Friday, October 11, 2024

「<共同声明>杉田水脈氏は衆議院議員にふさわしくありません」の経過と成果

「<共同声明>杉田水脈氏は衆議院議員にふさわしくありません」の経過と成果

                               20241012日、文責:前田朗)

 

1 はじめに――目的100%完全達成

 

私たちは107日にオンライン署名「<共同声明>杉田水脈氏は衆議院議員にふさわしくありません」を立ち上げました。そして1010日に参議院議員会館で共同声明をアピールする集会を開きました。

報道によると、1010日夜、杉田水脈氏は今回の総選挙に不出馬となったとのことです。

共同声明の主要目的は杉田氏を選挙に出馬させないことですから、目的は100%完全に達成されました。

急遽選挙が始まることになって準備を進めたこの署名は多くの方から圧倒的賛成をいただき、呼びかけ開始3日目に賛同が1万筆を超えました。ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

レイシスト政治家を選挙に出馬させない、そのために政党に要請行動をするという運動は、従来、あまり取り組まれてこなかったと思います。今回、非常に多くの方から、「こういう署名運動を待っていた」「どうしてこういうことをしてこなかったのか」というご意見を頂きました。

今後、市民運動・平和運動として、レイシスト政治家、好戦的政治家、憲法違反の政治家を選挙に出馬させない運動、出馬した場合には落選させる運動をどのようにつくっていくかを考える必要があると思います。そこで、私たちの共同声明の経過や成果について、若干ご紹介しておきます。

 

2 関連報道

 

杉田水脈氏、比例公認せず 自民、上杉氏も優遇困難

https://www.tokyo-np.co.jp/article/359689?rct=politics

杉田水脈を公認するな!

https://note.com/kuwa589/n/na14fe04484ac

紀藤正樹弁護士「やはり」杉田水脈氏を衆院選比例単独名簿に登載せず 安倍派の裏金議員優遇困難

https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202410110000243.html

自民党〝裏金女性議員〟に明暗 丸川珠代氏は公認も杉田水脈氏は「不出馬」へ

https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/photo/319779

自民・杉田水脈前衆院議員が次の衆議院選挙に出馬しない意向固める|TBS NEWS DIG

https://www.youtube.com/watch?v=hM83-AtHC9o

杉田水脈氏に「国会議員の資格なし」 衆院選を控え問われる自民党の人権感覚、公認しないよう学者らが気炎

https://www.tokyo-np.co.jp/

衆院選で杉田水脈氏の非公認求める 研究者が声明発表「人権侵害の常習者」

https://www.kanaloco.jp/news/social/article-1116745.html

杉田水脈氏は参院“鞍替え”出馬か? 衆院選辞退でも「差別発言」「裏金事件」の反省ナシ

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/361829

<動画>

UPLAN【共同声明】杉田水脈氏は衆議員議員にふさわしくありません 

https://www.youtube.com/watch?v=NvpcHytqVhs

 

3 共同声明の経過

 

共同声明のきっかけは、ダーバン+20:反レイシズムはあたりまえキャンペーン(下記参照)という小さなグループの実行委員の相談から始まりました。

民族や性的指向などの属性を標的として差別発言と名誉毀損を繰り返してきた、レイシズムの塊のような政治家が、何一つ反省することなく、また選挙に出馬することを放置しておいてよいのか。何かできることはないか。

104日の会議に参加していた実行委員(藤岡美恵子、前田朗、矢野秀喜、一盛真、渡辺美奈)の話し合いを受けて、105日に共同声明文案を前田が起草し、67日に呼びかけ人を募りました。石破首相による衆議院解散が迫っていましたので、慌てて準備を始めたのが実状です。このため声明文は必ずしも十分なものではありません。他にも呼びかけ人に加わっていただける方が多数いらしただろうと思います。

