Monday, February 18, 2013

国連人権理事会・平和への権利作業部会始まる

グランサコネ通信2013-02                                                                                                    *                                                                                         (1)平和への権利作業部会                                                                18日、ジュネーヴの国連欧州本部において国連人権理事会平和への権利作業部会が始まった(~20日)。国連人権理事会は通常3月、6月、9月に会期をもっているが、それとは別に平和への権利だけを議題とした作業部会が設定された。平和への権利については、人権委員会の時代から議論が始まっていたが、2008年ころからNGOのロビー活動が盛んになり、特にスペイン国際人権法協会の活躍で徐々に審議が本格化してきた。2011~2012年には人権理事会の専門家機関である諮問委員会で審議がなされ、「国連平和への権利宣言」草案が作成された。その報告が人権理事会にあげられて議論した結果として、3日間の作業部会設置となった。従来の経過については笹本潤・前田朗『平和への権利を世界に』(かもがわ出版)参照。                                                                                                                                                      18日午前は、人権理事会議長のあいさつに続いて、作業部会議長にコスタリカを選出。仮議題を採択して、審議に入った。最初にモナ・ズルフィカー諮問委員会作業部会議長が経過報告をした。                                                                                      続いて、平和への権利に関する総論的議論から始め、各国の発言。コトジボアール、キューバ、アメリカ、スリランカ、オーストラリア、ベネズエラ、シンガポール、カナダ、エジプト、韓国、インドネシア、EU、コスタリカ、ウルグアイ、シリア、イラン、セネガル、パキスタン、中国、マレーシア、OIC。                                                                                  アメリカは、従来と同様に平和への権利という概念を否定し、非生産的な議論であると批判し、人民の権利は認めない、国連憲章に合致しないと述べた。カナダは「平和などは人権ではない」と言い切り、作業部会の手続きそのものを認めないと述べた(さすがに議長が、この手続きは人権理事会決議に基づいてやっていると反論した)。韓国は、平和への権利の定義があいましであり、集団の権利は認めない、国連メカニズムのほかの場所でやるべき議論だ(平和に関する問題は安保理のテーマ)と述べた。EUは、平和と人権に結びつきがあることは認めるが、平和への権利は国際法に根拠がない、他の場所で議論するべきだと述べた。日本も人権理事会理事国だが発言しなかった。                                                                        NGOとして、アメリカ法律家協会(ロベルト・サモラ)が平和への権利を認めたコスタリカ憲法裁判所判決を紹介し、国際平和メッセンジャー(カルロス・ビヤン)が1618のNGOを代表して平和への権利の重要性を訴えた。                                                                    *                                                                                                         (2)世界史に貫かれた家族                                                                            長坂道子『「モザイク一家」の国境なき人生』(光文社新書、2013年)                                                                   長い副題「パパはイラク系ユダヤ人、ママはモルモン教アメリカ人、妻は日本人、そして子どもは・・・・・・」に明らかなように「国際結婚」の一族の物語が描かれている。著者は雑誌編集者を経てパリにわたり、そこで結婚した相手がアメリカ人だがユダヤ系で実はスイス在住という人物。その家族の波乱万丈の物語を中心に、友人知人ンおさまざまな「国際結婚」の例を紹介して、世界には実に多様な人々、多様な家族がいることを教えてくれる。家族の中に世界史と世界地図が組み込まれているとでもいうべきだろうか。二重国籍あり、無国籍あり、難民状態あり。アメリカ、イラク、イスラエル、日本が一つの家族の中に影を落とす。ペンシルヴァニア、ロンドン、チューリヒ、ジュネーヴと転居を繰り返し、現在はチューリヒ在住。宗教、言語、国籍、子どもの教育、食事と、さまざまなことが時に悩みの種になり、凄い発見に驚かされる。おもしろい本だ。