Saturday, February 23, 2013
ネット右翼の思考を理解するには
安田浩一・山本一郎・中川淳一郎『ネット右翼の矛盾――憂国が招く「亡国」』(宝島社新書、2013年)
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ネット右翼には関心がない。関心はないが、向こうから押し寄せてくる。在特会が典型だが、今やネット右翼はネットの世界からあふれ出て、現実世界で蛮行を繰り広げている。集会妨害にやってくるし、誹謗中傷もひどい。関心がなくても、対処せざるを得ない。安田浩一『ネットと愛国――在特会の「闇」を追いかけて』(講談社)は、ネット右翼の特質を教えてくれる貴重な本だったが、その安田に2人の著者を加えて、ネット右翼を分析している。
「ネット右翼のリアル」(安田)は、在特会に見られる「愛国」の実態を追いかけている。「在日特権」という主張自体がほとんど妄想でしかないのに、妄想にとらわれた人間が異常なまでに激しい憎悪をたぎらせて、差別と暴力に走るのはなぜか。「弱者のツール」(山本)は、ネットで問題を起こす人たちの属性を発言しない、知人が少ない、学識や地位が低いと述べている。当たっているのかどうかしらないが、ネット右翼の規模は最大で120万人だという。多いと見るか、少ないと見るか。「常識」や「教養」が失われた社会の問題性を教えてくれる。「メディアの反日陰謀論」(中川)は、ネット右翼が主張するメディアの反日陰謀論がまったくの誤解と虚構であることを説明する。「メディアにそんなガッツはない」。悪いことはすべて韓国、朝鮮のせいにする意識のありようが問題だが、安倍晋三がネット右翼にすり寄り、いかにネット右翼を利用しているかも具体的に示している。ここにネット右翼の怖さがあるのだろう。まさに反動政治家を利用し、利用される関係だ。3人の座談会「ネット右翼の正体」も、よく理解できる。フジテレビたたきに見られるように、ネット右翼が「成果」を挙げてしまい、それを社会が知ってしまったため、ネット右翼の暴走が続いている。
もっとも、本書が分析対象とするのはネット右翼だけなので、分析の正しさは検証できない面がある。ネット右翼だけでなく、ネット左翼も、ネット**も、みな同じような傾向を持っているのではないだろうか。ネットを駆使する限り誰もがはまる陥穽ということかもしれない。