度、及び害悪発生の蓋然性に関連する。新型コロナとヘイト・スピーチに関する国連ガイダンスは各国に勧告をしている。

国連ヘイト・スピーチ戦略・行動計画はヘイト・スピーチに対処する実践的な作業を提示している。

宗教的不寛容に反対して発言することは、不寛容、差別、ヘイト・スピーチの予防にとって重要である。宗教的な差別と憎悪の煽動が増えている時、公務員、宗教指導者はヘイトに反対して発言するべきである。ラバト行動計画もベイルート宣言も同様に勧告している。

ヘイト・クライムは差別の現代的形態の不安要因である。ヘイト・クライムの監視・予防の努力をしている国があるが、包括的な対処がなされている国は少ない。

各国は、宗教的不寛容の文脈での新型コロナの影響に注意を払うべきである。

宗教的不寛容のジェンダー側面に関する情報を収集・提供した国もある。差別の多元的形態にさらに注意を払うべきであり、宗教に基づく差別のジェンダー側面を考慮し、女性がジェンダーと宗教の両方に基づいて差別されることが多い。

宗教に基づく差別と憎悪の煽動と闘うイスタンブール・プロセス(201911月)等の重要性を認める。

Monday, December 13, 2021

キシリトール政権語録06 今年の漢字10

清水寺サイトより

1213日(月)午後2時、日本漢字能力検定協会主催の「今年の漢字」が発表になりました。当日は会場となった本堂とその周辺で一部参拝にご不便をおかけいたしましたが、おかげさまにて本年もつつがなく執り行うことができました。皆様のご理解、ご協力に御礼申し上げます。>

https://www.kiyomizudera.or.jp/news/kanji.php

「今年の漢字」上位10は、金、輪、楽、変、新、翔、希、耐、家、病。

https://www.kanken.or.jp/kanji2021/common/data/release_kanji2021.pdf

テル――テルです。でうまくやろうと思いましたが、でつまずきました。

ハラ――当選すればになって踊る予定だったが、力及ばず落選の憂き目。キッシーに失業対策をおねだりしたのが失敗だった。

ノブ――の際なので金輪際けっこうです。して儲けようと思ったのが失敗。

イシ――連日のニュースのためにな政治家と思われてしまった。というよりも偏な偏向報道だ。

テル――能力も体力も十分の人気分だったのに、鮮味がないと誹謗されるのは許せない。

ノブ――べないイシハラ派だと! 何を言うか。んでも参与、あれっ、自分で言ってはいけないか。

ハラ――いまや夢も望もない政治家と蔑まれているんだから、な政治家だね(自嘲)。

イシ――えがたきをえ、忍びがたきを忍ぶしかないね。

ノブハラ――イシハラの恥さらしと言われたけど、に汚いのは親譲りなんだが。

イシテル――他人を見下す悪い気も譲り受けてしまったし。

ノブテル――ノブハラじゃない、ノブテルだ。4日間は参与の仕事をしたのに、報酬を辞退しろと不当な圧力に屈してしまったのが癪だ。

イシハラ――イシテルじゃない、イシハラだ。衆議院から落ちたから参議院に転身するために参与だったのに、散々な目に遭ってしまった。

イシハラノブテル――この汚名は絶対晴らすぞ。笑っている連中に思い知らせてやる。後ろから足を引っ張ったセコーのことは忘れないぞ。「セコイ」だと! それはお前の名前じゃないか。他人を騙し、見下して何が悪い。我が党の美しい伝統じゃないか。いまに見ていろ、こうなりゃ吹けよ風、呼べよ嵐、我亡き後に洪水よ、来たれ!

 

<今年の漢字・上位10選>

1 位 「金」 (キン・コン/かね・かな・こがね) 10,422 票(4.66%)

2 位 「輪」 (リン/わ) 10,304 票(4.60%)

3 位 「楽」 (ガク・ラク・ゴウ・ギョウ/たのしい・たのしむ・かなでる・このむ)

6,165 票(2.76%)

4 位 「変」 (ヘン/かわる・かえる) 5,605 票(2.50%)

5 位 「新」 (シン/あたらしい・あらた・にい・さら) 4,738 票(2.12%)

6 位 「翔」 (ショウ/かける・とぶ) 3,577 票(1.60%)

7 位 「希」 (キ・ケ/まれ・こいねがう) 2,941 票(1.31%)

