Saturday, August 23, 2014

植村和秀『ナショナリズム入門』

植村和秀『ナショナリズム入門』(講談社現代新書、2014年)
国家主義、国民主義、民族主義、国粋主義、ネイション、ナショナル、国民国家、民族国家、国家形成、国民統合、国民形成、国民化、国民意識、民族紛争、少数民族、ナショナリティ、国民性、国籍、移民、レイシズム、人種、人種主義、パトリオティズム、愛国心、愛国主義、エスニシティ、エスニック、多文化主義、帝国、帝国主義、シティズンシップ、市民権。
ナショナリズムと関わるこれらのキーワードをめぐる諸研究を新書や選書を中心に120冊ほど紹介し、手際よく論じている。日本、ドイツ、東欧、アメリカ大陸、西欧と南欧、ロシア・ソ連、イスラム、東アジアなどにおける民族と国家の重なりとずれが引き起こす問題を中心に論じている。小さな新書にもかかわらず、特定の地域研究を基礎とするのではなく、全地球的規模で問題の広がりと特質を浮き彫りにしていくところは、なかなかの構成だ。現在におけるナショナリズム入門として、よくできている。
もっとも、これだけキーワードを連ねるのなら、コアとなる国家そのものについて分析を深めてほしいものだが。

著者は京都産業大学教授、1966年生まれ、専攻は政治思想史・ナショナリズム論。著書に『昭和の思想』『丸山真男と平泉澄』『日本のソフトパワー』などがあるという。。