Thursday, February 21, 2013

中国を蔑視して喜ぶ日本人 

西尾幹二・青木直人『第二次尖閣戦争』(祥伝社新書、2012年)                                                                         2年前に出た『尖閣戦争』の続編だ。前著は中国漁船衝突事件の時のものだが、今回は2012年の事態を受けての対談である。単に尖閣の領土問題だけを議論するのではなく、日中、日米、米中の国際関係(政治、経済、社会を含めて)の中で議論をするという基本的な組み立ては正当だと思う。国際関係全体の中で東アジア、特に中国の今後をどう読むのかという問題意識である。小さな新書であるにもかかわらず、その点では健闘している。しかし、よくもまあこれだけ中国蔑視発言を乱発できるものだと呆れてしまう。「発達段階の遅れた、独裁と非文明の前近代国家なのです」に始まり(いつから発展史観、歴史の発達段階論を採用するようになったのかと不思議)、「シナ」発言を連発し、「否応なしに目に入る最低国家」と言い、漢民族を「白アリ」と呼び、「犬がお腹を見せるように、中国が体を開いて」、「常識、良識などというものとは、まったく無縁」と言った調子で、ひたすら中国の悪口を並べ立てる。また、沖縄米軍基地へのオスプレイ配備関連して、「沖縄には相当中国人が入り込んでいるでしょう。福州系琉球人とか。広州系日本人とかいて、中国に帰属したほうがいいと思っている。メディアは彼らに占領されている。県庁や市役所も相当に怪しい」とまで言う。見事な「陰謀論」だ。日本はひたすら被害者で、とにかくすべて中国が悪いと、罵詈雑言、誹謗中傷がえんえんと続く。本書を読めば、一部の日本人が、いかに被害妄想を抱いて、ひたすら他者を貶め、攻撃し、それによって精神の安定を得ようとしているのかがよくわかる。うんざりする1冊だ。