Thursday, August 22, 2013

恋愛とセクハラの近くて遠い距離を測る

牟田和恵『部長、その恋愛はセクハラです!』(集英社新書)                                                                       *                                                                                                           著者は社会学者で大阪大学教授。1989年に起きた福岡セクハラ裁判、当時セクハラ訴訟第一号とも呼ばれ、日本にセクハラという言葉を広めた事件の裁判に関わり、それ以来セクシュアル・ハラスメントの理論と実践に取り組んできた専門家だ。                                                                                                だが、本書は通常のセクハラ解説書ではない。タイトルだけを見て受け狙いで面白いタイトルを考えたなと思ったが、内容はまさにタイトルに合致している。つまり、セクハラしそうな男性、あるいは職場で部下にセクハラされるかもしれない管理職男性のための、やさしい、そして深い手ほどき本である。                                                                                                        「なぜ男性はセクハラしていること、セクハラと受け取られることに気付かないのか、セクハラと訴えられてもその理由が理解できないのはなぜなのかに焦点を当て明日。言い換えれば、男性にはなぜ『現実』が見えないのか。セクハラしたつもりはないのに、セクハラだと訴えられる、『理不尽』と燃える目になぜ遭わなければならないのか。そして、『自分はやっていない』と主張しているうちに、男性にとって事態はますます悪化していく・・・。どうしたらそんな目に遭うのを防げるのか――そうしたことを考えていきます。」                                                                                                  第一章 間違いだらけのセクハラ「常識」                                                                                               第二章 セクハラの大半はグレーゾーン                                                                                                第三章 恋愛がセクハラになるとき                                                                                                             第四章 女性はなぜはっきりとノーを言わないのか、                                                                                                       男性はなぜ女性のノーに気付かないのか                                                                                           第五章 恋愛とセクハラの近くて遠い距離                                                                                                       第六章 オフィスにセクハラの種はつきまじ                                                                                                                第七章 周囲の方々、担当者へ                                                                                                                                  終章  後で訴えられないために                                                                                                                                           *                                                                                                                         出て来る事例を読むと、おもしろくて笑える(笑っている場合ではないのだが)。しかも、なるほどなるほどこんな奴いるなと思い当ってしまう(思い当っている場合ではないのだが)。次から次と悲しい男たちの話が出て来るので、しまいにはうんざりしてしまう(うんざりするのは女性たちのほうだろうが)。「女性はイヤでもにっこりするもの」とか、「中高年のモテ要素は、地位と権力が九割がた」とあるのも、納得。こんな簡単なことに気付かない男が多いことも驚きだが、気付いているつもりの自分も危ういと教えてくれる本だ。