*下記は現場でのメモと記憶による報告であり、正確さの保証はありません。論文や報道などに引用することはできません。CERDの雰囲気をおおまかに伝えるものとしてご了解ください。残念ながら意味不明の所もあります。
*CERDを傍聴された方、下記に間違いや不適切な個所がありましたらご指摘願います。
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以下、21日後半である。第2ラウンドは、委員からの質問と、日本政府による応答である。
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アフトノモフ委員――最高裁が2014年7月、京都朝鮮学校の件で、直接条約について判断し、差別は見逃すことはできないとし、京都地裁を支持しなかったが、くつがえすことはしなかったと聞いた(*大阪高裁判決のこと、一部混乱?)。日本ではヘイト・ウピーチを刑法で処罰対象できない。集団に対するヘイト・スピーチの処罰を許していないと言う点。政府の立場はどうなのか。また、中国人について、大船コミュニティの情報がなかなか得られない。
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アミル委員――ムスリム監視調査について回答があったが、重要な問題なのに、とても短かった。情報収集だけなのか、それとも疑っての情報収集なのか。アメリカは、監査活動の対象となった人たちに陳謝した。自由がある国でこういう活動をすることはどういう事なのか。
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法務省――ヘイト・スピーチ裁判は、一審判決が、被告らが威圧的侮蔑的示威活動を行い、その映像をネットを通じて公開した旨認定し、教育事業を妨害し、名誉毀損をしたので、不法行為であり、原告の損害賠償請求を認容、差止めを認容した。大阪高裁控訴審判決は一審を支持して、控訴棄却した。政府は個別具体的な司法判断についてはさしひかえたい。
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大使――警察は、他の国と同じように警備上の必要がある場合は監視活動を行う。対象が特定の宗教に関わることはない、ムスリムということで監視対象とすることはない。どのような方でも、日本人も外国人もすべて、警備上の必要から監視することはある。ムスリムであるからということはない。
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フアン委員――沖縄について日本の立場、政府としては先住民が沖縄に存在することを認知していないが、沖縄には2つのカテゴリーの人が居住している。1つは、日本人、1879年以降沖縄に移住した人とその子孫であり、1つはこの地域に、琉球に1000年前から定住していた人だ。歴史をさかのぼると、沖縄は琉球諸島、琉球王国がつくられ、450年存在した。文化、言語、社会制度は独自なものが存在した。琉球王国は、清、明と特別な関係をもっていた。アフトノモフ委員が述べたが、琉球王国は独自である。NHKで琉球王国を扱った番組があり、2万以上が中国に起源を有する、現在も沖縄にいると明らかにしていた。それが1879に併合され、沖縄県が設置された。併合後、日本政府負は同化政策をおこない、改名を強制し、日本本土から移民を促した。歴史を考えると、先住民の存在を認めないことは歴史的に正しい姿勢とは言えない。歴史を考えるべきであう。先住性を考えて、地元の人たちの意見を聞いて、当然の権利を保障するべき。
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ケマル委員――慰安婦についてのお日本政府の法的立場はわかった。それを中身を蒸し返すつもりはない。しかし、出来事は条約締結前のことだが、法律的に言うと、100年前に起こったことも今日性があれば検討するべきである。特定の取り決めがあっても、合意があっても、正義が必要、正義がなされるべきであり、補償問題が残されている。日本画反省の気持ちを表明したのは評価すべきことである。しかし、そこから後退するような印象を与える出来事があったから、マイナスのイメージを与える、重要なこととして指摘しておきたい。朝鮮学校を自治体が支援しないのは自治体の裁量であろうが、ここで取り上げているのは、中央政府の対応である。文化や言語を保護するように努めてほしい。お金が出せないならそれはそれでいい。インターナショナルスクールは高い授業料をとっている。政府からの支援は期待していない。朝鮮学校とインターナショナルスクールを区別する必要がある。それが正義のためになる、奨励することが日本のためになる。
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大使――沖縄について、南北に長く大小さまざまな島からなる日本は特色ある文化、伝統、をもち、沖縄も特色ある文化が受け継がれている。わが国においては、何人も自己の文化を享有し、宗教、文化、言語を否定していない。豊かな文化、長い歴史を有する沖縄、個性豊かな地域社会の形成に資する、振興開発措置法がある。慰安婦について、remorse謝罪をしたことだが、アジア女性基金の償い金とともに渡した総理大臣の謝罪の手紙を紹介する(*現場でコピーを配布した)。