しかし、事態は急を要しましたので、107日夜に見切り発車で、オンライン署名(Change.org)を呼びかけました。

そこから1010日午後まで、実質3日に満たない期間に1万筆を超える賛同を頂きました。

1010日午前に自由民主党本部にEメールで共同声明の申し入れをしました。

1010日午後に参議院議員会館会議室で共同声明をアピールする集会を開催しました。

その後、Change.orgのサイトで、共同声明は「一時停止」の扱いとなりました(この点は後述します)。

*ダーバン+20:反レイシズムはあたりまえキャンペーン

https://durbanplus20japan.blogspot.com/

 

4 ヘイト・スピーチを許さない

 

差別とヘイトの被害者にとって、レイシスト政治家の選挙出馬はあまりにも大きな恐怖と不安の原因となっています。

共同声明の準備過程で、これまで杉田氏から被害を受けた方にご相談したところ、「声明に賛同だが、呼びかけ人に名を出せない」「トラウマになっているので集会に参加して発言するのは控えたい」とおっしゃっています。

杉田氏による差別発言、ヘイト・スピーチ、激しい誹謗中傷がどれほどの被害を生み出したことでしょうか。

「ヘイト・スピーチの沈黙効果」という言葉があります。マジョリティによる差別発言は、マイノリティの人間の尊厳を傷つけ、アイデンティティを標的とし、抵抗する力を奪い、沈黙に追いやるのです。勇気を奮って被害を訴えても、マジョリティの多くが無関心で、差別やヘイトを放置している社会では、差別被害者は沈黙するしかありません。

ヘイト・スピーチは標的とされたマイノリティの発言権を奪い、社会参加を否定します。差別とヘイトは社会を壊し、民主主義を壊します。

マジョリティの一員こそが差別とヘイトに反対する責任があります。レイシスト政治家を批判することは私たち自身のためであり、社会を守るため、民主主義を守るために必要です。

 

5 共同声明の影響・結果

 

極めて短期間の準備でしたが、共同声明は非常に多くの方から歓迎され、賛同していただきました。

コメント欄を見ると、多数の方が声明に賛同しただけではなく、「レイシストを政治家にするな」「杉田氏は公人として失格である」「自民党は公認するな」というコメントが溢れました。

X(旧ツイッター)やFacebookなどSNSでも、声明を紹介・転送・共有していただきました。そこでの書き込みを見ても、差別に対する怒り、無責任な政治家に対する批判が多数見られました。

多くの市民が必要性を感じていた反差別と人権擁護の運動の一つの形として、共同声明には大きな意味があったものと考えます。

共同声明が自由民主党の候補公認決定に影響を与えたか否かはわかりません。

ただ、杉田氏に大いに影響を与えたことは明白です。X(旧ツイッター)上で、杉田氏は私たちの共同声明に対して2度にわたってコメントをして、非難しています。市民の意思表示を無視できず、上から目線で非難を繰り返す振る舞いはレイシスト杉田氏の本領発揮と言えるかもしれません。

杉田氏は「あなた方がいくら騒ごうが、私にはなんの影響もありません!」と毒づいていますが、影響がないのなら無視すればよいのです。自民党山口県連から党本部への推薦がなされたにもかかわらず、公認決定がもつれ込み、「保留」となり、最後は「公認辞退(不出馬)」となりました。

上記のように、この間、メディアでは杉田氏の公認問題に注目が集まり、報道が続きました。市民とメディアによる監視と批判の結果として杉田氏を不出馬に追い込むことができたのです。

このことを共同声明の大きな成果として確認しておきます。

 

6 「落選運動」問題

 

現在、Change.org上で共同声明を閲覧することができません。

Change.orgには次のように記載されています。

「このオンライン署名は審査中です

このオンライン署名はサイト上での公開が停止されています。ポリシーチームによるコミュニティガイドラインへの違反の有無が審査されています。その結果に基づきページ公開の再開または停止継続が決定されます。今しばらくお待ちください。」

公職選挙法第138条の2に次の条文があります。

「(署名運動の禁止)

138条の2 何人も、選挙に関し、投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人に対し署名運動をすることができない。」

