Sunday, September 14, 2014

ヘイト・クライム禁止法(85)スロヴァキア

スロヴァキア政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/SVK/9-10. 27  August 2012)によると、二〇一一年六月二七日、政府の常設専門機関として「レイシズム・外国人嫌悪・反対ユダヤ主義予防撤廃委員会」が発足した。委員は三二人であり、そのうち一二人は市民社会代表、三人は独立した専門家である。政府は二〇一一年に過激主義と闘う規則三七九号を承認した。
二〇〇九年、人種主義的動機による犯罪は一三二件であった。六八件は処理済である。七九人の犯罪者が有罪となったが、うち一五人が少年であった。刑法第四二三条(国民、人種、信念の中傷)が七件である。刑法第四二四条(国民的、人種的、民族的憎悪の煽動)が九件である。刑法第四二一条(基本権と自由の抑圧を目的とした集団の支援・促進)及び刑法第四二二条(過激文書の制作、流布、所持)が一一二件である。
二〇一〇年、人種主義的動機による犯罪は七九件であった。四八件は処理済である。七九人の犯罪者が有罪となったが、うち一〇人が少年であった。刑法第四二一条(基本権と自由の抑圧を目的とした集団の支援・促進)及び刑法第四二二条(過激文書の制作、流布、所持)が七一件であった。刑法第四二四条(国民的、人種的、民族的憎悪の煽動)が二件である。刑法第四二四条(a)(人種、国民、国籍、皮膚の色、民族的出身、家族的出身に基づく人に対する煽動、中傷)が一件であった。
二〇一一年、人種主義的動機による犯罪は二四三件であった。一〇七件は処理済である。七九人の犯罪者が有罪となったが、うち一〇人が少年であった。刑法第四二一条(基本権と自由の抑圧を目的とした集団の支援・促進)及び刑法第四二二条(過激文書の制作、流布、所持)が二二七件であった。刑法第四二四条(国民的、人種的、民族的憎悪の煽動)が六件である。刑法第四二四条(a)(人種、国民、国籍、皮膚の色、民族的出身、家族的出身に基づく人に対する煽動、中傷)が一件であった。
警察はロマ、ユダヤ人、EU以外からの移住者に対する暴力の防止に努め、過激な右翼による集会を監視している。警察活動の明確化のため、過激主義を五つに分類している。①右翼過激主義(レイシズム、ファシズム、ナチズム等)、②左翼過激主義(アナーキズム、反グローバリズム等)、③宗教的過激主義、④エコロジカル過激主義、⑤スポーツにおける暴力、である。近年、スポーツ・イベント参加者による暴力や過激主義の表明が増加している。レイシスト、フーリガンと称して、フットボール・ファンの一部が右翼過激主義に加わっているが、特定の指導者や集団によるものではなく自然発生的である。

人種差別撤廃委員会はスロヴァキア政府に対して次のように勧告した(CERD/C/SVK/CO/9-10. 17 April 2013)。過激主義と人種的動機による犯罪が混合しているため、それぞれについての詳細が明らかでない。ヘイト・クライムを訴追し、人種主義団体の活動を抑制するための効果的措置を講じるよう勧告する。人種主義団体への資金援助や参加を犯罪とするよう勧告する。ヘイト・クライムの発生件数、性格、判決、年齢、ジェンダーなどの統計データを報告するよう要請する。メディアとインターネットにおけるヘイト・スピーチが増加しているという。ソーシャル・ネットワークやスポーツ分野でロマやハンガリー人、市民でない者を標的としたヘイト・スピーチが見られる。マイノリティや外国人に対する人種憎悪を煽動した個人や集団を特定し、政治家やメディアによるヘイト・スピーチを操作し、制裁を科すように勧告する。マイノリティに対するヘイト・スピーチなどを監視する独立機関がない。政治家による犯罪を捜査するための独立機関を設置するよう勧告する。人種的動機による全ての犯罪が国内法と条約に沿って訴追されるよう迅速な措置を講じるよう勧告する。