Sunday, October 09, 2011

淺川凌『福島原発でいま起きている本当のこと』

淺川凌『福島原発でいま起きている本当のこと』(宝島社、 2011年9月)


http://tkj.jp/book/?cd=01858001



気になる本を見つけました。内容の当否について私には判断できないところもあるのですが、こんな本があります。どなたか検討をお願いします。



上記に書かれていますが、著者は、元大手電機メーカの原子力部門の技術者で、福島第一原発の元主任指導員だそうです。福島第二や柏崎刈羽にもいたそうです。



読んでみると、確かに現場にいた人でないと分からないことがたくさん書かれています。防護服やマスクの実際(装着した時の実感)、免震重要棟の中も放射能汚染されていると言う推測とその説明、汚染水処理配管の実 態(例えば「錆び」)など、現場に長年いた人ならではの記述がずっと続きます。



重要な指摘がいくつもあるのですが、ここでは2点だけ紹介しておきます。



第1に、著者はメルトダウン・メルトスルーに疑問を投げかけています。「圧力容器の温度」や、放射線建屋内の「放射線量」から言って、大部分の燃料が炉心溶融したメルトダウン・メルトスルーでは説明がつかないと いいます。東電がメルトダウン・メルトスルーの可能性を認めたのは、もっと隠したい事実があるからにちがいないそうです。現に、その後も メルトスルー対策の作業をしていないと指摘。著者の推測は「燃料の一部分がメルトダウンしたにしろ、その残りは『散らばって いる』」、「燃料ペレットは散らばっていて、どこにあるかわかっていない」のだということです。



第2に、小出裕章さんが提唱して、東電も採用せざるをえなかった「新工程表」の「地下ダム」について、「地下水汚染を止めるという点では、一定の効果はあるでしょうが、同時にリスクもあります。ダムができる と、タービン建屋の地下は水がせきとめられた『ダム湖』のような状態になります。地盤は軟弱になり、地震による『液状 化』の危険をはらんでいます」と指摘しています。著者は、小出さんの知恵は「本当に貴重だ」と言いつつ、現場の状況と合っていないところ もあるので、「現場をじっくり見て、そこで働いた人間の声を聞いて


いただきたい」と述べています。



その他、現場の状況について様々な指摘があります。一読して、なるほど現場の情報と思いましたが、私は現場を知らないので、本当のことはわかりません。著者が本当はどういう人物なのか。ライターが現場の人に取材 すればこのくらいのことは書けるのかどうか。著者は一人なのか、それとも複数の人間の知識を集めたものなのか。