Friday, September 27, 2013

国連人権理事会24会期閉幕(一方的強制措置、制裁を批判)

27日、人権理事会24会期(3週間)の最終日だった。26日午後から27日は決議の採択だった。諮問委員会委員の選挙も行われた。会期中に行われた討論をもとに、各国政府がそれぞれ担当し、協議しながら決議案をつくる。途中で公表して、他の諸国やNGOの意見を聞いて、手直しする場合もある。決議採択の直前に初めて公表されるものもある。毎回同じテーマで決議が続いている者もある。今回も次々と決議が採択された、例えば、「スポーツとオリンピック精神を通じた人権促進」「地方政府と人権」「奴隷制度の現代的諸形態特別報告者」「ジャーナリストの安全に関するパネル討論」「恣意的拘禁」「平等な政治参加」「人権と先住民族」等々。多くの決議は事前の調整ができているので、コンセンサス(投票なし)で採択される。しかし、意見の割れるものもあり、反対意見や修正意見が出ると、場が盛り上がる。議論の後に、投票になる。昔は1か国ずつ順に「賛成」「反対」とロールコール投票で楽しかったが、今は押しボタン式ですぐに結果が出る。今回一番の注目は「人権と一方的強制措置Human Rights and unilateral coercive measures」決議案だった。非同盟諸国とアラブ諸国が中心になって準備し、イランとパレスチナが提案国だ。事前に公開討議はなく、最終日に決議案が配布された。内容は、国家の固有名詞は出ていないが、明らかに、アメリカのユニラテラリズムによる介入や制裁が各国の人権にたいしていかに悪影響を与えているか、というものである。アメリカ、欧州、日本が批判対象と言ってよい。UCMは国際法違反、国際人道法違反と明記している。そして今後、このテーマの議論をどんどんやっていこうとい趣旨だ。ベネズエラが賛成演説をし、EUが「この決議案は政治的だ」と強く批判して、反対した。EUの反対意見は説得力がない。第1に、通常は決議案の内容を取り上げて、どのパラグラフ、どの言葉を受け入れないかを表明する。この部分が国際人権法と合致しないから反対と言えば、強い反対意見になる。それがなかった。第2に、手続き上の批判をするケースも多い。内容はいいが、討議が不十分だから、といった批判である。EUはそれも言わなかった。言ったのは「政治的だから、人権理事会ではなく、他の機関(つまり安保理)で議論するべき」ということだけだ。政治的なのは確かだ。でも、政治が人権状況を悪くしているのであれば、人権理事会で取り上げて何も困らない。EUが毎年出している死刑廃止決議案だって、政治的だ。EUには、政治的だからという意見を言う資格はない。結局、投票になった。賛成31、反対15、棄権1で、決議は採択された。他方、もめるかと思っていた「良心的兵役拒否」決議案はすんなんり採択された。準備段階の非公式会議で次々と修正されて、かなりトーンダウンしている。アメリカが意見を言ったが、反対はしなかった。アメリカには徴兵制がないので、反対理由がない。決議案は、市民の兵役拒否の権利を明示している。軍人の任務拒否には言及していない。これが入れば、猛烈に反対するだろう。続いて、韓国が「わが国は兵役拒否を認めない」(韓国では拒否すれば犯罪として刑務所行きだ)と切り出したので、反対するのかと思ったら、「だが、決議をすることに反対はしない」。NGOメンバーは苦笑していた。結局、コンセンサスで、つまり投票なしで採択された。もう一つ、驚いたのはFGM(female genital mutilation)の決議だ。提案国がガボンなのでまず驚いた。しかもアフリカ諸国を代表して提案するという。前文には「2011年7月1日、マラボにおけるアフリカ連盟の決議でFGMの禁止を求めている」といい、本文中では「FGMとの闘い」と繰り返している。つまり、アフリカ諸国が国家レベルでFGM禁止を主張して、国連に持ち込んでいる。かつて、「FGM禁止というのは西欧的な考えの押しつけである」といった議論があったが、今や、アフリカ諸国が一致してFGM禁止を提案している。詳細を検討してみないとわからないことも多いが、以前のような議論では済まないことが分かった。諮問委員会委員の選挙もなされた。毎年3分の1が選挙で選ばれていく。今回、アフリカはエジプトのHoda Elsdda*、ウガンダのAlfred Karakora+、アジアは中国のYihan Zhang、日本のKaoru Obata、東欧はロシアのMikhail Lebedev、西欧はスイスのJean Ziegle+選ばれた。*は女性、+は再選。                                                                 小畑郁(名古屋大学教授)                                                                 http://www.nomolog.nagoya-u.ac.jp/ls/teacher/obata.html