服部禎男『「放射能は怖い」のウソ』(ランダムハウスジャパン、2011年)
http://ameblo.jp/iwasaki0408
電子書籍版
http://noahsbooks.co.jp/sakuhin/sakuhin_detail_B02.html
<原発と放射能を第一線で見続けてきた著者が語る、放射能の真実。マンガつきのQ&A形式で、難しい話が簡単にわかります! 「ここでお話しする内容は実際に私が見たり聞いたりしたことばかりです。世の中にはデマや噂があふれています。どうして作り話がとびかうのでしょうか。どうかそんなものに流されることなく、正しい情報を知って、行動してほしいと思います」(「はじめに」より)>
著者は、中部電力で浜岡1号機計画を推進し、動燃事業団、電力中央研究所理事を経て、電力中央研究所・元名誉特別顧問。原子力ムラの一員です。1989年に放射線ホルミシス研究委員会委員長。
福島第一原発から出ている放射能は「恐れるレベルの放射能ではないので、そこで生活しても何の問題もありません」(30頁)と断定しています。「そこで」は、何度読んでも福島第一原発としか読み取れませんので、原発周辺で生活しても大丈夫という趣旨のようです。子どもや妊娠中の女性も大丈夫と主張しています。
福島第一原発事故がレベル7という点について、「福島が7なら、チェルノブイリは10以上になるんじゃないかな」と述べています(52頁)。7までしかないのに。
細胞は修復することと、低線量被曝は健康にいいというホルミシスの主張に貫かれています。プルトニウムは「飲んだって平気」「たとえ血液に入ったって問題ありません」(117頁)。そして、ICRPの見解は、1927年のマラーのショウジョウバエ実験に基づいているデタラメだそうです。
本書のユニークさは、第1に、福島第一原発で放出された放射能の総量について数値を示すことなく、実証抜きで、恐れる必要はない、大丈夫と断定していることです。
第2に、ラッキー博士に始まるホルミシス理論をはじめとするいくつかの論文を推奨していますが、その具体的内容がきちんと紹介されず、文献の出典も示されず、「トップレベル医学者」「権威」としていること。
第3に、不思議な陰謀論。例えば、「原子力発電が広まることで損をするグループの存在。いろんな背景が電力の裏には潜んでいるんだよ。これは怖い話になるからここまでにしておこうね。」(119頁)。何度かほのめかしているのですが、反原発の陰謀が存在するらしいです(爆笑)。