共同声明が、第138条の2の「投票を得しめない目的をもつて選挙人に対し署名運動」に該当するのではないかが問題となります。いわゆる「落選運動」の禁止です。

1に、私たちの共同声明は、主として自由民主党に「杉田氏を公認するな」と要請する運動です。これは落選運動ではありません。政党に対する要請行動です。

2に、公職選挙法における選挙運動は公示日から始まります。今回の公示日は1015日(予定)です。私たちの共同声明は、選挙運動以前の、政治的表現の自由の行使です。

3に、声明文の中に「この機会に私たちは杉田水脈議員には国会議員になる資格はなく、来たる総選挙において国民の代表者たる国会議員にしてはならないと訴えます」という記載があります。この点が落選を求める署名運動に当たると考える人がいるかもしれません。しかし、これは当たり前の表現の自由の行使です。

なお、公職選挙法の解釈については、下記をご参照ください。

https://iwj.co.jp/wj/open/archives/308570#idx-2

https://news.yahoo.co.jp/articles/c6c68a3d5b0540034b54b2bd22777b86a89a2d03

 

7 おわりに

 

共同声明はすでに目的を100%達成したので、Change.org上での公開停止は大きな問題ではありません。

しかし、今後のいわゆる「落選運動」にとっては大きな問題となりますので、開かれた議論が必要です。

有権者が公職選挙の立候補者の政治的資質をチェックし、論評し、広く呼びかけることは、基本的な政治的表現の自由の行使です。これなくして民主主義は機能しません。

今後、杉田氏は参議院への鞍替えをめざしているとのことです。

私たちは、自由民主党が杉田氏を参議院議員選挙において党の候補者として公認しないよう要請します。

有権者の皆さんに、同様に杉田氏の政治的言動を監視し、その責任を追及するように要請します。

有権者の皆さんに、国際的に有名な悪質なレイシストの差別活動を監視し、抑止するために協力するように呼びかけます。

ジャーナリスト、メディア関係者の皆さんに、差別とヘイトに勤しむ杉田氏及び同様の言動を行ってきた政治家に対する監視を強化するよう要請します。

                                   (以上)

Sunday, September 22, 2024

平和力フォーラム講座 (in大阪) 関東ジェノサイドの記憶

平和力フォーラム講座 (in大阪)

関東ジェノサイドの記憶

その時、摂政裕仁は何をしたか

講師:前田朗

 

2023年は関東大震災朝鮮人虐殺100年でした。

関東大震災虐殺はジェノサイドだという認識が広がってきました。平和教育においてジェノサイド教育実践が模索され、ジェンダー視点に立った研究が増えています。ジェノサイドを目撃した子どもたちの手記・作文の分析や、事件の背後にいた女性たちの役割が注目されています。

ジェノサイドは人間の尊厳の否定であり、国際法上の犯罪です。国際法に照らして評価する試みが必要です。世界のジェノサイドと対比して理解することも必要です。

101年目の今年、国際法に基づいて、関東ジェノサイドの最高責任者である摂政について考えてみましょう。その時、摂政はどこにいて、何をしたのでしょうか。

このテーマは100年間、なぜ、一度も議論されなかったのでしょうか。101年目の今年、タブーを破りましょう。

 

1110日(日) 開場1330分、開会14時~16時30

ドーンセンター大会議室2(京阪&谷町線「天満橋」駅)

参加費(資料代含む):500

 

前田朗プロフィル:東京造形大学名誉教授、日本民主法律家協会理事、のりこえねっと共同代表。著書に『戦争犯罪論』『ジェノサイド論』『人道に対する罪』(青木書店)『旅する平和学』(彩流社)『パロディのパロディ――井上ひさし再入門』(耕文社)『ヘイト・スピーチ法研究序説』『ヘイト・スピーチ法研究要綱』『憲法9条再入門』(三一書房)など多数。最新刊は『希望と絶望の世界史』(的場昭弘さんとの共著、三一書房)。

 

