Friday, August 07, 2015

ヘイト・スピーチ研究文献(31)人種差別撤廃法案審議入り報道

「ヘイトスピーチ規制審議入り 人種差別撤廃法案」朝日新聞2015年8月5日朝刊
5月に国家上程された「人種差別撤廃施策推進法案」の審議が8月4日に始まった。朝日新聞は、法案の内容、審議を迎えた国会状況などを解説している。ヘイト・スピーチの刑事規制は行わないが、定義を掲げて、差別防止を政府に義務付ける法案である。記事は次のように紹介。
「法案では、人種、肌の色、民族などを理由に差別的な取扱いや言動をしてはならないとの基本原則を規定する。国や地方自治体には、差別の防止策をつくり、実施する責務があると禎得る。政府には、差別防止に向けた基本方針を定めることや差別の実態を調査するよう求める。」
京都朝鮮学校事件の被害者でもある金尚均(龍谷大学教授)の「法律でヘイトスピーチの定義が明記されれば、被害者が堂々と『差別だ』と言えるようになる。明らかな差別をやめさせるための一歩前進だ」というコメントを紹介している。
さらに、推進派の私と、慎重派の山田健太(専修大学教授)のコメントが並べられている。
私のコメントは下記の通り。
国連人権理事会や人種差別撤廃委員会は、人種差別撤廃条約を1995年に批准した日本政府に対して、条約にもとづき包括的人種差別禁止法ヘイトスピーチ禁止法の制定を勧告してきた。今回の法案はに対応し、国際人権法の立場から当然必要な立法。のヘイトスピーチ刑事規制は行わないが、日本社会での差別を抑止する重要な法として、すみやかに制定すべきだ。
 欧州ではほとんどの国が差別禁止法を持っている。マイノリティー(少数者)の尊厳と基本的人権を守るだけでなく、社会全体の自由や民主主義に関わる。少数者差別を放置すればマジョリティー(多数派)の自由や尊厳も傷つく。」

山田コメントは、差別やヘイト・スピーチに対する施策の必要性を唱えつつ、デモなどの刑事規制の方向へ向かうことに懸念を表明し、表現の自由の重要性を確認し、治安立法につながるようなことのないよう、恣意的な規制にならないようにと警告を発している。