Saturday, February 15, 2014
ヘイト・クライム禁止法(56)ルクセンブルク
雨と強風と雷の2月13日、人種差別撤廃委員会はルクセンブルク政府報告書(CERD/C/LUX/14-17. 29 May 2013)の審査を行った。ルクセンブルク政府代表は4名、傍聴NGOは7名と、ややさびしい状況だった。ルクセンブルクは軍隊のない国家なので一度調査に行った。ルクセンブルク市街は、東京と比べるとのどかな田舎町で、ゆったりしていて、素敵な町だった。地下要塞の遺跡も面白い。もっとも、EU機関がひしめく新市街はおもしろみがない。
報告書は、条約2条と4条の記載がとても簡潔だった。2条では、レイシズムと人種差別の防止のための努力をしっかり行っているとして、欧州人権条約第12議定書、13議定書、14議定書の批准に伴う3つの法律。国籍法。欧州・反対人身売買条約と議定書批准に伴う措置。子ども性的搾取条約等の措置。国際刑事裁判所規程の国内法化。越境組織犯罪対策条約の批准。
4条については、犯罪に人種的動機が伴ったことは刑罰加重事由にはなっていないことだけが記載されている。基本的な情報がないので驚いたが、それは前回報告書に記載されているという。委員からは、今回の報告書にも記載するべき、ヘイト・スピーチの最新統計を知りたい、条約4条を履行していると言えるのか、といった指摘が相次いだ。今回報告書の担当者が、これまでの経緯をきちんと把握しないで報告書を書いたのかもしれない。
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ルクセンブルク政府の前回の報告書(CERD/C/449/Add.1. 15 May 2004)には、条約4条に関して詳しい記載がある。報告書によると、人種差別の煽動及び人種差別行為を根絶するため迅速かつ積極的な措置を講じている。
条約4条(a)に関連して、刑法第457-1条は、口頭、文書、又はその他のオーディオ・ヴィジュアル・メディアを通じてなされた憎悪又は人種暴力の煽動を犯罪としている。憎悪又は人種暴力を煽動する物の、ルクセンブルク内での製造、所有、移転および配布、及び外国への移出は犯罪である。刑罰は、8日以上2年以下の刑事施設収容及び251以上25000ユーロ以下の罰金である。
条約4条(b)に関連して、条約4条が求める形で人種主義団体を禁止していないが、NPO団体法では、裁判を通じて、公共の法秩序を妨げる活動を行う団体の解散が可能である。団体そのものの禁止を規定していないのは、地下で構成員募集がなされることや、監視のむずかしさによる。刑法第457-1条によると、口頭、文書又はその他のオーディオ・ヴィジュアル・メディアを通じて、差別、憎悪、人種暴力を煽動する目的を有する団体、又はそのような活動をする団体に所属する者を処罰するとしている。団体を禁止していないが、所属する個人の責任を直接追求する。刑罰は、8日以上2年以下の刑事施設収容及び251以上25000ユーロ以下の罰金である。
条約4条(c)に関連して、刑法第456条は、公務員等による人種差別行為の刑罰を重くしている。刑罰は1月以上3年以下の刑事施設収容、又は251以上25000ユーロ以下の罰金、両者の併科もありうる。
前回審査の結果、人種差別撤廃委員会がルクセンブルク政府に出した勧告(CERD/C/LUX/CO/13. 18 April 2005)によると、政府の努力にもかかわらず、アラブ人やムスリムに対する人種差別事件が起き、マイノリティに対する差別的態度が見られる。委員会は政府に、特にメディアにおけるなど、偏見や外国人嫌悪との闘いを継続するよう促す。委員会はインターネットにおける人種主義に関心を有する。委員会はルクセンブルク政府に、条約の原則に応じて、現代的形態の人種主義と闘い、次回報告するように促す。EUサイバークライム条約と議定書を批准するよう示唆する。ルクセンブルク政府による人種差別犯罪への対応を歓迎する。委員会は、人種主義動機を刑罰加重事由とするべきだと示唆する。次回報告書で、人種差別事案と裁判所による対応を報告するよう要請する。