Thursday, August 21, 2014

人種差別撤廃委員会・日本政府報告書審査(5)審査2日目・前半

*下記は現場でのメモと記憶による報告であり、正確さの保証はありません。論文や報道などに引用することはできません。CERDの雰囲気をおおまかに伝えるものとしてご了解ください。残念ながら意味不明の所もあります。
*CERDを傍聴された方、下記に間違いや不適切な個所がありましたらご指摘願います。

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前日に引き続き、21日午前10時から、パレ・ウィルソン(国連人権高等弁務官事務所)大会議室において、人種差別撤廃条約ICERDに基づく人種差別撤廃員会CERDの日本政府報告書審査が行われた。NGO席は、日本関連NGO、記者など多数で満席。20日に各委員から多数の質問が出されたのを受けて、まず日本政府からの回答である。
KONO大使――多くの委員から提起されたヘイト・スピーチだが、ICERD4条が禁止する行為には、様々な場面における様々な行為が含まれるので、すべてについて刑罰法規をもって規制することは、その規制の必要性、具体的内容、合理性が厳しく要求される表現の自由との関係、刑罰法規の明確性の原則など憲法と抵触するので4条(ab)の適用を留保した。現在の我が国の状況が、この留保を撤回し、表現の自由を委縮させる危険を冒してまでヘイト・スピーチ立法をする必要がある状況に至っているとは考えない。日本政府はこの問題に手をこまねいているわけではない。法務省人権件機関が、外国人の人権擁護に取り組み、年間強調事項の一つとしているし、人権の擁護啓発雑誌にヘイト・スピーチの記載を追加して配布しいている。公務員に外国人の人権研修講義を行い、啓発活動も進めている。21(2009)年12月の京都朝鮮学校事件の刑事処罰に関しては、被告人4名について、威力業務妨害罪、侮辱罪等で起訴がなされ、京都地裁で有罪判決が出て、確定した。ヘイト・スピーチに関いて、日本刑法では、名誉毀損罪、侮辱罪、威力業務妨害罪、脅迫罪、強要罪などが成立しうるので、捜査当局は刑事事件として取り上げるべきものがあれば法に基づいて適正に処理している。(*日本のヘイト・スピーチ・デモの)ビデオを見た委員から、警察がヘイト・スピーチをする集団を守っているというご指摘があったが、警察は、いかなる立場からも違法行為を看過してはならない、公正中立な立場から規制を行っているのであって、ヘイト・デモを守っていないし、カウンター側を阻害していない。安倍首相は、一部の民族を排除するような言動は極めて残念で、あってはならない」「ヘイト・スピーチはこれまでの国際社会関係を乱し、日本の誇りを傷つけるので、厳しい対処が必要である。自民党でも検討する必要がある」と述べている。政府としては、自民党の取り組みも含めて、この問題に注視していく。
・沖縄について、沖縄県に所在している人、沖縄出身者について、社会通念上、生物学的文化的に一体の共通性を持っている人々と広く認識されていないし、ICERDの人種差別の定義に該当しない(*条約の適用対象ではない)。いずれにしてもわが国では、沖縄出身者を含めてすべての人々が、自己の文化を享有し、自己の宗教、言語を否定されておらず、日本国民としての全ての権利を等しく保障されている。日本政府は沖縄を含む各地の特色ある文化に敬意を払っている。沖縄の文化も保存、振興を図っている。1972年の本土復帰以来、振興特別措置法ができ、様々な振興策がとられ、社会資本の整備を行い、格差が縮小し、産業分野でも着実に発展している。2014年、振興計画の策定主体は国から県へ移管し、県の要望を十分踏まえ、沖縄代表、振興審議会の調査を踏まえながら決定されている。
・人身取引対策について、政府は人身取引手口の巧妙化を踏まえて、2004年行動計画をつくり、2009年12月に改定し、行動計画2009を策定し、人身取り引き議定書3条の定義に従い、行政機関の緊密な連携、国際機関、NGOとの協力の下、人身取引事案を積極的に把握し、人身取引の撲滅、被蓋派の保護につとめている。被害者の社会復帰のために、09~13年、予算を25万ドル、19万ドル、27万ドルを計上し、外国人人身被害者の帰国支援、社会復帰支援事業、帰国後の社会復帰支援費用にあてている。庇護という観点から2011年7月、事案の取り扱い方法、被害者保護の着眼点を整理し、取引対策に携わる関係行政機関に周知している。事案の取り扱い方法、保護措置を取りまとめたが、警察、入管、法務局、婦人相談所、労基署など各種窓口で相談者が、被害者である可能性あると判断すれ、ば保護することを目的とし、警察、婦人相談所、児童相談所に通報し、連携して取り組む。
