池上英洋『芸術家の愛した家』(エクスナレッジ、2016年)
<17人の画家の私的空間を探訪。
■収録内容
ダリの家、藤田嗣治の家、セザンヌの家
ルノワールの家、ルノワールの家、ロートレックの家
モローの家、ミレーの家、ミケランジェロの家
・COLUMN ミケランジェロの制作工房
ルーベンスの家、ラファエロの家、エル・グレコの家
ドラクロワの家、モリスの家、モネの家、ゴッホの宿
レンブラントの家、マグリットの家
・COLUMN 芸術家の相関図、芸術家の年表>
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斬新で、きらびやかで、優しさに満ちた素敵な本だ。表紙はスペインのカダケスにあるダリの家「卵の家」。
17人の巨匠たちの住んだ家、泊まった宿――これらの多くは記念館・美術館となってるが、各地を訪れ、膨大な写真を用いて臨場感あふれる解説。
作家論でも作品論でもなく、そのための水路の一つとしての、住んだ家、制作した場所、好んだ空間、眺めた景色、生活用具、室内の様子、蒐集品の調査・探求。
美術史においては、一方で画家の性格や心境を知ることも必要だが、鑑賞に際してはそうした状況を遮断して作品そのものに向き合わなくてはならないという。個人の心境に頼って作品を論じる主観的な方法には危険が伴う。とはいえ、残された情報を総動員することも、もう一つの方法であろう。
著者は「画家の個人的な情報に頼りすぎないことは重要なのですが、しかし筆者は同時に、それでも作品の理解には、画家の気質や生活、当時の社会状況などの情報が欠かせないと考えています」と述べる。
写真、解説に加えて、住所、入場料、URLも掲載されている。西洋美術愛好者にはたまらない美術観光ガイドである。
私が行ったことがあるのはルノワールとレンブラントの家だけだ。
私が行ったことがあるのはルノワールとレンブラントの家だけだ。