主催:平和力フォーラム

070-2307-1071E-mail: akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

Monday, September 02, 2024

野口壽一さん(ウエッブ・アフガン編集人) アフガニスタン最新情勢を語る

RAWAと連帯する会

野口壽一さん(ウエッブ・アフガン編集人)

アフガニスタン最新情勢を語る

 

ターリバーンが政権を握って3年の歳月が流れました。「シャリーア法」に基づくと称するターリバーンの統治は市民的自由や政治的自由を抑圧しがちで、近代民主主義に合致しません。

アフガニスタンには独自の歴史や伝統があるとはいえ、女性の自由と権利に対する極端な制約はとうてい容認できません。国際社会からジェンダー・アパルトヘイト、ジェンダー迫害という非難が寄せられています。

RAWA(アフガニスタン女性革命協会)は決して諦めることなく、女性の自由と民主主義を求めて闘い続けています。

今回はアフガンに関する最新情報を発信してきたウエッブ・アフガンの野口壽一さんにお話しいただきます。

11月2日(土)開場18時、開会18時30分~20時30

◉ 東京ボランティアセンター(飯田橋駅隣ラムラ10階)

◉ 参加費(資料代含む):500

 

★野口壽一さんプロフィル:1948年鹿児島県生れ、1980年夏アフガニスタンを単独取材し<写真記録>『新生アフガニスタンへの旅』を上梓。2018年元アフガニスタン副大統領の回想録『わが政府 かく崩壊せり』を翻訳出版。日本アフガニスタン合作記録映画『よみがえれ カレーズ』(土本典昭ほか監督)制作に原案者として関与。現在フェニックス・ラボラトリー合同会社代表。

★ウエッブ・アフガン https://webafghan.jp/

 

主催:平和力フォーラム/RAWAと連帯する会

電話070-2307-1071E-mail: akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

Thursday, August 29, 2024

「関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者遺族の声を聴く集い」

 「関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者遺族の声を聴く集い」

 

関東大震災朝鮮人ジェノサイド100年となった昨年、その国家責任を問う国会質問が通常国会および臨時国会において繰り返しなされました。しかし日本政府は、証拠書類を掲げて国家責任を追求する野党国会議員の質問に対して、全く無感動に、政府としては事実を確認できない、との答弁で一貫しました。

 

関東大震災虐殺の歴史研究家、山田昭次氏はその著書の中で、この関東大震災ジェノサイドの問題は、まず国家責任の問題であるが、同時に民衆責任の問題であることを指摘し、また一人ひとりがまず、自分自身を含めた民衆責任の問題意識を持ってこそ国家責任を追及する地平に立つことができる、と語っています。

 

しかし、私たちが何よりも忘れてはならないことは、あの大虐殺によって愛する家族を失ったご遺族方がこれまで101年間、家族の帰りを待ち続け、その家族が虐殺により命を落としたことを知った後も、どこにも訴える道が開かれず、悲しみと怒りの中、国家責任を追及する道を模索してきたことです。そのようなご遺族に寄り添い、その声を聴き、その地平からご遺族と共に国家の責任を追及していくことこそ、民衆責任のあり方ではないでしょうか。

 

そのために、朝鮮人虐殺から101年目の今年9月を迎えるにあたり、私たちは、韓国から来訪されたご遺族と在日コリアンの関係者からその切なる思いを聴く集いを開催いたします。

 

お話しくださるご遺族と関係者:

・曺光煥さん:韓国居昌郡在住(関東大震災虐殺犠牲者、曺権承氏の曾孫)

・尹峰雪さん:千葉県在住(虐殺目撃者の親族)

 

日時:202492日(月)午後3時~4

会場:日比谷図書文化館コンベンションホール(B1

東京都千代田区日比谷公園1-4(都営三田線内幸町駅A7出口、東京メトロ霞ケ関駅

C4/B2出口)

 

