Tuesday, September 17, 2013

良心的兵役拒否決議案インフォーマル協議

17日午後、国連欧州本部で開催中の国連人権理事会24会期において、良心的兵役拒否に関する決議案のインフォーマル協議があったので、参加した。参加者は40名ほど。主催は、クロアチア、コスタリカ、ポーランド。決議案の修正案が配布された。10日に最初の案の検討会があったらしい。修正案は、全文が7パラグラフ、本文が20パラグラフ。あちこちに修正が施されている。パラグラフごとに、さらに修正意見があるかどうか、という形で進行。エジプト、キューバ、シンガポール、イギリスが頻繁に発言。そのほかにアメリカ、タイ、エストニア、アイルランド、スイス、オーストリア、ロシアなど。メキシコ、フィンランド、チェコは参加していたが発言しなかった。オーストリア、スイスは修正案でよいと述べたが、その後、エジプト、キューバ、イギリスなどが次々と修正意見を出した。修正内容は、すべて決議案をトーンダウンさせる内容だった。「人権高等弁務官事務所作成のガイドブック出版を歓迎する」を「考慮する」に変えるとか、「各国に良心的兵役拒否を許容するよう呼びかける」を「許容することを検討するよう呼びかける」のように、次々と骨抜きになっていった。いささか腹を立てつつ、笑ったのは、この件ではキューバとアメリカが見事に意気投合していたことだ。いつもは猛烈に批判し合う両国だが、キューバが修正案を出すと、アメリカが「賛成」。アメリカが意見を述べると、キューバが「先ほどアメリカが言った通り…」という調子だ。コスタリカ以外はすべて軍隊を持っている国だ。コスタリカ以外の軍隊のない国の代表は参加していなかった。軍隊がないので兵役もなく、兵役拒否もないから、関心がないだろう。先週、国際友和会(IFOR)のミシェル・モノーが「人権理事会が兵役拒否の権利を取り上げるのは初めてだから重要だ」と言っていた。これまでも他の議題の中で話題になったことはあるが、兵役拒否を議題として、決議まで出すというのだから重要なのは間違いない。第一次大戦時には、イギリスでもドイツでも、兵役拒否者は死刑だった。1000人規模で死刑になっている。第二次大戦時には、懲役刑だった。日本でも兵役拒否は犯罪だった。第二次大戦後、徐々に変わってきたが、第1に、兵役義務のない国家が増えた。アメリカでさえ志願制だ。第2に、良心的兵役拒否を認める国が増えた。「良心的」の解釈は国によって違い、明確な宗教的理由でなければ認めない国もあるが、ともあれ兵役拒否が徐々に認められるようになっている。ミクロネシア連邦憲法には兵役拒否の権利が明記されている。それでも、韓国やイスラエルのように兵役拒否を犯罪としている国もある。国連人権理事会というレベルで決議を出すことの意味は、第1に、良心的兵役拒否を認めることが世界的傾向になったことである。第2に、その根拠として思想信条の自由を明記したことである。第3に、義務としての兵役よりも志願制に移行するのがよいという考えを一応していることである。最初の案では、もっと強く志願制に移行するように呼び掛けていたようだが、トーンダウンしている。第4に、兵役拒否の代替奉仕の幅を広げて認めようとしていることである。軍隊がないことになっているのに、憲法を無視して事実上の軍隊を持ち、さらに国防軍にしたいとか兵役を盛り込みたいなどという議論が起きている日本では、こういう議論さえ知られることがない。軍隊がない、兵役がない、だから兵役拒否についてまじめに考えない。そのため、兵役拒否の権利が世界に広まっていることも考えようとしない。