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文科省――朝鮮学校について、先ほどの繰り返しになるが、制度の対象となるための基準を満たすかどうかを審査した結果、不指定としたにすぎず、特定民族に差別をしているわけではない。各種学校につき、すべての朝鮮学校は認可されている。インターナショナルと区別というが、インターナショナルのすべて各種学校という訳ではない。各学校が判断すること。
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ディアコヌ委員――4条の適用留保が、表現の自由という観点と説明された、ICERD5条と比べて、憲法の他の権利はどうなっているのか。4条には様々な行為、4つの行為がある。流布、煽動、暴力煽動、差別的行動参加・資金調達。表現の自由の範囲に入らない。煽動は表現の自由ではない。なんのためにICERDを締結したのか。暴力煽動は表現の自由ではない。暴力を予防しなければならない。留保撤回を検討しているが、結論に至らないのか。日本のICERD批准から20年経った、あまりに長い時間がたっている。結論に到達し、国内法によって処罰を規定するべきである。どうして表現の自由をそこまで守らなければならないのか。アフトノモフ委員が言ったが、個人に対す差別と集団に対する差別がある。ICERD4条は集団に関するが、国内法でカバーされていない。法律がないので、裁判所がどのように判断するのか。条約規定が法執行官や裁判官によってフォローされていない。国内法で定める必要がある。憲法14条が列挙的例示に過ぎないことは理解したが、適正な解釈はなされたのか。差別について禁止しているという具体的判断は示されたのか。ないのなら法律が必要である。部落、同和とは特定地域なのか、どういう状況なのか、人数は、経済的社会的権利、公職に就く権利はどうか。
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クリックリー委員――ムスリムに対する監視は、かなり広範囲にわたる監視が行われている。終了させ、停止させることはあるか。均衡のとれたものである必要がある。国内人権機関の新しい法案はあるのか。市民社会が参加していることが必要だ。ヘイト・スピーチは同僚たちが述べた。日本政府は警察は中立であると言うが、ビデオを見てほしい、どういう発言か。(*「殺せ」などの)ビデオの翻訳が正しいのであれば、本当にこれが中立公正なのか疑わしい。人身売買について、新しい措置を検討しているか。男女平等参画計画はいいが、具体的措置は、ターゲットは、時間枠を設定しているか。移民、マイノリティ、先住民女性が直面している状況に即して検討しているか。家事労働女性ILO条約はどうか。家事労働女性の権利保護を考えているか。慰安婦に陳謝の手紙を配布したのはわかったが、これはいつの手紙なのか、現在も出ているのか。性奴隷については、人権高等弁務官も人権委員会(CCPR-HRCのこと?)も述べている。生存者に対する対策をどう考えているのか。朝鮮学校の高校無償化は第二次大戦直後の検討事項だったのではないか。
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警察庁――ムスリム監視活動だが、警察時の情報収集はテロ対策の今後の活動に支障が生じる恐れがあるので、具体的なお答はできない。警察は法律に従い適正に情報集活動をしている。ヘイト・スピーチにつき、ヘイト側を守っているのではないかという話が出たが、どちらかの立場を守るという警備をしているわけではない、あくまで中立的な立場で行っている。
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課長――NGOとの参加協議は、2012年5月市民NO意見交換、HPでも意見聴取をした。例えば、同和、無償か、個人通報、反差別法など様々な意見を得た。首相の詫びの手紙、アジア女性基金の活動は2007年に解散したので、その時点まで行われた
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法務省――人種差別の扇動、憎悪的人種差別的行為への対応は刑法の諸規定で行い、扇動については教唆、幇助として処罰される。
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法務省――統計についての質問があったが、1)在留するアフリカ系は、昨年末現在中長期在留、アフリカ諸国11545、2)永住者は、昨年末、在留、大戦前から特別永住者、369249、一般永住者64542、3)日系ブラジル人、日本人配偶者等、定住者永住者及び永住者の配偶者、13年ブラジル、入国28070、うち3349、13年末現在、ブラジル国籍181268、うち179803。
