Thursday, February 25, 2010

グランサコネ通信2010-05

CERDの日本政府報告書審査(2月24日)

以下の記録は、現場でのメモと記憶に依拠していますが、正確さの保証はありません。CERDのおおよその雰囲気を伝えるものということでご了解願います。

24日午後3時~6時、パレ・ウィルソンでCERDの日本政府報告書審査が行われました。冒頭に日本政府・上田人権人道大使が報告書の概要を紹介しました。ふつうは60~80分やるのですが、なぜか日本は20分で終わりました。最初に鳩山首相の「友愛」「いのちを守る」を紹介し、アイヌを先住民族として認めて、現在アイヌ政策を作成中であると述べ、次に人権教育・啓発の重要性に触れ、最後に難民についてミャンマー難民受け入れの話をして終わり。

日本政府報告書担当のパトリック・ソンベリ委員(連合王国)が、おおむね次のように包括的な発言をしました。

・ 日本は個人通報制度を受け入れず、条約8条の個人通報の宣言をしていない。前回2001年の勧告でも14条と8条について言及したが、変化はない。

・個人通報は条約批准国153のうち、50以上が受け入れている。日本は自由権規約第一選択議定書も批准していない。人種差別の核心に関連するので、8条の宣言を推奨したい。ILO115号、169号などの条約の批准も検討すべきである。日本は1948年ジェノサイド条約も批准していない。

・条約を批准するかどうかは国家主権の判断だが、グッドプラクティスのベンチマークとなる重要な条約なので、批准・宣言が重要である。

・具体的内容にはいる。日本政府報告書には統計がたくさん出て来るが、民族について調査がない、国勢調査がない、意味ある統計数字を知りたい。コリアンは60万人で40万人が特別永住者というが、帰化もいる、全部で100万ほど居るだろうが、統計がない。プライヴァシーの問題があるが、調査が必要。実態把握のために、例えば言語の使用について調べるなどの工夫も可能だ。

・沖縄と部落について記載がない。沖縄人も部落民も日本国籍の日本人だという。それが日本政府の法的立場かもしれないが、法の下の平等、アイデンティティは、国籍より複雑ではないか。沖縄の統計がない、マイノリティ問題と理解するべきだ。市民権を持っても民族マイノリティであるのに、十分な情報がないといわざるをえない、

・日本には包括的な人種差別禁止法がない。必要ないと考えているようだが、憲法14条の平等規定があるが、これは範囲が狭い、十分カバーされていない、条約と重複はあるが、条約よりも制限された範囲である。また、私人の行為に適用する問題がある。国家の行為だけでなく、人や団体も対象である。私人の行為について、ほとんどの国家は直接に差別的な法律を持っていないが、むしろ私人の行為、間接差別が重要である。間接差別は条約にはないと思うかもしれないが、CERDは意図的差別、差別的効果に着目して、間接差別も検討している。

・国内効力の問題では、特定の条文については法律化が必要である。2条、4条、6条は明らかに必要である。4条は一番明白だ。人種差別団体、人種差別的言動について、条約が自動執行されないというので、立法措置が必要だ。このことは解釈基準や安定性にもかかわる。法律がないと、安定性や予測可能性がない。立法すれば、より確実性がある。潜在的加害者にも被害者にも、人種差別とは何か、何が禁止されているかが明確になる。それゆえ、廃案となった人権擁護法案の現状を知りたい。

・世系に関して、同和、部落民の問題がある。世系は独自の意味合いを持っているので、前回も取り上げたが、もう一度取り上げたい。CERDの一般的勧告29を参照してもらいたい。CERDは、世系は人種などと同じような内容ではあるが、別の意味合いが込められていると判断した。幅広く、例えばインドのカーストが参考になる。条約は、ウイーン条約により解釈しなければならない。部落民は特別措置の対象だったが、特別措置法が2002年に終了したという。法律的側面における補完が必要ではないのか。一般人と部落民の平等が達成されたのか。法律的保証が必要ではないのか。この問題はどの政府機関が対応しているのか。住居、教育、溝が少なくなっているとはいえ結婚差別、地名総鑑、マスコミ、インターネットにおける差別もある。

