ジュネーヴ美術歴史博物館は入場無料なので助かる。この春は「ホドラー1918-2018」展を三田が、同じ展示が続いていた。
常設展、ホドラー展に加えて、企画展「AES+F THEATRUM MUNDI」展が開かれていた。これは5フラン。
AES+Fは、ロシアのアート集団だ。タチアナ・アルザマソヴァ、レフ・エヴゾヴィチ、イヴジェニ・スビャツキー、ウラジミル・フリケの4人組で、AES+F。古典的な神話や宗教的世界や、西欧のルネサンスから18世紀に至る美術からの引用を駆使して独自の世界観を提示し、現代のグローバルな世界をヴィデオゲーム、ニューテクノロジー、ファッション、フィルム、ニューオリエンタリズムを媒介にコード化してきたという。ヴェニス、アデレード、シドニー、ハヴァナ、イスタンブール、ッキエフ、メルボルン、タイペイ、トロントなど世界中の現代アート展やビエンナーレに参加してきた。
「Last Riot」(2005-07)では、彫刻、写真、ディジタル絵画を用いて、寓話的な表現をした。「Allegoria Sacra」(2011-13)では、ヴィデオとディジタル・コラージュ。「Feast of Trimalchio」(2010)では、ディジタル・コラージュ。「Inverso
Mundus」(2015)では、ヴィデオ・エキシビジョン。
最初の部屋で、「Inverso Mundus」の巨大映像が流される。縦2メートルくらい、横10メートル近い。テーマは世界の下克上。価値観の転覆だ。登場するのは30名あまりの俳優たち、空想的な動物、キメラ、空飛ぶ魚たち。世界のヒエラルキーや伝統的ジェンダー秩序を壊乱するため、ユートピアとディストピアを提示する。ファンタジーと恐怖。女性審問官が男性を拷問する。子どもが大人と闘う。道路清掃人が道路を汚泥に。泥棒が警察官に、物乞いが億万長者に。キメラがペットに、悲劇と喜劇。アポカリプスがエンターテンメントに。俳優達は、表情を変えず、視線の移動、目の移動もほとんどなく、台詞もなく、ゆっくりとした動作に限られる。リアリティのない、マネキン風の俳優。それによってキメラや空飛ぶ魚たちと同居する。趣旨はわかるが、いささか単純な二項対立にはちょっと?。20数分のヴィデオ映像で表現するには、二項対立にしないと、混乱してしまうのだろう。
最後の「Feast of Trimalchio」では、中世の神話画や宗教画の構図を借りて、そこにローマの神々や護民官ならぬ、現代世界の人々を配置する。白人と黒人。男と女。大人と子ども。警官と泥棒。貴族と料理人。司祭と無信仰者。主人と召使い。セックス、食事、態様、スポーツ、トロピカル・ビーチが詰め込まれる。背景には、ローマの神殿風にしているが、中国の寺院、タイの寺院、エジプトのスフインクスなど。金龍の船が到着し、やがてすべてが船出する。豊かな現代の猥雑さを戯画的に表現しているが、その先は見えない。
「ホドラー展」と常設展をざっと見て、地下の喫茶店でコーヒー。
*
懐かしのムーディ・ブルース
Moody Blues - Nights in White Satin
https://www.youtube.com/watch?v=MjUqfRrWwcM