Tuesday, August 20, 2013
時間と空間の謎を愉しむ
橋元淳一郎『時間はどこで生まれるのか』(集英社新書)
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冒頭の「哲学と科学の乖離」にはなるほどと思った。現代の哲学者による時間論は、相対論と量子論以後の現代物理学をほとんど無視して、いまだにニュートン流の考え方である。他方、科学者による時間論は、人間世界の時間に立ち入らない。両者が乖離している、と著者は言う。なるほど。そこで著者は、現代物理学を踏まえた哲学的時間論を期待しつつ、そのための「呼び水」として本書を書いた。
ミクロの世界に温度は存在しない
空間は虚である
今という瞬間は誰とも共有できない
確定できない「事件」発生時刻
時間と空間を交換できるファインマン図形
秩序維持の「意思」は進化の過程で生まれた
われわれは宇宙の創造に参画している
著者は「時間の謎へのやるせない想い」「片想いの恋」を抱き、現代物理学の入門的解説をしながら、時間の謎に迫ろうとする。とはいえ、現代物理学の知見を踏まえた時間論とは難しいもので、読者の理解をやさしくするために、いくつものたとえ話が用いられる。代表が赤玉と白玉の交換図式だ。説明はわかりやすいが、「わかる」のは「たとえ」の部分であって、時間論そのものではない。それでも時間の謎を愉しむにはいい本だ。結論は「時間の創造は宇宙の創造であり、われわれはそれに参画しているのだ」という楽しい言葉だ。
著者は、SF作家・相愛大学教授。