増田都子『昭和天皇は戦争を選んだ!』(社会批評社、2015年)
押し売り商法で無理やり買わされた(笑)。でも、その後で著者は私の本を買ってくれた。ぶつぶつ言いながら、物々交換だ。何しろ物議を醸す本だ。物故した天皇をぶつ切りにして、酢の物にしてしまう本だ。ぶつくさ言っているが、酢の物は「すのぶつ」とは読まない(どうでもいいが)。物騒だなあ。今日は仏滅じゃないだろうな。この本は物理的には270頁で、物量作戦ではない。資料豊富だが仏器種ではない。仏器種って意味不明なのは、ブッキッシュと打ち込んだ際の誤変換。ブツは2200円+消費税だ。裏表紙には「定価[本体]2200円+税」と表記されている。奇妙な表記だ。2200円のなかにも税金が含まれているのに(どうでもいいが)。この本は仏壇に供えるのには適さない。仏式にのっとってないし、お釈迦様とぶつかってしまう。ぶっきらぼうに見える著者だが、物欲もなく、物理の教師ではなく、生徒をぶつわけでもなく、不適格ぶっとび教師との評判にはプチ疑問がある。ちょっと異物で異質だっただけだ。遺物じゃないけど、汚物のシンタローには目の上のたんこぶだったかも。それにしても270頁、ぶっ通しでヒロヒト君の悪口を続ける精神のタフさには感銘する。Make Hirohito lick his boots(ブーツ)。念仏、ぶつぶつ。
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「本日拝謁の際、御話、増田の問題に触れたるが、我が国は歴史にあるジャンヌ・ダルクや柳寛順のような行動、極端に云えばオランプ・ド・グージュの様なことはしたくないね神代からの御方針である八紘一宇の真精神を忘れない様にしたいものだねとのお言葉あり。自分としては免職女性教師の立場の弱さに乗じ要求を為すが如きいわゆる火事場泥棒式のことは大いに好むのであるが、『騒擾の塵』を為すが如き結果になるのも面白くないので、あの本は認めておいたが、増刷については慎重を期する。」
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<『冥界通信』2015年8月15日号に掲載された特別インタヴュー記事からの引用>
――これはこれは、増田先生。こんなところまでよくぞいらっしゃいました。(感慨深げに)生者がここまでやってきたのは、何千年ぶりのことだろう。
増田――いくら探しても見つからないので、とうとう地獄の一番奥底まで来てしまったわ。
――増田先生が生きたまま三途の川を渡って以来、地獄は大騒ぎですよ。早く捕まえて、地上に強制送還すべしと。
増田――私だって地獄に来たくなんかなかったのよ。でも、奴に直接インタヴューして本当のことを言わせないといけないから(と言いながら、周囲を見渡す)。
――焦熱地獄では、次々と亡者を捕まえて自白を迫ったので、ヒデキ君とかノブスケ君とか、みんな悲鳴を上げてましたね。
増田――(肩をすぼめながら)小物ばかりで、どうしようもない連中。
――極寒地獄では、氷河までひっくりかえしてしらみつぶしにして、イワネ君やセイシロウ君の奥歯をガタガタいわせてましたね。
増田――だって、みんな、奴の居場所を吐かないんだもの。
――アベ地獄、じゃなかった、阿鼻地獄ではアドルフ君やベニート君が「いや~~あの先生にはまいった。死ぬかと思った」と笑い泣き。
増田――亡者がいまさら死ぬわけないじゃない。
――「死んだ方がましだ」と叫びながら逃げるのを増田先生が追いかけるものだから、閻魔さまも困って苦笑いしていました。
増田――(不思議そうに)叫喚地獄にはジョージ親子がいるかと思ったら、いなかった。
――親子大統領はそろって存命中ですよ。
増田――極悪大統領だから、片足はこちらかと思ったけど、まだなのね。
――とにかく、そろそろ地上にお帰りいただけませんか。
増田――そうはいかないわ。奴の首根っこ捕まえてインタヴューするのよ。
――ここにはいないとあきらめてください。
増田――そんなはずないわ。人類史上最低最悪の極悪人がここにいるのは間違いないのよ。
――全部調べたじゃないですか。
増田――まだよ。もう一カ所調べなくちゃ。
――(驚愕して)えっ、ということは、もしかして・・・
増田――その、もしかして、よ。あなたの後ろの扉を開けて頂戴。
――駄目です。ここだけは。地獄の奥の奥、底の底で、名前もない、「地獄の地獄」です。生者の入れるところではありません。
増田――焦熱地獄だって叫喚地獄だって、生者の入れるところじゃないでしょ。
――ですから、早くお帰り・・・
増田――私の本に文句をつけるチンピラ・ウヨクたちを黙らせるには、本人に喋らせるのが一番なのよ。文献資料は調べ尽くしたんだから、あとは本人に吐かせるだけ。地上に引きずり出して、生き返らせてやる。
――あっ、やめてください。あっ、だ、だ、駄目・・・(と言いながら、身体を半身にしてよける)。・・・あ~あ、本当に行っちゃった。
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という訳で、地獄編にふさわしく、赤い悪魔のラベルの、NOIR DIVIN, Domaine du Paradis, Satigny GE, 2013.