Saturday, August 19, 2017

クローズアップ現代の23年を読む

国谷裕子『キャスターという仕事』(岩波新書)
1993年4月に始まったクローズアップ現代。23年間で3784本の放送がなされたという。2016年の番組再編により降板するまで、一部を除いて大半にニュースキャスターとして登場した国谷が、その23年間を振り返る。
もともとジャーナリストやアナウンサー志望ではなく、英語が流暢だったことから、英語放送のニュース原稿を読むことを頼まれたのがきっかけで、たまたまNHKに出るようになったという。
いったんやめて、アメリカに行ったところ、今度はニューヨークでNHKに頼まれてリサーチャーになった。資料集めや通訳やインタヴュー相手を探すなど雑多な手伝いをしているうちにキャスターとして出ることになった。いわゆる帰国子女で、日本の学校教育をほとんど受けていないため、日本語に自信がなく、猛勉強したようだ。
そうした様々な経緯からNHKのキャスターとなり、1993年からクローズアップ現代が始まった。数年で終わるはずが、23年も続く看板番組になった。
番組作りの様子が次々と紹介される。国際ニュースと国内ニュースの両方を取り上げていき、内外の要人にインタヴューを行った経験も紹介される。国内の労働問題をはじめ、阪神淡路大震災から東日本大震災まで、9.11、犯罪被害者問題、沖縄基地問題はもとより、科学、教育、政治その他実に多くのテーマを取り上げた。
数々の失敗も紹介される。失敗が結果としてよかった場合もあれば、思わぬミスもあれば、2015年の「出家詐欺」番組の大失態もある。印象的だったのは何といっても高倉健の「17秒の沈黙」だ。
ニュースとは何か。ジャーナリズムとは何か、キャスターの仕事は。悩み続けながら、「言葉の力を信じて」走り続けた23年間だと言う。
この本はぜひ学生たちに読ませよう。