目取真俊『沖縄 地を読む・時を見る』(世織書房、2006年)
9.11以後、2006年まで書き継がれた時評、エッセイをまとめたもので、『沖縄 草の声・根の意志』に続く評論集だ。「沖縄の選択――米同時テロを超えて」(2001年)に始まり、「沖縄の学校――私の教師時代」(2006年)に至る、90本近い文章は、9.11テロ、アフガン戦争、イラク戦争、米軍基地問題、沖縄戦、植民地主義、反戦運動、報道統制、教育統制を中心に、世界の動向野中で、漂流する日本政治の野蛮さと無責任ぶりを撃ち、沖縄保守政治の混迷を撃ち、同時に反戦運動にも反省を迫る。
「実践的意味持つ反復帰論――新川明文庫開設記念シンポ」(2005年)では、1931年生れの新川の戦争体験と、目取真の父親(1930年生れ)の戦争体験を併記し、「反復帰論」の前に「書かれざる一章」として、沖縄における「戦争責任の追及」があったのではないか、と問いを立てる。
「日の丸を掲げて祖国や憲法への幻想を煽りながら進められる『復帰運動』を、新川氏は厳しく批判した。そのときに、軍国少年・少女として育てられた世代として、教師や行政、政党リーダーたちの『戦争責任の追及』を、『同化思想』批判と同時に進めていく必要があったのではないか、と思った。」
重要な問いだが、短いエッセイのため掘り下げられてはいない。他に同種の文章もない。目取真の作品全体がこの問いへの回答であると言えるが。