・日本政府が留保している条約4条abだが、表現の自由との関係だからという。4条cは、公的機関が煽動をしてはならない、公務員からの差別発言を禁止している。4条abは重要であり、条約の義務を履行するのに不可欠である。日本政府は「表現の自由と抵触しない限度」で適用するというが、しかし、国際的基準で表現の自由を見るべきだ。似たようなものもあるが、逆に見ると、国際法の原則は憲法が変われば変わるものではない。日本は幅の広い留保をしているが、なぜこのような留保をするのか。ここで法律論争をするつもりはないが、留保をなくす、または留保の範囲を必要最小限にするよう求めたい。

・憎悪に基づく差別的言動について、私人間の名誉毀損として扱っているが、集団に対する差別には対応できていない。人種差別の煽動について4条a、この点が重要だ。4条は高い重要性をもち、人種差別と闘うことができる。確かに表現の自由はあるが、無制限ではない。開かれた議論が必要である。特定集団に対する差別、あからさまな差別を認識しているか。

・アイヌについて、先住民族と認めて以後のことは評価する。さらに強化を期待する。

・沖縄出身者の先住性について、独自の歴史がある。1876年以後の歴史は、厳しいものだった。軍事化された島、軍事施設の占有率が高い。独自の文化と民族性があり、先住性のある人である。1876年以前に瀬府が存在した。琉球語が公教育で教えられていない。これについては、国連人権理事会の人種差別問題特別報告者のディエン報告がある。沖縄の言葉はユネスコでは独自言語と認められている。

・朝鮮人については、前回の審査でも話題になった。帰化の際の氏名変更や、定住者とか永住者というカテゴリーもある。1952年、外国人登録法によって、50万の外国人が一夜にして生まれた。これはいったいどういうことか。日本国民とも、他の外国人とも違う存在がつくられた。政治的権利は区別する必要もあるかもしれないが、しかし人権という観点ではできるだけ幅広い枠組みで認めるべきである。

・特別永住者には帰化を望んでいない人がたくさんいるが、なぜなのか不思議である。名前を変更しなければならないからか。同化の問題があるのか。エスニック・マイノリティの権利に注意が向けられていない。エスニック・マイノリティの権利を保障すれば多くが日本人になるのではないか。

・在日朝鮮人について、公教育の教育課程の中で、マイノリティの教育をどうしているのか。歴史では、さまざまな民族が日本建設に貢献したことを教えているのか。すべての子どもに歴史、文化、言語を保証しているのか。

・朝鮮学校は不利な状況に置かれている。税制上の扱いも不利になっている。

・マイノリティの参画のデータがない。国籍というスクリーニングで、民族的データがない。

・移民女性についてはかなりの情報がある。DV被害女性にどのように対処しているのか。離婚して在留資格緒失う問題だ。

・いくつかの条約機関から国内人権委員会の設置を勧告されてきたが、人権擁護に努めるといっているのに、人権委員会がない。マイノリティにもっと光を当てるべきだ。ダーバン人種差別反対世界会議・行動計画に相当するような計画が日本にはない。

・全体的社会的状況だが、公開されている場所での差別がある。条約5条fの問題だが、多くの国の経験と同様に、入場拒否があるが、こうした入場拒否を不法とし、処罰しているのか。憎悪に基づく言動にあまりに寛容ではないか。何度も何度も指摘されてきたことなのに、マスコミや政治家発言で差別がなされている。

以上がソンベリ委員の発言。続いて他の委員が順次発言。

ヌレディン・アミール委員(アルジェリア)--先住マイノリティという、歴史的に形成されたグローバルな差別がある。日本では未来の世代にどのような教育プログラムがあるのか。オーストラリアやニュージーランドは先住民族に謝罪した。歴史から何を学ぶのか。差別の歴史から学ぶことが重要だ。

アレクセイ・アフトノモフ委員(ロシア)--(日本語を話せないがある程度読める。大船に住んでいたことがある)--高校無償化問題で(中井)大臣が、朝鮮学校をはずすべきだと述べている。すべての子どもに教育を保証するべきである。朝鮮学校の現状はどうなっているのか。差別的改正がなされないことを望む。今朝、新聞のウエブサイトを見たところだ。朝鮮人はずっと外国人のままでいるが、なぜ日本国籍をとらないのか。国籍法はどうなっているのか。条約と整合性のない規定があるのではないか。国籍取得を阻んでいるのは何か。朝鮮人や中国人は国籍法の手続きにアクセスできるのか。沖縄について日本政府の立場をもう少し詳しく聞きたい。以前は独立国家だったはずだ。独自の文化があり、先住民族ではないのか。部落民については出身originにも関係する。特定の家系の人だ。