・技能実習生であるが、研修技能実習は、わが国で培われた技能、知識の開発途上国への技術移転、知識移転のためにつくられた。この制度について、賃金未払い、長時間労働、不正事案の発生があり、国際社会の批判も受けたので、本年6月の閣議決定で、日本再興戦略を決め、国際貢献を目的とする、制度の抜本的見直しを行うことにした。関係省庁の連携、全体に一貫した運用体制、送出し国との政府間取り決め、外部監査の義務化、新たな法律、管理監督の在り方を、年内めどに抜本的に見直し、15年度中に新制度への移行をめざしている。業界指導の充実、地域協議会、関係者などについて、整備し円滑に進めるため、抜本的見直しが現在進行中である。
・慰安婦問題であるが、日本政府の立場は、慰安婦問題はICERD人種差別に該当するものではない。一部の委員が性奴隷という表現を用いているが、この表現を用いることは不適切である。また、日本は1995年にICERDを締結した。条約締結以前に生じた問題に条約は適用されない。一部の委員が、1923年の関東大震災の問題を取り上げたが、これらは条約の実施状況として取り上げることは適切ではない。以上は法的観点の話である。同時に、委員会が求める情報について日本政府は誠実に対応するっことにしているので、わが国の取り組み、立場を説明する。日本は先の大戦に至る一時期、多くの方、アジア地域の人に多大の損害、苦痛を与えた。歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省お詫び、内外の全ての犠牲者に哀悼の意を繰り返し表明してきた。安倍首相も、筆舌に尽くしがたい辛い思いをされた方々への思いは、歴代総理と変わるところはない。補償に関して、慰安婦を含め先の大戦に関わる賠償、財産請求権は、サンフランシスコ条約及び2国間条約に従って誠実に対応し、個人請求権は法的に解決済みである。韓国について言えば、日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」した。それでもなお、日本は慰安婦とされた多数の女性の名誉と尊厳を傷つけたことに、お詫びと反省のため国民的議論を尽くして、1995年アジア女性基金を償い事業目的で創設した。具体的にはフィリピン、台湾で慰安婦女性に200万円の償い金、医療福祉支援事業を行った。インドネシアでは高齢者対策、オランダでは癒しがたい傷を受けた方の生活状況改善事業をした。日本政府はアジア女性基金に48億円の拠出、そのうち医療福祉11億である。国民の募金による償い金にも最大限の協力をした。償い金提供の際、総理のお詫びremorseの手紙を渡した。歴代総理、橋本、小渕、森、小泉首相が自筆の署名で謝罪と反省の手紙を直接送った。アジア女性基金は2007年に解散したが、フォローアップ事業をしている。なお、強制連行との指摘があるが、91年12月~93年8月に調査、聞き取りを来なって、全体として判断したが、資料の中には軍、官憲による強制連行を示す記述は見当たらなかった。
・移住労働者権利条約、ILO169号条約,無国籍条約、ジェノサイド条約を批准していないことについて、条約の理念は理解しているが、国内法との整合性など慎重な検討が必要である。
・日本国憲法14条の法の下の平等が、条約ICERDの差別的取り扱いの範囲、条約よりも狭いのではないかとの指摘があったが、14条1項の人種その他は「例示的説明」であると解釈されている。「限定列挙」ではない、これらの列挙に直接該当しない場合も不合理な差別はすべて禁止されると解釈されている。14条はICERDの定義の5つの不合理な差別もすべて禁止している。
警察庁――ムスリム情報収集との指摘について、警察は公共の安全、秩序維持の責務を遂行している。そのために必要な情報収集をしている。ムスリムであると言う理由だけで監視活動を来なった事実はない。法律に基づいて適正な活動をおこなっている。 
厚生労働省――二重差別であるが、法務省人権擁護機関が人権相談所を有し、女性、子どもの人権相談を行い、疑いのある事案は調査し、適切な措置をとっている。法務局は、女性の人権電話、女性の人権ホットライン、子どもの人権110番、小中学生子どもの人権SOSミニレター、女性の人権を守ろうなど啓発活動の年間強調事項にしている。女性の人権、人権尊重を高める教育を推進し、社会教育もおこなっている。子ども若者育成支援推進法により、支援政策を総合的に推進している。困難を有する母子家庭に、母子家庭就業支援、養育費、児童扶養手当、総合的自立支援策を行っている。2012年第3次男女共同参画基本計画が、女性について必要な取り組みを勧める。
