昔、太宰治という男がいた。
日本一いい加減で、日本一まじめで、日本一悲しい男だった。
いまなお太宰は誰にも理解されない。
『人間失格』のやるせなさとあざとさは今後も理解されないだろう。
誰にも理解されないのは、津軽の男だけではない。
ここに秋田出身と称する、横浜の男がいる。
横浜市民の誰も、この男を横浜市民と思っていない。
横浜を出てこの国のトップに座った男は、平衡感覚を失って漂流した挙句、自滅した。
仏「ルモンド」が「流れ星のような首相」と評したのは、言い得て妙。
日本一無能で、日本一嘘つきで、日本一権力を持った男の悲しみは、誰にも分らない。
さて、それで、何かが始まるのだろうか。
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私は、その男の写真を三葉、見たことがある。
一葉は、その男の、幼年時代、とでも言うべきであろうか、十歳前後かと推定される頃の写真であって、その子供が、湯沢の池のほとりに、荒い縞の袴をはいて立ち、醜く笑っている写真である。
多くの人々が、ひとめ見てすぐ、
「なんて、いやな子供だ」
と頗すこぶる不快そうに呟つぶやき、毛虫でも払いのける時のような手つきで、その写真をほうり投げるかも知れない。
まったく、その子供の笑顔は、何とも知れず、イヤな薄気味悪いものが感ぜられて来る。「皺くちゃ坊ちゃん」とでも言いたくなるくらいの、まことに奇妙な、そうして、どこかけがらわしく、へんにひとをムカムカさせる表情の写真であった。
第二葉の写真の顔は、これはまた、びっくりするくらいひどく変貌していた。学生の姿である。法政大学時代の写真か、とにかく、おそろしく美貌の学生である。しかし、不思議にも、生きている人間の感じはしなかった。
もう一葉の写真は、最も奇怪なものである。まるでもう、としの頃がわからない。ひどく汚い部屋の片隅で、小さい火鉢に両手をかざし、こんどは笑っていない。どんな表情も無い。火鉢に両手をかざしながら、自然に死んでいるような、まことにいまわしい、不吉なにおいのする写真であった。
所謂「死相」というものにだって、もっと何か表情なり印象なりがあるものだろうに、とにかく、どこという事なく、見る者をして、ぞっとさせ、いやな気持にさせるのだ。私はこれまで、こんな不思議な男の顔を見た事が、やはり、いちども無かった。
――と、ここまで書いて、一人の男は玉川上水に向かった。
もう一人の男はパンケーキを食べにホテルニューオータニに出かけた。
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I
am dying, forever trying
By Rod Stewart
I
am sailing, I am sailing
Home
again cross the sea
I
am sailing, stormy waters
To
be near you, to be free
I
am flying, I am flying
Like
a bird cross the sky
I
am flying, passing high clouds
To
be with you, to be here
Can
you hear me, can you hear me
Through
the dark night, far away
I
am dying, forever trying
To
be with you, who can say
We
are sailing, we are sailing
Home
again cross the sea
We
are sailing stormy waters
To
be near you, to be free
Oh Lord, to be near you, to be free
Oh my Lord, to be near you,
to be free
Oh Lord
Oh
Lord, to be near you, to be free
Oh
my Lord, to be near you, to be free
Oh
Lord
Rod Stewart - Sailing