配偶者・女性、離婚した場合、在留資格の変更手続きで一律に在留を否定しない。DVのデータはないが、09年改正、DVの避難については保護は正当な理由なので取り消しは行わない。DV法に照らして、基本的には配偶者の暴力は犯罪となる行為も含めて重大な人権侵害であるので、人道的観点からも迅速的確な対応が求められている。保護を優先した手続きをしている。国内人権機関は、検討しているところである。人権委員会設置法案については、権限、調査の対象範囲について様々な議論があった。今後のスケジュールについてはお答えできる段階ではない。
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厚生労働省――人身売買、被害者保護については、省庁横断的に、行動計画2009、婦人相談所、13年3月末までに356人一時保護。心理療法担当職員配置、通訳の費用計上、医療費支援、05年度から適切な保護民間シェルターに委託、一時保護もできることになり、11年度、事案の取り扱い方法のうち被害者保護のための着眼点を取りまとめた。
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ユエン委員――繰り返しの回答が続いた。委員は18人いるが、委員が同じことを繰り返し質問していると思われるかもしれないが、何度も質問が出る理由を考えてほしい。日本政府からの答えがないかもしれないと考えてみてほしい。十分な回答ではない。何回も出てきた質問だが、朝鮮学校について私の最初の発言で、差別があると述べたが、朝鮮学校は分類上、各種学校であり、中華学校、インターナショナルと一緒に分類されている。最初から恩恵を受けている、ベネフィットは撤回された。基準を満たさなかったと言うが、基準とは何なのか。ピョンヤン寄りだということなのか。人種差別の問題ではないのか。誰が被害を受けるのか、生徒ではないか。差別があるのではないか。政治的な理由があるのかもしれない、しかし、大局的基本的に見て、差別という人権侵害である。一つの方向に囚われては解決しない、他の人の意見に胸を開くことが重要である。
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バディル委員――公職の権利についても同じことだが、国籍、公的意思の形成というのは明確でない。これは法律に基づく言葉であるとは思えない。私の理解が間違っているのか。この概念は恣意的解釈が可能になってしまう。多文化多国籍の社会では差別の対象となっている人を公務員に迎えることの方が正しいかもしれないと考えられないか。公的意思の形成の意味を知りたい。年金も、高齢者、障害者について、80年改正の時にマイナスの影響があった。経過措置は取られたのか。不足を補てんする経過措置、悪影響を受けた人に補てんはなされたのか。
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カラフ委員――条約の実施が重要である。2010年の審査から4年経った、4条留保の撤回、そして14条の実施、個人通報を採用すれば、日本の評判がよくなる。
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フアン委員――曖昧な回答が出ているように感じる。アジア女性基金は2007年終了という。安倍首相のアジア女性基金についての考えはどうなのか。閣僚メンバーはどうなのか。第二次大戦に関する立場が後退したのならば、陳謝の手紙の目的は何か、現在の閣僚はどうか。
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ケマル委員(まとめ)――まだまとまっていない、もっと議論したうえでまとめたい。いまは印象だけの簡単なまとめである。日本の条約履行状況は全体に、進捗している。条約実施がなされているのは、民主的憲法であるからである。だからこそ、もっと条約に完全に準拠することができる。まず何よりも、包括的差別禁止法の制定である。憲法とのギャップを埋めることになる。4条(ab)と日本国憲法に不一致はない。しかし、日本政府は留保している。これでは、善意であっても誤解されかねない。善意の印象を与えていないパラドクスである。4条と憲法に矛盾はなく、負担でない。ヘイト・スピチの処罰は、表現の自由にマイナスにならない。国内人権機関設立や、アイヌ、マイノリティ、沖縄、部落の格差がないよう生活水準に引き上げなど。それから報告書では、具体的にCERDの最終見解に応答してほしい。ポイント絞って、リスト・オブ・イッシューを出している。朝鮮人、中国人、ムスリム、沖縄、マイノリティ、じっくり時間をかけて、インカメラで議論して、見解をまとめたい。
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大使――ご質問に誠実にお答えした。今後とも人権状況改善、差別を許すことなく、国際社会と協力していきたい。
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以上で、今回の日本政府報告書審査はすべて終了した。CERDの最終所見(勧告)は8月29日に委員会で決定される見込みである。