Wednesday, February 12, 2014
ヘイト・クライム禁止法(55)カザフスタン
2月12日、ジュネーヴは快晴で、人権高等弁務官事務所の窓からレマン湖の彼方にモンブランが見えた。人種差別撤廃委員会はカザフスタン政府報告書(CERD/C/KAZ/6-7. 5 August 2013)の審査を行った。カザフ政府代表は15名、NGOは少なくて8名ほど。担当のファン委員(中国)は、中国にもカザフ人が居住していることとか、上海機構のことなども触れつつ、問題点を指摘していた。
カザフ政府報告書によると、憲法第14条は、出身、社会的地位又は職業的地位、財産、性別、人種、国籍、言語、宗教、信仰、居住場所その他の条件によって差別されないとしている。憲法第20条3項は、戦争宣伝、社会的、人種的、国民的、宗教的、階級的又は民族的優越性の唱道又はキャンペーンは許されないとしている。憲法第5条3項は、社会的、人種的、国民的、宗教的、階級的又は種族的憎悪を煽動する目的の団体の創設及び活動は禁止されるとしている。
刑法第54条は、国民的、人種的又は宗教的憎悪又は敵意によって動機づけられた犯罪の実行は、刑罰を加重するとしている。
刑法第141条は、市民の平等権侵害を犯罪としている。出身、社会的地位、公務の地位、又は財産状態、性別、人種、国籍、言語、宗教的見解、意見、居住場所、任意団体構成員であることその他の条件を理由に、個人の権利と自由を直接または間接的に制限することである。
刑法第164条1項は、社会的、国民的、民族的、人種的又は宗教的敵意を煽動する行為に刑事責任が生じるとしている。社会的、国民的、民族的、人種的又は宗教的敵意を煽動する行為のほか、宗教への姿勢、階級、国籍、民族性又は人種を考慮して、国民的名誉と尊厳、宗教感情を侮辱すること、市民の排除を促進すること、優越性又は劣等生を促進すること。
刑法第160条はジェノサイドの刑事責任を定め、その要件をジェノサイド条約の定義と同様に規定している。
刑法第337条2項は、ヘイト団体の創設及び指導者について刑事責任を定めている。
2009年から2012年前半期に、刑法第164条の煽動は20件(2009年7件、2010年8件、2011年1件、2012年前半期4件)である。そのうち、12県は裁判にかけられ、2件は起訴猶予、1件は終結、1件は強制医療措置、4件が保留となっている。
2009年3月21日、携帯電話で「カザフ人よ、ロシア人をやっつけろ」と書いて、テレヴィ局に送信し、それが放送に流れた件で、テミルタウ裁判所は被告人を刑法第164条1項の罪で30か月分の罰金とした。
2010年1月、ウイグル民族の名前で活動する3人が、アルマティの集合住宅の壁にペイントで赤裸々な落書きをした件で、カザフ民族の名誉と尊厳を侵害したとして、2010年4月24日、アルマティのメデオ裁判所は、刑法第164条2項の罪につき、3人を2年の刑事施設収容とした(落書きの内容は報告書に記載されていない)。