主催:「関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者遺族の声を聴く集い」呼びかけ人一同

徐勝(韓国又石大学校東アジア平和研究所長)、金性済(牧師)、呉充功(映画監督)、米津篤八(翻訳家)、外村大(東京大学教授)、山本すみ子(関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼神奈川実行委員会代表)、西崎雅夫(一般社団法人「ほうせんか」理事)、前田朗(東京造形大学名誉教授)、飯山由貴(美術家)、FUNI(ラッパー)、安田浩一(ジャーナリスト)、鄭栄桓(明治学院大学教授)、石垣のりこ(参議院議員)、新井勝紘(専修大学教授)、高塚恵里子(文化センターアリラン金曜学習会)、金守珍(新宿梁山泊)、松岡みどり(俳優)、鄭剛憲、呉文子(エッセイスト)、加藤直樹(ジャーナリスト)、松岡節子、金時雨、藤本泰成(フォーラム平和・人権・環境顧問)、姜大興さんの想いを刻み未来に生かす集い実行委員会、埼玉・コリア21

以上(順不同、敬称略、2024年8月23日現在)

 

※午後5時より同会場にて、朝鮮人虐殺の史実に迫る呉充功監督『隠された爪跡』と新作プレビュー『名前のない墓碑──関東大震災朝鮮人虐殺100年の歴史否定』が上映されます。

(別途参加費1000円)

Monday, August 19, 2024

ヘイト・クライム研究文献(226)

楠本孝「補遺:『相模原市人権尊重のまちづくり条例』をめぐって」『地研通信』149号(2024年、三重短期大学地域問題研究所)

楠本孝「(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例答申について」『地研年報』28(2023)の「補遺」である。

https://maeda-akira.blogspot.com/2024/01/blog-post.html

Ⅰ はじめに

Ⅱ 答申と骨子及び条例の主な相違点

Ⅲ 立法事実に関する若干の検討

 1 立法過程における立法事実の意義

 2 規制の及ぶ範囲が十分に限定されていれば、立法事実がなくても許されるのか?

 3 相模原市に立法事実はなくなったのか?

 4 立法事実が薄くても、自治体が掲げる理念に基づいて規制することは許されるか?

 5 小括

Ⅳ おわりに

相模原では、「答申」「骨子」に続いて、243月に条例が制定された。関係者から高い評価を受けた「答申」の重要部分が削除されてしまい、条例制定を求めた市民からは落胆の声が聞かれた。

その原因として、相模原市長の姿勢や、ヘイト集団による攻撃など多様な理由が考えられるが、楠本は、条例制定過程における法理論的検討が不十分であったことを指摘する。

当初は川崎型の条例制定(ヘイト・スピーチに対する罰則)を想定したはずが、罰則抜きの条例にとどまったのは、もともと立法事実に関する法的検討が出来ていなかったためだという。

楠本によれば、川崎と相模原とでは条件・環境が異なるため、川崎と同じ理由付けでの条例制定にはやや難点があり、そのことが露見した時に、相模原の条件に即した立法事実論を展開するべきだったのに、それがなされなかった。むしろ、十分な立法事実がなくても条例制定を、と言う方向に議論が流れてしまった。

「ヘイトスピーチの規制を正当化する根拠を、市民各自の『個人としての尊厳を保ちつつ平穏な生活を送る権利』の侵害に求めるとすれば、相模原市内であったヘイトDVDの投函事例や、審議会からの外国籍委員を排除すべきとの街宣が頻発した事実は、十分に立法事実になりえたと思われる。」

「ヘイトスピーチ規制の保護法益は、市民各自の『個人としての尊厳を保ちつつ平穏な生活を送る権利』を侵害するヘイトスピーチの態様は地域によって異なり得るし、その各々が立法事実である。この立法事実から法益を保護するために必要な最小限度規制すべき行為を定めたものが構成要件とされるべきである。外国人を地域から排斥する内容のパンフレットやDVDを不特定多数の住宅の郵便受けに投函したり、駅や電車、バスの車内で障害を理由に集団で障害者をからかったりする行為は、標的とされた人々の『個人としての尊厳を保ちつつ平穏な生活を送る権利』を侵害する者であると言える。これらの行為をした者に、勧告、命令を発し、それでも繰り返すような場合に、罰則の適用をしたとしても、違憲の謗りを受けることはないと思われる。」