ムリヨ・マルティネス委員(コロンビア)--人種主義、人種差別の概念をどう捉えているのか。先ほどの上田大使のプレゼンテーションでは、あえてこの言葉を使わないようにしていた。新しい状況が生まれ、人種主義や人種差別という概念とどうかかわっているのか。例えば朝鮮人である。教育分野でどのようになっているのか。うまく統合できるのか。モニタリング・メカニズムはあるのか。インターネットにおける人種主義について、モニタリング・センターはあるのか。統計をとるシステムはあるのか。パリ原則にのっとった国内人権機関を作らないのか。

ホセ・フランシスコ・カリザイ委員(グアテマラ)--ソンベリ委員に同感である。アイヌに関する有識者懇談会があるが、アイヌ民族は何人入っているのか。上田大使は「アイヌ民族がアイデンティティに誇りをもてるようにしたい」というが、今は「もっていない」ということか。政府高官による差別発言があったという情報があるが、条約2条1項や4条に関連してどういう対策をとっているのか。朝鮮学校に関して、もっとも著名な新聞の社説にも、高校無償化から朝鮮学校を排除するという大臣発言への批判が出ている。すべての子どもに平等に権利を保障するべきだ。

ヴィクトリア・ダー委員(ブルキナファソ)--技術的側面については、日本政府は2001年報告から変わっていない。国際的な約束を迅速に変えるということが難しいのか。とくに4条留保である。ソンベリ委員と同様に、14条の観点を強調したい。日本政府は立場を変えることができるのではないか。条約は日本にとっても重要である。留保を見直して撤回することを期待する。次に報告書の民族構成や人種の定義も前回と変わっていない。アイヌを先住民族と認定したが、国連先住民族権利宣言やILO条約に沿って、さらにイニシアティヴの強化が必要だ。部落民と世系に関してはカーストが参考になる。アフリカにもある。スティグマタイゼーションがある。日本は世界に開かれた存在となっていて、外国人が訪れているが、帰化の名前の変更はどういうことか。アフリカ人がたくさん日本にいったら、名前を変えなければならないのか。アフリカ人はかつて経験しているが、二重の苦しみを味わうことになる。文化的な苦しみであり、植民地主義の失敗の結果、名前を変えることを強要された。これはぜひ再考してもらいたい。

レジス・デ・グート委員(フランス)--アイヌを認めたことは分かったが、他のマイノリティはどうなのか。2008年の国連人権理事会の普遍的定期審査でもとりあげられた。人権理事会のディエン特別報告者も勧告した。国内マイノリティ、旧植民地出身者、その他の外国人のそれぞれについて情報が必要だ。4条について進捗がない。4条abを留保したままである。表現の自由が強調されているが、2001年の勧告でも触れたように、4条は不可欠だ。人種差別の禁止と表現の自由は両立する。朝鮮学校生徒への嫌がらせが続いている。それから、最高裁判所が、調停員について外国人を採用しないという、なぜなのか。

ファン・ヨンガン委員(中国)--4条、7条に基づいて教育が重要である。条約の内容を市民に知らせ、市民が条約を実施することができるようにするべきである。旧植民地出身者であるが、第二次大戦が終わって、歴史的状況から定住していたものが、1952年に外国人とされ50年以上たって、二世、三世がいるが、日本社会への統合が成功していない。高齢者には、民族的優越感を持つ人がいて、平等な扱いがなされず差別的扱いである。日本において大きな貢献をした人は、日本人と同じように権利を享受しなければならない。4条abを留保しているが、日本では差別の煽動がみられる。公務員や政治家が極右的発言をしている。外国人を泥棒だとか、犯罪を行なうとか、問題を引き起こす存在だとか、公的立場の人間とは信じられない憎悪の煽動を外国人に向けている。公務員に人権教育のセミナーが必要である。偏見や差別を根絶してこそ友愛である。

