Sunday, January 08, 2017

大江健三郎を読み直す(70)教会・燃えあがる緑の木の発展

大江健三郎『燃えあがる緑の木 第二部揺れ動く(ヴァシレーション)』(新潮社、1993年)
当時読んでいないので、今回初めて読んだ。
新しいギー兄さんの転落、失墜にもかかわらず、燃えあがる緑の木は、静かに徐々に信頼を獲得し、活気に満ちた空間を形成していく。その過程を、サッチャンが描くスタイルは第一部と同じである。
主役は、ギー兄さんというよりも、その父親であり、元外交官である。大江をモデルとするK伯父さん、元外交官の「総領事」、ギー兄さん、サッチャン、外部から教会に参入した伊能三兄弟、かつてはギー兄さんへの球団者であった亀井さん。これらの人々が織りなす「日常」と「日日常」の中で、精神の葛藤劇が繰り広げられる。身体的な治癒と精神の癒しの双方で、語られるべきこと、考えるべきことが次々と登記される。
「第七章 アレクサンダー大王のてんかん」におけるギー兄さんの再びの失墜と、ギー兄さんを取り巻く人々の信頼にもかかわらず、逃走するサッチャンの箇所は、一読して理解するのは難しかった。ここから第三部のへの舞台の転換、物語の進展が始まることになる。