Thursday, September 19, 2013
他国の人権改善に無関心な国
18日から、国連人権理事会は普遍的定期審査(UPR)に入った。18日はトルクメニスタン、ブルキナファソ、ケープヴェルデ、19日はトゥヴァル、コロンビア、ウズベキスタン、ドイツ、ジブチ、カナダと続いた。作業部会での審査の結果が報告され、当該国家がどの勧告を受け入れ、どの勧告を拒否したかが明らかになり、最後に、各国及びNGOのまとめの発言があり、最終報告が採択される。実質的な審査は作業部会で行われるので、人権理事会の手続きはセレモニーと化している。NGOの傍聴も少ない。ただ、作業部会で多く注文を付けたNGOは、最後まで参加してフォローしている。前から思っていたことだが、報告書を見ていて、日本政府の発言が非常に少ないことがわかる。たとえば、ドイツの審査にあたった作業部会では、ちょうど200の勧告が各国政府から出された。そのために各国とも、ドイツの状況を調べ、質問し、そして勧告を出している。結構な努力が必要だ。ドイツがすでに実現していることを、実現していないと誤解して勧告を出した政府は、恥をかくことになるからだ。それでもどこも積極的に発言する。東アジア、東南アジアを中心にチェックしてみると、フィリピン2、スリランカ2、インドネシア3、モルディヴ2、バングラデシュ3、インド4、ネパール2、カンボジア2、中国3、ヴェトナム1、朝鮮3、韓国1、マレーシア3、パキスタン3、タイ2と、どこもドイツに勧告を出している。フィリピン2と書いたのは、フィリピンがドイツに対して2つの勧告を出したという意味だ。しかし、日本は1つも出していない。18日の審議でも一度も発言しなかった。世界各国から200の勧告が出され、東アジア、東南アジアから36の勧告が出されたのだが、日本政府はひたすら沈黙していた。眠っていたのかもしれないが。コロンビアに対しては全部で160の勧告が出ている。アジアについてみると、フィリピン3、シンガポール2、パキスタン2、マレーシア2、ヴェトナム2、インドネシア2、カンボジア2、スリランカ2、韓国2、中国1、タイ2である。たとえば、韓国はコロンビアに対して「武装集団から先住民族を保護する措置をもっと強化し、権利を保障せよ」「高級軍人による重大人権侵害や女性に対する性暴力に関する不処罰を終わらせる努力をせよ」と勧告している。ところが、日本は1つも勧告を出していない。これまでの会期の中で、日本が他の諸国に勧告を出しているのを聞いたこともあることはあるが、極めて少ないと記憶している。改めてチェックしてみると、尋常ならざる少なさだ。他国の人権状況に関心を持っていないのだろうと推測せざるを得ない。UPRは国連加盟国が相互にチェックし合うことによって人権状況を改善する制度だが、日本政府は前向きとは言えない。他国に勧告するためには、第1に、相手国の人権状況をきちんと調査しなければならない。第2に、他の諸国やNGOと協議して、どのような勧告が望ましいかを検討しなければならない。第3に、自国がサボっていることを他国に勧告できない(日本の場合、これが最大のネックかもしれない)。外交官の数の少ない各国でさえ、さまざまな努力を通じて多くの勧告を出している。ひときわスタッフの多い日本なら簡単にできることなのに、あまりやらない。日本外交官にとっては、高級レストランで接待して、政府開発援助の密談をするほうがお得意なのだろうか。
このテーマは、国際人権法研究においても重要になりうる。日本の人権状況を、日本に対するUPRの内容から議論することはこれまでも行われている。国際人権法学者が、文書記録だけをもとにしてわかったようなことを言っているが、それは現場で人権NGOがやっていることの二番煎じに過ぎない。国際人権法学者が調査して発言するのなら、人権NGOスタッフではできないことをやってもらいたい。日本に対するUPRではなく、他の諸国に対するUPRにおいて日本がどのような発言をし、どのような勧告を出したのか。それは意味のある勧告だったのか。相手国は受け容れたのか、拒否したのか。日本は他の諸国に関するUPRで、どの人権項目に強い関心を示しているのか。こうしたことを明らかにすることで、日本の人権状況に裏側から光を当てることができる。国際人権法研究の大学院生で、やってくれる人はいないものか。