同僚の絵画展だ。神保町のCORSOで開催中。
砂に取り憑かれ、砂丘に取り組み続けて35年。以前は鳥取砂丘や日本の砂丘中心だったが、日本には砂丘がなくなってきたので、世界の砂漠に出かけて調査し、作品にしている。100号を100枚が目標ということで、今回も10枚の新作を展示。全部で90枚近くなったようだ。100枚いっきょに展示が出来ればいいが、そんな大きな画廊はない。体育館にでも並べるか、晴れた日に鳥取砂丘で展示するか、といったレベルの大きな企画でないと実現できなくなるから大変だ。
彼女には去年、90分かけてのインタヴューを2回、やらせていただいた。その記録『青春の造形2013 松尾多英 砂の造形美と格闘する』(27,000字)をまとめたが、その一節を下記に引用。
* *
――それでは、世界の砂漠の話に入りましょう。いろんな砂漠があって、色だけとってもかなり違う。エジプトの黒い砂漠、オーストラリアのクリーム色の砂漠ということですが、アフガニスタンのハイバル峠からジャララバードにかけての砂漠は、灰色と茶色でした。クンドゥズの砂漠は黄色っぽかったように思います。
松尾――タクラマカン砂漠には、一回入ったら二度と出てこられないという砂丘があります。たしかに入ってしまうと、どこもかしこも同じ風景です。
――砂漠は実は個性的で、しかも全部同じに見える。
松尾――ニューメキシコのホワイトサンズに一人で行ってきました。真っ白い砂漠です。
――ニューメキシコということは、アメリカのテキサスの近くですね。
松尾――いくつも砂丘が連なっていて、道に迷ってしまいました。徐々に夕方になってその辺りは、コヨーテが出没するそうで、必ず夕方までに帰ってくるように言われていたのです。でも、夢中になって歩いているうちに、夕方になって、方向が分からなくなり、完全に迷子になりました。夜になって、その日は十五夜で月明かりを頼りに歩きながら、私はもうここで死ぬかと思いました。
――夜の砂漠を歩くって、堂々巡りに陥るパターンですよね。
松尾――まっすぐ歩いているつもりでも、砂丘の斜面の上をぐるぐる回ってしまうんです。どこに向かっているかもわからなくなる。恥ずかしいのですが、本当に泣き叫びました。コヨーテに食べられるのかと無念に思いました。
――無事にコヨーテに会えたんですか(笑)。
松尾――残念ながら会えませんでした。
――逃げられたんじゃないんですか(笑)。