ベラルーシ政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/BLR/18-19.
15November 2012)によると、行政刑法及び刑法が、人種、民族、宗教的憎悪に基づいて行われた行為に関する責任を定めている。行政刑法第九条二二項は、ベラルーシ
語及びその他の言語の公然たる侮辱又は中傷、その言語使用の妨害又は制約、言語を理由とする憎悪の唱道には責任が生じるとしている。行政刑法第七条三項は、人種、民族、宗教的憎悪に基づいた行政犯は刑罰加重事由としている。刑法第一九〇条は、平等を含む憲法上の権利と自由の剥奪は刑事責任を生じるとしている。刑法第一三〇条は、人種、民族、宗教的憎悪又は不和の煽動は責任を生じするとする。一項は、人種、民族又は宗教的敵意又は不和の煽動に向けられた犯罪である。二項は、人種、民族又は宗教的敵意又は不和の煽動に向けられた犯罪が、暴力を 用いて、又は公務員が権力を行使して行った場合である。三項は、一項及び二項の犯罪が集団によって行われ、人の死を惹起した場合である。人種、民族又は宗教的憎悪又は不和、一定の社会集団に対する政治的イデオロギー的敵意又は憎悪に基づいて犯罪を行った場合の責任として、ジェノサイド(刑
法第一二七条)、人道に対する罪(刑法第一二八条)、殺人(刑法第一三九条)、故意の重大傷害(刑法第一四七条)を定める。
人種差別に基づいて行われた刑法犯は、四件(二〇〇三年)、二件(二〇〇六年)、一件(二〇〇八年)、一件(二〇〇九年)である。刑法第一三〇条で有罪とされた人員は、刑法第一三〇条一項(人種、民族又は宗教的敵意又は不和の煽動に向けられた犯罪)は、一名。同条二項(人種、民族又は宗教的敵意又は不和の煽動に向けられた犯罪が、暴力を用いて、又は公務員が権力を行使して行った場合)は、一名(三年の刑事施設収容)。同条三項(一項及び二項の犯罪が集団によって行われ、人の死を惹起した場合)は、四名であり、うち二名は五年の刑事施設収容、残りの二名は八年であった。
二〇〇四年四月、ホミエルで民族紛争を煽るパンフレット五〇〇〇部を押収し、破棄した。二〇〇四年五月、「ロシア国民統合」という地方団体とその指導者が同様の嫌疑で行政犯の責任を問われた。二〇〇六年、ムスリム・コミュニティの指導者から検事局に、新聞『ゾーダ』が預言者マホメットを嘲笑するイラストを掲載したと通報があり、刑法第一三〇条に該当するため刑事手続きが開始された。二〇〇八年から〇九年にかけて、「キリスト教イニシアティヴ」という会社が、「汚い戦争」「ロシアの殺人者を裁く」「ユダヤ人と非ユダヤ人」などの書物を流布して、ユダヤ人の名誉と尊厳を侵害し、民族憎悪を煽動した。二〇〇八年一二月、ミンスクの地方裁判所はこれらの著作を過激文書と判断した。二〇〇九年反過激主義法に基づいてこれらの著作を押収し、「キリスト教イニシアティヴ」の販売所を閉鎖し、団体は解散となった。
人種差別撤廃委員会はベラルーシ政府に次のように勧告した(CERD/C/BLR/CO/18-19.
23 September 2013)。条約第四条に合致した、人種差別煽動を禁止する包括的な特別法がない。ヘイト・スピーチと戦う法律が存在しない。条約第四条に関する一般的勧告一五(一九九三年)を想起し、直接形態でも間接形態でも人種差別を禁止し、人種主義団体、人種主義ヘイト・スピーチ、人種暴力の煽動を犯罪とし、人種主義ヘイト・スピーチを刑罰加重事由とする包括的立法を行うよう勧告した。反過激主義法の解釈が非常に広汎な方法でなされている。条約の諸原則を厳格に理解して、反過激主義法の解釈と適用を行い、人種差別撤廃のために活動する人権擁護者の不利益にならないようにするべきである。反過激主義法の解釈と適用に関する具体的状況を報告するよう要請する。