Thursday, August 29, 2013
取り除ける放射能は取り除ける
児玉龍彦『放射能は取り除ける――本当に役立つ除染の科学』(幻冬舎新書)
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2011年7月の国会参考人演説で厳しい批判の声を上げ、被災者救済を訴えた著者の、『内部被曝の真実』に続く新書である。南相馬市を中心に福島の除染に携わってきた現場の体験と専門家の知識を総動員した本で、しかもとてもわかりやすい。除染に対する政府や東電の無責任ぶりが際立つだけに、「除染はできない。移染しているだけだ」という批判をしがちだが、きちんとした科学知識をもとに、現地の生活者の視線で、できる限りの除染を進めるべきだという著者の立場は、実践的に優れている。街中の生活空間、とりわけ子どもたちが通う幼稚園や学校の除染の正しい在り方が説明される。他方で、森林の除染は効果が出にくい。福島の農業を復興させるために、農地の除染はどのように進めるべきか。水は大丈夫か。こうした基本を丁寧に説明している。「除染できるところ、住めるところの環境を目一杯よくしていく。それとともに、10年以上も住めないという地域では、新しい町の構想を住民のコンセンサスでつくりあげていく。それが第一歩でないだろうか。」著者は、非科学的な議論を排除するとともに、現場で生活する「当事者主権」を強調し、上から官僚主導で進める除染や復興の虚偽を厳しく批判している。除染を「点」から「線」へ、そして「面」へとつなげていく息の長い、計画的で、政府の責任による除染計画の必要性が明らかにされる。