Tuesday, August 06, 2013

原発推進派はたった0.6%!?

平智之『なぜ少数派に政治が動かされるのか?――多数決民主主義の幻想』(ディスカヴァー携書)                                                                                 *                                                                                               2009年から1期、衆議院議員(民主党、後に離党)を務めた著者は、速やかな原発ゼロこそが成長戦略だとする「禁原発」政策を主張している。いわゆる原子力ムラの利権集団(電力会社、プラントメーカー、ゼネコン、経産省、研究者、マスコミ)の人口を独自計算により70万人と弾きだし、日本の全人口の0.6%とみる。「この少数の利権集団が、官僚制度や政治家をうまく使いこなして、原発行政を推進している」という。反原発、脱原発こそ本当の多数派であるにもかかわらず、政治は多数派の期待に反して、原子力ムラの利害を反映する。それはなぜか。どのようなメカニズムなのか。                                                                           「少数派は、繰り返しの情報操作によって、世論を誘導している。だから、ネガティブ・サイレント・マジョリティは彼らが作り出したマジョリティだ。彼らの提供する情報によって、消極的な推進派にされている。事実を提示し、対案を出して初めて、本当の多数派が形成される。それが政治家の責務だが、そこに挑戦する政治家が少なすぎる。」                                                                                                   著者は、少数派による情報操作がいかに巧みに行われ、利権が掠め取られるかを、いくつもの事例をもとに展開している。弱者の声が政治に届かない理由を明快に提示している。原発に限らず、いくつもの政治課題において、官僚依存体質がもたらしている弊害を明らかにしている。「多数決民主主義の幻想」が、これでもかと説明される。                                                                                        それでは処方箋は何か。即効薬はもちろんないが、少数派の利権を維持するための非効率社会を、より効率的な社会に代え、政治を変えていくために、たとえば地方分権化が提起される。その他、相続税ゼロ、減税など様々な提案がなされている。何よりも政治家とは何であり、いかに行動するべきかが提起されている。                                                                                      *                                                                                                               原子力ムラ60万という数字を見た時に、かつてアメリカの軍需産業の経営者・社員・その家族を含めた軍需産業人口700万という数字を思い出した(数字の正確さははっきりしないが)。2億5000万のアメリカの700万を多いと見るか、少ないと見るか。700万は、戦争を欲する人々である。戦争が起きないと、食べていけない。もちろん、自分たちは戦争に巻き込まれることなく、戦場に赴くことなく、劣化ウラン弾の製造で被曝することもなく、優雅にぜいたくな生活をすることだけを望んでいる。戦争の悲惨さは他人の上にだけ落ちていく。700万は、ノルウェー、フィンランド、スイスのような欧州の普通の国家の人口に匹敵する。700万の優雅な生活のために、彼らは軍産複合体をつくり、アメリカの戦争政策に影響を与え続けている。                                                                                               *                                                                                                                   ブルーチーズと、赤い悪魔のラベルのPARADIS,Pinot Noir, Geneve,2011.