外国人年金、社会保障、社会保障制度に関して、国内法の国籍要件は撤廃し、適法に滞在する外国人にも同様に制度が適用されるようつとめている。国民年金の国籍要件は1982年に撤廃し、外国人にも適用、1985年法改正で基礎年金発足し、合算対象期間についても国籍取得者、永住許可を得た方に、適用除外とされた期間が受給資格期間に算入されるようになった。
ホテル等入場拒否について、ホテルは旅館業法があり、特定の人種民族を理由とする宿泊拒否は認められていない。国際観光ホテル整備法は国際観光振興目的であり、外国人が安心して宿泊できるよう指導している。飲食店レストラン喫茶店映画館公衆浴場等について、生活衛生関係営業の運営適正化法があり、生活衛生営業指導センターによる指導体制をつくり、利用者からの苦情に積極的に取り組みをしている。公衆浴場へのアクセスについて外国人向けにHPに情報掲載している。
法務省――家庭裁判所調停員について、国籍を持たない者の就任は認めていない。調停員は裁判所非常勤職員であり、国籍が必要である。調停員の権限職務の内容をみると、裁判官とともに調停委員会を構成して活動し、その決議は過半数の意見による、調停が成立した場合それは確定判決と同じ効力を有する、呼出し命令措置には過料の制裁があり、事実調査証拠調べを行う権限も有する。これらの権限を有していることを総合的に考慮すれば、公権力の行使、国家意思の形成に携わるので、国籍が必要である。
戸籍について、高度のプライバシーであり管理を厳格に行うよう研修指導している。2005年戸籍法改正で、不正請求防止策、請求者本人確認、不正請求に罰則強化、不正閲覧発覚に厳正な処分をしていると認識している。
日本人男性と離婚した外国人女性について、配偶者在留資格だが、離婚した場合であっても、引き続き在留を希望するときには申請の理由、来日経歴、在留状況、家族状況、離婚に至った経緯を総合的に判断して、在留の可否を決定することとしている。養育看護を必要とする日本人子どもの養育のため在留を希望する親については、親子関係、親権者、確認できれば、定住者在留資格に変更を許可している。
帰化について、氏名には日本文字を使用しなければならないが、漢字を使うか否かは自由であり、日本人らしい氏名を強要している事実はない。
人権侵害被害者の支援では、国の全額出資により日本司法支援センターがつくられ、全国の事務所をおき、資力の乏しい者対象に民事法律扶助業務、無料法律相談、弁護士費用の立て替え、代理人弁護人との打ち合わせにカウンセラー同席の費用も援助している。
パリ原則国内人権機関について、新たな人権救済機関法案は2012年国会提出されたが、廃案となった。人権救済制度の在り方については、これまでの議論状況を踏まえ適切に検討している。
部落差別、同和について人権擁護機関、はさまざまな人権相談、助言、適切な機関紹介、疑いがある場合は人権侵犯事件調査、侵害の排除、再発防止の適切な措置を行い、同和差別意識解消のため、偏見差別をなくそうを年間強調事項の一つとして掲げ、年間を通して各地で講演会、研修会、冊子配布、イベント実施をつづけている。厚生労働省が、地域で開かれたコミュニティとして、隣保館を設置運営し、各種事業を総合的に実施している。雇用差別について、採用選考で就職差別を未然に防止するため、公正な選考、指導啓発をしている。文科省は実践的研究の実施、調査研究、実践事例の収集・公表をすすめ、意識を高めることにし、社会教育においても2013年度より実践的に実施している。。
難民について、特定国からの庇護希望者についての優先基準はない。法規定の難民は、条約の適用を受ける難民であり、条約に従っている。認定に当たっては個々の申請について条約の要件への該当性を個別に判断しているので、優先的な基準は存在しない。
庇護希望者の送還について、それぞれリスクがあり、送還すべきではないのではないかという質問について、申請中の者を退去強制手続きにより送還することはない。認定申請をした者のうち、認定されなかった場合でも、人道的配慮が必要なものは在留を認めている。人道的配慮の必要性が認められなかった者は強制退去命令となるが、その場合であっても、次の国に送還はない。難民条約33条1項に規定する領域に属する国。2、拷問禁止条約3条1項に規定する国。強制失踪条約16条1行為規定する国。
在留特別許可について、退去強制手続き以前に許可すべきではないかとの質問があったが、入管法では、不法入国者・不法残留者については退去強制事由、原則として退去強制としている。在留特別許可は本来退去強制されるべき者に対する法務大臣による例外的、恩恵的措置である。現行法制上、在留特別許可は退去強制手続きの過程で行われる必要がある。
難民認定申請をして認定がなされない場合でも人道上その他の理由により特別に在留を許可することがある。