8 位 「耐」 (タイ/たえる) 2,923 票(1.31%)

9 位 「家」 (カ・ケ/いえ・や・うち) 2,814 票(1.26%)

10 位 「病」 (ビョウ・ヘイ/やむ・やまい) 2,812 票(1.26%)

Sunday, December 12, 2021

宗教的ヘイト・スピーチと闘う04

N 個人がその宗教に関わらず代表され、社会参加すること

2012年以来報告してきた諸国の内12カ国が、個人がその宗教に関わらず代表され、社会参加することを促す措置を講じてきたが、新型コロナは宗教的理由に基づく差別を増大させている。

キューバは、宗教に関わらずすべての市民がすべての社会領域で代表と参加を実現するように促している。宗教指導者4人が国家人民会議に代表となっている。

メキシコによれば、宗教問題監督官は宗教者との対話と平和構築を進めている。

パキスタンは、政治参加、雇用、教育分野でマイノリティに属する個人の平等参加を保障する積極的是正措置を講じている。

ボリビアは、政治参加の権利、結社の自由、健康、労働、住居、食料、教育について差別のない完全な平等を確保するため法的政治的枠組みを用意している。

ラトヴィアによれば、労働・雇用、健康、経済活動、教育、子どもの権利について差別を禁止する法的措置を講じている。

O 宗教的プロファイリングに強く反対する

今回報告した諸国の情報にはこの点での重要情報が含まれていない。

P 宗教施設、墓地、教会の尊重と保護の措置と政策

コスタリカでは、宗教施設に対する過激なデモや攻撃は見られない。文化省はカトリック教会の宗教モニュメント遺産保持のために財政支援している。

パキスタンは、地方政府が宗教施設の保護措置を講じている。2020年に、ゾーブ、バルチスタンの200年の歴史のヒンドー寺院を修復し、ヒンドゥー共同体に返還した。

Q 新型コロナ・パンデミックの文脈における措置

バーレーンは、スンニ派とジャファリ派と協力して1000以上の宗教施設で新型コロナと闘うキャンペーンをしている。政府は女性の公衆保健のために啓発をする女性チームを組織した。国家人権委員会は、新型コロナの文脈で宗教の自由が損なわれないように監視している。

イタリアは、2020年、新型コロナに関連してマイノリティに対する不寛容と差別が増加しないよう包括的監視を行っている。2020111月、身体攻撃、言葉による攻撃などの事案が30件記録された。

トルコによると、新型コロナの宗教の自由への影響を減らす措置を講じている。家族・宗教センターが各地で相談体制を採っている。

 

Ⅲ 国連人権高等弁務官事務所及び人権メカニズムがとった行動

以下は次の項目から成る。

A 国連人権高等弁務官事務所

B 人権メカニズム

A 国連人権高等弁務官事務所

人権高等弁務官事務所は「国連ヘイト・スピーチ戦略・行動計画」を作成した。人権高等弁務官事務所はベイルート宣言の履行促進も図っている。

国連ヘイト・スピーチ戦略・行動計画

https://maeda-akira.blogspot.com/2021/05/blog-post_8.html

ベイルート宣言

https://maeda-akira.blogspot.com/2021/02/blog-post_19.html

人権高等弁務官事務所は反ユダヤ主義と闘う仕事を強化している。2020年のホロコースト被害者記憶国際デーに、高等弁務官は人権教育を強調し、普遍的人権原理と歴史の教訓を人々が理解できるように促進している。20201月、高等弁務官はジュネーヴの国連欧州本部で「忘れてはいけない」という展示を行った。201912月、UNESCO、宗教の自由特別報告者、世界ユダヤ人会議と協力して反ユダヤ主義に反対する教育政策のワークショップを開催した。

高等弁務官は、新型コロナ危機の文脈で人種差別に関するガイダンス、新型コロナとマイノリティの権利に関するガイダンスを発表した。

2020528日、高等弁務官、ジェノサイド予防国連事務総局顧問等が「新型コロナ・パンデミックに対処する宗教者の行動のグローバルな誓い」のための協議を開催した。高等弁務官は世界の宗教指導者に、多様なマイノリティを標的とする不寛容とヘイト・スピーチに反対して発言するように促した。「宗教者の行動のグローバルな誓い」には、宗教者が新型コロナ・パンデミックに際して行う観葉の宣言が含まれる。