13日午後、パレ・デ・ナシオンで人種差別撤廃委員会CERDのアメリカ報告書審査が始まった。CERDはいつもならパレ・ウィルソンで開かれるが、アメリカ審査には100人を超えるNGOが大挙してやってきたので、ナシオンの大会議室。アメリカ報告書審査は前回会期のはずだったが、アメリカ政府代表がさぼってジュネーヴに来なかったため、今回にずれ込んだ。
アメリカ報告書は69頁とやや長い。直前に印刷したので読んでいないが、報告書の作り方はオーソドックスで、2008年の時よりも読みやすくなっている。担当者が他の国の報告書の作り方を勉強したのだろう。審査では、最初にアメリカのプレゼンテーションだが、6人ほどがコンパクトにまとめた内容をスムーズにリレーする方式で、実にスマートだった。しかも、まずオバマ大統領の人権論を引用し、ラティーノの最高裁判事が誕生したことを報告した。また、最初の2人が女性でとてもヴァイタル。もっとも、内容はたいしたことはない。
アミル委員がアメリカ担当で1時間ほどかなりの早口で質問を並べ立てた。1条の定義に始まり、2条の政府の責任、4条の留保問題とヘイト・スピーチなど。ディアコヌ、クリックリー、ファン、リングレン、ラヒリ、ケマルなど続々で、ダー委員の発言は翌日回し。アフリカン・アメリカンが最大の話題だが、ネイティヴ・アメリカン、ムスリム、ラティーノ、アジアン・アメリカン、アラスカ・ネイティヴィ、ネイティヴ・ハワイなども取り上げられた。刑事司法における差別(死刑、刑事施設収容率)、教育における隔離・分離の強化、メキシコ国境における越境者の現場処刑などが大きなテーマ。
クリックリー委員は猛スピードで質問を並べ、通訳がついていけなかった。ファン委員が「私はクリックリーさんみたいに早口で話せないので」と笑いを取っていたが、さらに「アメリカは毎年、世界各国の人権状況をまとめて発表しているが、そこにアメリカの情報が入っていない。アメリカの状況を反映した報告書を作ってはどうか」と言ったのも笑えた。ヘイト・スピーチ関連では、2009年のマシュー・シェパード・ヘイト・クライム法のことが報告されていたが、スピーチについては処罰しないので、委員からは指摘が相次いだ。ラヒリ委員がfreedom against racial speechと述べたのが印象的。CERDでこの言葉は前にも聞いた。