Wednesday, August 07, 2013
吹き荒れる歴史修正主義に抗して
「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター編『「慰安婦」バッシングを越えて』(大月書店)
http://www.otsukishoten.co.jp/book/b114532.html
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「慰安婦」問題で歴史修正主義、歴史の否認発言を繰り返してきた安倍晋三政権発足後、安倍自身はもとより、橋下徹・維新共同代表も加わって、「アウシュビッツの嘘」ならぬ「慰安婦の嘘」発言が猛威を振るってきた。ついには「麻生ナチス発言」まで飛び出して、歴史修正主義者の無知と無恥がさらけ出されている。
こうした状況への抵抗として、本書は世に出された。「慰安婦」問題を裁いた2000年女性国際戦犯法廷から13年、VAWW-RACの女性たちを中心に、男性も協力して、「慰安婦」問題における「歴史の否認」「安易な和解の押しつけ」「植民地主義」を克服し、東アジアにおける平和と正義を実現するための「主体」を構築するための1冊だ。
「慰安婦」誘拐犯罪に関するコラムを執筆させてもらったが、時間を取れず読んでいなかったので一気に読み通した。
社会権規約委員会や拷問禁止委員会も「慰安婦」問題に言及して日本政府に勧告しているように、国際的にはずっと以前から決着している問題に、日本政府だけが背中を向け続け、ついには異常な歴史修正主義者が政権の座についている。国内の異常な無責任ぶりをただすために、さらなる努力が必要だ。
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第1部「河野談話」と「慰安婦」制度の真相究明――何がどこまでわかったのか?
1 「河野談話」をどう考えるか――その意義と問題点(吉見義明)
2 被害者証言に見る「慰安婦」連行の強制性(西野瑠美子)
【コラム】中国山西省・盂県に見る性暴力被害の強制性(池田恵理子)
3 「慰安婦」問題と公娼制度(小野沢あかね)
【コラム】「慰安婦」誘拐犯罪――静岡事件判決(前田朗)
第2部 日本政府の法的責任――なぜ「国民基金」は解決に失敗したのか?
1 「国民基金」の失敗―日本政府の法的責任と植民地主義(金 富子)
2 韓国挺対協運動と被害女性―なぜ「国民基金」に反対したのか(尹美香)
3「国民基金」と反対運動の歴史的経緯(鈴木裕子)
【コラム】東京裁判・BC級戦犯裁判と日本政府の責任(林博史)
4 被害者不在の「和解論」を批判する(西野瑠美子)
第3部 「慰安婦」問題の解決――今何が必要か
1 なぜ多くの若者は「慰安婦」問題を縁遠く感じるのか――若者の現在を読み解く(中西新太郎)
2 教科書問題と右翼の動向(俵義文)
【コラム】忘却に抵抗するドイツの歴史教育・記憶の文化(岡裕人)
3 「慰安婦」問題の解決に何が必要か――被害者の声から考える(梁澄子)
【コラム】日本軍「慰安婦」問題解決のためのもう一つの国連人権制度・UPR(安善美)
4 日韓請求権協定と「慰安婦」問題(吉澤文寿)
5 世界史のなかの植民地責任と「慰安婦」問題(永原陽子)
付録 ブックガイド、年表、「河野談話」など各種資料