Sunday, October 09, 2011

菅谷昭『子どもたちを放射能から守るために』

菅谷昭『子どもたちを放射能から守るために』(亜紀書房、 2011年)

http://www.akishobo.com/info/473.html




チェルノブイリ原発事故被災地の医療支援をした医師、現・松本市長である著者による、とてもわかりやすい、簡潔な解説書です。わずか82頁ですから、細かなことは書いていませんし、学術的なものでもありません。でも、放射能の入門知識、健康への影響、内部被ばくをしないために、残留放射能、国にできることは何か、福島の人とどうつきあえばいい? など、悲しみを繰り返さないために、私たちがどう歩んでいけばいいのかについて述べられています。

たくさん引用したいところですが、一つだけにしておきます。責任あるまともな医師の意見です。

<福島原発事故の後、食品安全委員会に出席したとき、ある大学の委員がこんな発言をしました。

「甲状腺がんは生存率が90%で、がんの中でもたちのよいがんですよ。大したことはありませんよ。」

 それを聞いて私は、ちょっと待って、といいました。

「たしかに性質のよいがんですが、だからといって、がんになっても大丈夫だというのはおかしい。5歳や10歳の子どもが、がんの手術をすることをどう思いますか? あなたはお父さんお母さんの苦しみがわかります か?」

 その先生は黙ってしまいました。現場を知らない人はこういうことを平気でいいます。すべて、数字で大きくとらえてしまうのです。がんは、一人ひとりの命の問題なのに。

 甲状腺がんは女性に多い病気です。致死率は低いといっても、幼い少女や年ごろの娘さんの首にメスを入れるのは、私にとってつらい仕事でした。病気になった子どもたちが、どんな気持ちでいるのか。自分の子ども が、がんを宣告されて手術することになったら、親はどう思うのか、想像することが大切です。>

世の中には、デタラメな数字を振り回し、いい加減な計算で意味不明のことを殴り書きする、科学的精神のかけらもない人たちが議論のための議論をする風潮があります。上記の先生は黙ってしまうだけ、まだましです。 次から次とデマを捏造する異常な人間よりは。