Saturday, February 08, 2014
ヘイト・クライム禁止法(51)オーストリア
オーストリア政府が人種差別撤廃委員会CERD75会期に提出した報告書(CERD/C/AUT/17. 8 May 2007)によると、人種差別の煽動や人種主義行為の根絶のための措置に関して何よりも重要なのは法規範である。刑法283条は、人種差別煽動を犯罪としている。ナチス禁止法もある。刑法33条により、人種主義行為は刑罰加重となっている。行政手続き行為法によって、人種的理由による差別は行政犯となっている。結社法と集会法により、不法な結社や集会は解散させることができる。(今回が17回目の報告書のためか、条文は引用されていない)。
1999~2004年の間に、刑法283条の事件は、次の通り(数は人員、裁判所判決は当該年度に終結した数)。
1999――警察への届け出41、訴追2、有罪判決3、無罪判決1
2000――警察への届け出40、訴追7、有罪判決1、無罪判決0
2001――警察への届け出38、訴追16、有罪判決11、無罪判決6
2002――警察への届け出97、訴追13、有罪判決9、無罪判決1
2003――警察への届け出34、訴追27、有罪判決13、無罪判決6
2004――警察への届け出29、訴追17、有罪判決14、無罪判決4
1999~2004年の間に、ナチス禁止法の事件。
1999――警察への届け出413、訴追45、有罪判決25、無罪判決2
2000――警察への届け出604、訴追14、有罪判決32、無罪判決4
2001――警察への届け出554、訴追40、有罪判決24、無罪判決3
2002――警察への届け出618、訴追25、有罪判決20、無罪判決2
2003――警察への届け出765、訴追37、有罪判決31、無罪判決3
2004――警察への届け出724、訴追25、有罪判決27、無罪判決7
人種差別を促進・煽動する団体の禁止は、2002年の結社法12条1項に規定され、刑法283条やナチス禁止法に規定する行為を行えば、解散させることが出来る。結社ではなくても、組織的プロパガンダ活動が一定の条件を満たせば集会とみなし、1953年の集会法6条に従って禁止される。
CERDがオーストリア政府報告書審査の結果、出した勧告(CERD/C/AUT/CO/17. 22 September 2008)によると、委員会は政府が刑法283条の検証を行っていることを歓迎するが、規定が、公共の秩序を危険にする行為に向けられ、民族集団の構成員である個人に対して向けられた行為に限定されていることに関心を表明した。委員会は、刑法283条が、被害に曝されやすい集団、民族的マイノリティ、移住者、難民認定申請者、外国人に属する人々への人種差別行為をカバーし、公共の秩序に制限されないようにして、条約4条に合致するように推奨した。委員会は、表現の自由は特別の責任を伴うものであり、人種主義的観念を散布しない義務を含むことを呼びかけた。委員会は、オーストリア政府に、特に政治家が、人種、皮膚の色、世系及び国民的又は民族的出身に基づいて、人々を標的にし、烙印を押し、ステレオタイプに見ることに反対する措置を講じるように勧告した。