Thursday, February 21, 2013
平和への権利作業部会終了
グランサコネ通信2013-08
*
(1)作業部会終了
国連人権理事会平和への権利作業部会は、21日午後、最終セッションを開催した。議長が用意した報告書A/HRC/WG.13/1/2は、前日までのWGの詳しい経過説明と、それを受けての結論と勧告が含まれている。結論と勧告については、前日、アメリカとEUがWGは結論や勧告を出す必要はないとしつこく言っていたが、国連人権機関の通常のスタイルは、結論と勧告を出す形でやってきた。どういう内容になるか、半分期待、半分不安に思いながら報告書を開いた。勧告は簡単なものだった。およそ次の内容。
「WGの間になされた議論と、見解に相違が残されていることに基づいて、議長は人権理事会に次の勧告をする。
i. 第25会期前に、政府間WGの第2会期を開催する。
ii. それまでの間に、議長に、政府、地域的集団、関係者と非公式協議を行うことを許可する。
iii. 議長は、WG第1会期に行われた議論、及び上記の非公式協議に基づいて、新しい文書(宣言草案)を準備し、WG第2会期でさらに審議するためにその文書を提出すること。」
特に新しい内容があるわけではなく、当初の予定通りである。アメリカやEUがどう出るかと思ったが、iiiについて強い反対はしなかった。
イタリアは、平和への権利を認めない、国際法は武力行使を認めていると述べた。
アメリカは、普遍的なコンセンサスを形成するためにはもっと多くの諸国が関与するべきだと述べ、基本部分での共通認識ができていない(個人の権利と人民の権利、平和の権利を基礎とすることは人権に階層を認めることになる)ので、平和への権利ではなく、「平和と人権」という議論をするべきだと述べた(「平和と人権」というのは、平和への権利を否定するという意味)。
この程度の反対しか出なかったので、議長は採択に入り、報告書(結論と勧告を含む)はあっけなくコンセンサスで採択された。
(2)感想
アメリカの意見のうち、参加国が少なすぎるというのは、なるほどと思った。WG参加国家は全部で79か国。国連加盟国193の半分に満たない。しかも、その半分は初日だけの出席で、ふだんは20~30か国くらい。発言する政府も限られていたのが残念。平和への権利推進派は、ペルー、コスタリカ、キューバなど。総論賛成・各論一部反対は、イラン、ロシア、シンガポールなど。全面反対はアメリカとEUと韓国。完全黙秘は日本政府。
日本政府は4日間の作業部会でついに一度も発言しなかった。初日はともかく、他の日はほとんど欠席していた。世界で唯一、憲法に平和的生存権と書いてある国なのに、まったく無責任だ。
韓国政府は初日に反対意見を述べて、以後はほとんど見かけなかった。同じ時期に、韓国政府はNGO向けの人権研究をやっているので、それで忙しいのだろう。NGO向けにわざわざジュネーヴの国連欧州本部で人権研修をしている。日本政府では考えられないことだ。
初日に呆れたお馬鹿発言をして顰蹙を買ったカナダ政府は2度と顔を出さなかった。
NGOの参加も少なかった。事前の情報では24NGOということだったが、20に届かなかったと思う。特に大きな有名NGOが参加しなかった。たとえば、アムネスティ・インターナショナル、ヒューュマン・ライツ・ウオッチ、国際法律家協会、インターナショナル・ペン、インターナショナル・ピース・ビューローなど。発言するNGOも限られていた。
*
閉会後、ロベルト(アメリカ法律家協会)、ミコル・サヴィア(国際民主法律家協会)、ダヴィド(スペイン国際人権法協会)、笹本(日弁連)、武藤達夫(関東学院大学准教授)などで今後の活動について協議した。まずは、資料集の出版、続いて日本での専門家会議をどうするか、平和への権利を認めた判決の資料集を作るべき(日本、コスタリカ、韓国で6つの判決がある)など。
*
Cubee du President, Vin d’ALGERIE,2011.
Domaine Toulal, Gnerrouane, Vin Du Maroc, 2011.