イオン・ディアコヌ委員(ルーマニア)--アイヌの漁業アクセスの制限があるが、他の人には許されているのにアイヌには許されていないのはなぜか。部落民に関連して、世系が条約1条に含まれているので、部落民は条約の適用対象である。日本政府は1条を留保していないではないか。1965年に1条に世系がいれられた。40年以上たって、これは間違いだとでも言うのか。条約には世系が入っている。特別措置法はなぜ終了したのか。朝鮮人は1952年に外国人とされたが、日本に居住している。彼らは失った国籍を回復することができるのか。取得したいと求めているのか、いないのか。朝鮮学校はどうなっているのか。他の学校と同等になってきたというが、全体はどうなのか。大学受験資格を認めないことは、ペナルティを課していることになるのではないか。朝鮮学校生徒に対する嫌がらせや攻撃について、処罰しているのか。朝鮮学校はよりよく保護するべきである。最近、日本と朝鮮政府の関係が悪化しているが、それを理由に朝鮮学校に影響を及ぼしているのではないか。国際関係が日常生活に影響を与えてはならない。まして子どもに影響を与えるべきではない。朝鮮学校だけ免税措置を講じていないのは差別ではないのか。難民受け入れについて、カンボジアやミャンマのことはわかったが、他の国はどうなのか。1951年難民条約は日本ではアジアだけに適用されるのか。4条の留保の意味を知りたい。どこまで適用されるのか。2001年報告書も今回の報告書も、刑法には暴行罪、脅迫罪、名誉毀損罪があるので人種差別禁止法は不要としているが、犯罪の人種的動機を日本政府は知りたくないのか。裁判官が、犯人の人種主義的動機を考慮しないとすれば疑問である。人種的動機を除外していいのか。なぜ日本政府は人種的動機を無視しているのか。

クリス・マイナ・ピーター委員(タンザニア)--国内人権機関がないのは奇異な感じがする。政権交代があったので、人権分野でも変化がおきるかもしれない。いつ人権機関ができるのか、スケジュールを教えて欲しい。日本と人権条約の関係であるが、選択議定書を含む人権条約の批准数が13しかなく、いわゆる先進国では最低である。日本政府は「アパルトヘイトはない」というが、アパルトヘイト禁止条約もスポーツ・アパルトヘイト条約も批准していない。日本政府報告書の立場と実態の間に齟齬がある。日本は、国際人権分野で世界との対話をできるだけ少なくしようとしているのか。貿易にだけ関心があって、対話には意欲的でないのか。国際法の国内適用も取り上げたい。個人が条約を活用して自分の権利を守ることができない。人権条約を国家と国家の関係だけにとどめて、個人には関係ないという姿勢だが、なぜ個人が条約を活用して自分の権利を守ることができないのか。14条とも関連する。個人通報制度を受け入れる考えはないのか。

イカ・カナ・エウオンサン委員(トーゴ)--(俳句がすき)--社会的階層化に関心がある。日本社会発展が部落にどのような影響を与えたのか。改善するつもりはあるのか。私も日本へ行ったら名前を変えなくてはならないのか。

ホセ・アウグスト・リンドグレン・アルヴェス委員(ブラジル)--知らない委員もいると思うので、ブラジル人移住労働者のことを話したい。19世紀、ブラジルは何百万もの(*数字が違うと思うが)日本人移民を受け入れた。彼らはブラジル人の一部となり、ブラジル国籍者の主要な柱となって、ブラジル経済の発展に貢献した。1970~80年代から、ブラジルが経済危機になると、逆流現象がおきて、彼らとその子孫が日本に戻っていった。今も日本に居るものも多い。「目に見えるマイノリティになっていない存在」だ--嫌な言葉だ。彼らは日本の工場で低賃金で仕事をした。二国間協定が結ばれて数多くが日本に渡った。ところが、不況の中で仕事を失いブラジルに戻った人もいる。人種主義的な観点で不満も生まれている。ディエン報告書に多くを学んだが、この問題も解決が必要だ。

上田大使--質問には明日、スタッフが答える。

志野人権人道課長--ご指摘いただいたうちの、個人通報に関わる選択議定書の批准の件だが、人種差別撤廃条約や自由権規約の選択議定書だけではなく、実は日本はすべての個人通報制度を受け入れていない。政権交代があり、これは重要な検討事項という指示を受けているので、どのような形で受け入れるのがよいかを検討中である。

以上で24日の審査が終了しました。25日朝に日本政府が質問に回答します