山下泰子・矢澤澄子監修 国際女性の地位協会編『男女平等はどこまで進んだか――女性差別撤廃条約から考える』(岩波ジュニア新書)
国際女性の地位協会はこれまでにも同じジュニア新書で2冊出してきたので、これが3弾目だという。ジュニア向け女性差別撤廃条約の入門編、かつ日本の現状を条約に照らして検討した内容だ。
女性差別撤廃委員会におけるロビー活動や、世界の女性の地位の状況も踏まえて、日本における男女平等を実現するための理論的課題、実践的課題をていねいに、わかりやすく記述している。26名の分担執筆。資料も含めると230頁だが、本文は180頁。小さな新書に、ジェンダー平等、女性議員増加問題、職場における女性、家族のあり方、デートDV、複合差別などを詰め込んである。コラムも多彩。
ジュニア向けだが、シニア男女も必読書だろう。日本の政治、社会、経済、いたるところ課題は山積みで、男女平等はこれからだ。
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「法学(女性の権利)」の授業で、長年、同じ範囲の諸問題を取り扱ってきた。「女性の権利は女性問題ではなく男性問題だから、男子学生は是非受講するように」と繰り返してきたので、男子学生もかなり履修するが、やはり男子学生の欠席率が高い。DVだ、セクハラだ、人身売買だ、日本軍「慰安婦」だと続くので、男子学生には敬遠されてしまうのかもしれない。本書を参考に、授業の進め方を見直したい。
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一点だけ、残念なのは次の一文だ。
「女性は男性と異なり、名誉欲や権力欲はあまり持たず、政治家になる動機も子どもたちにいい環境を作りたいなど、具体的なことが多いのです。」(本書49頁、三浦まり)
三浦まりって、三浦瑠麗じゃないだろうな。
男は名誉欲と権力欲だが、女は違う、という決めつけの根拠は何だろうか。編者は金子みすゞの「みんなちがって、みんないい」を引用しているが、執筆者のジェンダー意識も「みんなちがって、みんないい」のだろうか。何かはき違えていないか。