文科省――朝鮮学校無償化除外は差別ではないかとの指摘があったが、無償化にかかる指定処分については差別に当たらない。高等学校等就学支援金は、学校において支援金を適正に管理が行われるう事が必要である。教育基本法、学校教育法など関係法令の遵守が求められる。朝鮮学校生徒に支援金制度の適用をするかどうか、基準を満たすかどうかを検討した結果、朝鮮学校は朝鮮総連と密接な関係があり、北朝鮮と密接な関係がある。学校の人事や財政に影響を与えているので、不当な支配に当たらないことについて十分な検証を得ることが出来ず、指定の基準に当たると認めるに至らなかったので、指定しない処分をした。今後、都道府県知事の認可をうけて「1条校」になるか、北朝鮮との国交が樹立されれば、朝鮮学校も審査の対象となる。1条校には、多くの在日朝鮮人が学んでいる。国籍を理由とした差別には当たらない。政策方針変更はいつ、どのようになされたのかという質問があったが、基準審査結果の不指定であって、政策変更をしたことはない。なお、自治体の支援との関係で、助成金は地方自治体の独自の判断で行っているものであって、国としては考えていない。自治体が独自に朝鮮学校を支援することは違法ではない。朝鮮学校を、中華学校、アメリカン・スクールなどと区別して特別扱いはしていない。各種学校としての認可をしており、区別はしていない。
学校に通っていない日系ブラジル人、保護する子どもの就学だが、公立学校への無償受け容れをしているし、外国人学校にもかよえる。義務教育学校への機会を逸することのないよう、就学案内を通知することを、地方教育委員会に通知している。その際、複数言語に対応したひな形を自治体に示している。児童生徒受入れの手引きを教育委員会に送り、周知徹底を図っている。補助事業として、就学前児童に初期教育、不登校・不就学の子どもへの支援、公立学校への移転支援、母語・母文化について、課外において当該国の文化学習も大切、地域の実情に応じて取り組まれている。
ユネスコの8つの言語について、2009年報告書にアイヌ、八丈、奄美、国頭、沖縄、宮古、八重山、与那国がのっている。文化庁は、消滅の危機にある言語方言の活性化の調査研究を実施している。沖縄の文化保護について、文化遺産、保護法に基づく指定、通常2分の1の助成だが、沖縄について一定の要件で5分の4。
内閣官房アイヌ室――1)先住民族権利宣言後、政府は2008年国会決議、官房長官談話を経て、在り方に関する有識者懇談会の2009年報告書で、宣言関連条項を参照しつつ、先住民族であるとの認識に立って、実情に応じた具体的政策、総合的かつ効果的政策をすすめ、アイヌ政策推進会議を設置し、政策を着実に実行している。ただし、国連で宣言に賛成票をした際、土地や資源に関する権利については、第三者の権利及び公共の利益からの制約があることを指摘した。しかし、土地資源の活用、アイヌ文化の復興に強い関心をもち、文化の伝承に必要な土地につき、国有地を活用する事業を認めている。
2)北海道以外に居住するアイヌ民族について、2008年国会決議後、北海道に先住し、独自の言語文化を有する先住民族であり、2010~11年、北海道以外のアイヌの生活実態調査を、全国的見地から必要な支援策を検討し、実施している。
3)アイヌ統計データについて、報告書には2006年北海道庁調査結果を乗せたがその後、2014年北海道庁による新たな調査結果が公表されている。結果概要だがたとえば、教育の状況、大学進学率は着実に向上してきており、今回も25.8%、8.4ポイント増加、しかし、43.?%に比して17.2ポイント異なる。平均年間世帯収入、住民税の状況から見ると、非課税世帯6.4ポイント増加、一方で一定の額を超えて課税される世帯が2.1ポイント増加。アイヌの人々が居住する市町村との比較において今だに差がみられる。対応として、北海道が、経済的理由による就学困難者に対して奨学金事業の支援をしており、政府はこれを支援している。

4)アイヌの文化の維持について、アイヌ語では、97文化振興法で支援、総合的かつ実践的研究、アイヌ語の振興や、伝統に関する普及、伝統的生活空間の再生、アイヌ語、アイヌ文化の振興に寄与している。文化遺産、保護法では、古式舞踊、生活用具を国の文化財指定、保存継承の補助をしている。政府主導により、民族共生の象徴的空間、2015年一般公開に向けて、共生象徴空間として博物館を準備中。伝統的家屋、工房、アイヌの世界観、自然観を学ぶことが出来る空間として、アイヌ文化復興のナショナルセンターになることが期待される。なお、日本では日常生活、経済活動で日本語が一般的に使用されている。学習指導要領に日本語だけとは明文化されていないが、日本語以外の言語は通常は想定されていない。しかし、アイヌ語学習をすることは可能である。