今後の各地における条例制定運動にとって重要な教訓である。

Sunday, August 18, 2024

「脱植民地化の思想」高橋哲哉さんに聞く(第1回) 「沖縄基地引き取りの思想的根拠」

連続インタヴュー講座「脱植民地化の思想」高橋哲哉さんに聞く

1回 沖縄基地引き取りの思想的根拠

『日米安保と沖縄基地論争』を手がかりに

ウクライナ戦争やガザ攻撃をはじめとして戦争、暴力、差別が世界を覆っています。

日本では軍事費倍増、敵基地攻撃論、ヘイト・クライム/スピーチなど平和や平等への攻撃が強まっています。

近現代世界の植民地主義を克服するための思想的営みが求められる現在、脱植民地化の思想を紡いできた高橋哲哉さんに、前田朗がインタヴューします。

1回 沖縄基地引き取りの思想的根拠

『日米安保と沖縄基地論争』を手がかりに

◉日時:1019日(土)開場530分、開会6時~820

◉会場:IKEBiz多目的ホール(としま産業振興プラザ)旧豊島勤労福祉会館、池袋駅西口より徒歩約10

◉参加費(資料代含む):500

★高橋哲哉さんプロフィル:哲学者。東京大学名誉教授。著書に『逆光のロゴス――現代哲学のコンテクスト』(未来社)『記憶のエチカ――戦争・哲学・アウシュビッツ』(岩波書店)『戦後責任論』(講談社)『靖国問題』(ちくま新書)『犠牲のシステム――福島・沖縄』(集英社新書)『沖縄の米軍基地――「県外移設」を考える』(集英社新書)『日米安保と沖縄基地論争――〈犠牲のシステム〉を問う』(朝日新聞出版)など多数。

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1回 沖縄基地引き取りの思想的根拠(24年1019日)

2回 イスラエル・パレスチナとウクライナ戦争(24年127日予定)

3回 現代欧州の歴史認識を問う(252月予定)

4回 日本と東アジアの現状を問う(254月予定)

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主催:平和力フォーラム

電話070-2307-1071E-mail: akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

Friday, July 26, 2024

平和力フォーラム連続講座 ジェノサイドと闘う(第5回) 関東大震災ジェノサイド その時、摂政は何をしたか  

平和力フォーラム連続講座

ジェノサイドと闘う(第5回)

その時、摂政は何をしたか

関東大震災ジェノサイド

前田 朗

 

2023年は関東大震災朝鮮人虐殺100年でした。最近はコリアン・ジェノサイド、関東ジェノサイドと呼ぶ人も増えてきました。ジェノサイドは国際法上の犯罪です。国際法に照らして評価する試みが必要です。

101年目の今年、国際法に基づいて、関東大震災ジェノサイドの最高責任者である摂政について考えてみましょう。

現代史におけるジェノサイドは人間の尊厳の否定であり、平和的生存権の否定です。ジェノサイドと闘うために考え、ともに声を挙げていきましょう。

 

9月14日(土) 開場18時、開会18時20分~20時30

東京ボランティアセンター(JR飯田橋駅となり)

参加費(資料代含む):500

 

プロフィル:朝鮮大学校法律学科講師、東京造形大学名誉教授、日本民主法律家協会理事、救援連絡センター運営委員、のりこえねっと共同代表。著書に『戦争犯罪論』『ジェノサイド論』『人道に対する罪』(青木書店)『旅する平和学』(彩流社)『非国民がやってきた!』『パロディのパロディ――井上ひさし再入門』(耕文社)『ヘイト・スピーチ法研究序説』『ヘイト・スピーチ法研究要綱』『憲法9条再入門』(三一書房)など多数。最新刊は『希望と絶望の世界史』(的場昭弘さんとの共著、三一書房)。

主催:平和力フォーラム

E-mail: akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp