深沢潮を読む(12)
深沢潮『わたしのアグアをさがして』(角川書店、2022年)
1月22日、深沢潮は、週刊新潮のコラム「創氏改名2.0」の筆者髙山正之を提訴した。
人権と出版問題報告会 週刊新潮「創氏改名2.0」事件
https://www.youtube.com/watch?v=TsfQtVCVqzg
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本書は2015~16年に『小説現代』に連載され、2022年に全面改稿して出版された。新型コロナ以前に書かれた作品だ。
主人公・莉子は30代女性で、失業と失恋の挙句、フラメンコに関心を持ち、突如としてスペインを訪れる。出会ったスペイン男性と恋に落ちるが、利用された挙句、財産も奪われる。別の日本人男性に恋心を抱くが編つけられる。軽薄な現代女性の典型として登場するが、6年後、スペイン語を学び、フラメンコに励む女性として登場する。フラメンコを極めようとするが、壁に当たり悩みながら、ギタリストのホセを追いかけてスペインへ。日本人恋人に別れを告げるが、肝心のホセは別の女性に走る。軽薄な点は変わらない。
だが、最後に莉子はフラメンコと自分の人生に出会い直す。
「自分が脅かされるのは耐えられない。わたしはわたしを大事に生きていく。誰にも支配されず、誰にもおもねることなく、自分を持ち続ける。」
一人で生きる女性の悩み、苦労、煩悶、男たちとの出会いと別れ、そしてフラメンコへの情熱。現代女性の生きざまを描いている。
本書の舞台はスペインだ。深沢作品の舞台はほとんどが日本だ。アメリカ留学やソウル旅行がある程度だ。『翡翠色の海へうたう』の舞台は沖縄だった。舞台をスペインとした点では深沢が新境地を開こうとしたのかもしれない。
フラメンコを学ぶ莉子はマドリッドをはじめ各地を訪れる。深沢がスペイン熱なのか、それとも本作のために取材旅行したのか。随所でスペイン旅行案内を兼ねた作品になっているのは読者サービスかもしれない。