Tuesday, December 25, 2018

植民地における強制連行を問う


飛田雄一『再論 朝鮮人強制連行』(三一書房、2018年)

https://31shobo.com/2018/10/18011/


神戸学生青年センター館長の飛田はこのところ『現場を歩く現場を綴る』、『心に刻み 石に刻む』『旅行作家な気分』など、矢継ぎ早に出版を続けている。活動家人生と理論研究人生の総決算を考えているのだろう。歩んできた道は異なるが、私も『旅する平和学』のように、旅やフィールドワークでの思索と現場での闘いを念頭において理論活動を続けてきたので、飛田とは共通する点が少なくない(と勝手に思っている)。


本書は4部構成である。

第1部 講演録

第2部 神戸港平和の碑

第3部 論考

第4部 交流集会他

著者の関心は「歴史を刻む──神戸の外国人」「強制連行真相究明運動の展望」の2本に集約されている。「〈神戸港平和の碑〉の建立と朝鮮人・中国人・連合国軍捕虜の強制労働」「〈神戸港平和の碑〉に込められた思い──アジア・太平洋戦争と朝鮮人・中国人・連合国軍捕虜」などでも、朴慶植が始めた強制連行の調査研究を継承して、発展させる共同研究の中心人物の一人としての経験と理論が提示されている。


敗戦後の日本政府と企業の、中国人強制連行と朝鮮人強制連行への対処が異なる。中国と朝鮮の差異は2つある。第1に、占領地の中国と植民地の朝鮮の差異である。第2に、日本敗戦直後に、国家を有していた中国人と、国家を有しなかった朝鮮の差異である。

中国人強制連行については、占領地における違法行為であり、しかも日本敗戦後、当時の中国政府が戦勝国側から日本政府に申し入れができた。それゆえ、日本政府も企業も一定の責任を取らざるを得なかった。

ところが、植民地・朝鮮における強制連行について日本政府も企業も責任逃れを続けている。植民地支配の違法性を認めず、植民地支配下における強制連行の責任も認めようとしない。(しかも後には日韓条約のあいまいな「解決」がなされた)

このことが徴用工問題において改めて問われている。国家の立場の立論にとどまらず、被害者中心アプローチをとり、人権論からの解決を図る必要性が強調される。国連国際法委員会における議論のように「植民地支配犯罪」を明確に掲げるべきであろう。あるいは、ダーバン人種差別反対世界会議以来、植民地支配を人道に対する罪に関連させて検討する議論が参考になる。