Friday, August 04, 2017

フェイクニュースの時代を生きる

烏賀陽弘道『フェイクニュースの見分け方』(新潮新書)
主に日本のメディアにおけるフェイクニュース、誤報、虚報を取り上げる。ただし、素材は主に新聞、雑誌、テレビである。著者は新聞記者、週刊誌記者、編集者、フリー記者を経験し、アナログ時代からオンライン時代までを体験してきた。
スラップ訴訟(SLAPP)を調査して詳しく紹介したのは著者である(『スラップ訴訟とは何か――裁判制度の悪用から言論の自由を守る』現代人文社)。最近は福島原発事故について独自の調査報道を続けているという。
インターネットの普及により「情報のカオスの海」ができあがった中で、信頼できる情報を入手することの難しさを指摘しつつ、そのための努力を提案する。
インターネット時代では発信者と受信者の関係が変化した。古典的メディアでは、メディア企業の編集者が編集(選出、依頼、保証)する執筆者の情報が発信されるが、インターネットではだれでも情報発信できる。あらゆるフェイクニュースが飛び交う。
それゆえ、公開情報をていねいに収集し、新規情報の情報としての価値を判定する能力を身に着ける必要がある。事実を探るには、オピニオンはいったん捨てなければならない。オピニオンに汚染された「事実」に依拠することはできない。
発信者不明の情報が氾濫していることも要注意だ。日本の新聞記事には匿名記事が多かったが、それは発行企業及び編集者の責任で発行しているから、一定の担保はあった。これに対してインターネット上の匿名情報は文字通りの匿名で裏付けが取れないことが多い。情報価値を疑ってかかり、つねにクロスチェックをする必要がある。
また、当該情報をその文脈に位置付けて理解する必要がある。時間軸と空間軸を広げて、本質を見失わないことが大切である。
著者が提示する方法はいずれも古典的メディアにおいても指摘されてきたことである。平和博がアメリカのインターネット上におけるフェイクニュースにだまされないために提示した方法も同様である。古典的メディアでもインターネットでも、フェイクニュースの捏造、誤解、誤報のメカニズムは同じと言うことだろう。
異なるのはその規模とスピードだ。インターネット時代の情報発信者は桁違いに増加した。情報が伝達、拡散、粉飾、加工されるスピードは過激なまでに猛烈なものとなった。
そこで生じるのは、情報の真偽を確かめる暇がないという現実である。クロスチェック専門の組織を立ち上げないと、誤報があっと今に世界に広まり、匡されることがない。誤報であると判明しても、訂正されない。訂正しようと試みても、相手にされない。
個人的作業では間に合わないが、良識ある人々がインターネット上で協働作業をするのが一番だろうか。