Thursday, August 16, 2018

人種差別撤廃委員会・日本政府報告書審査(1)


2018年8月16日午後3時~6時

国連人権高等弁務官事務所(パレ・ウィルソン)1階会議室

人種差別撤廃委員会96会期



*以下の記録は現場での簡単なメモです。ダブルチェックを経ていません。残念ながら意味不明の部分もあります。訳語の選択もいい加減です。CERDの雰囲気をごくごくおおまかに伝えるものとしてご了解ください。論文等で引用することはできません。



*今回の日本政府報告書


*人種差別撤廃NGOネットワーク報告書


*前々回(2010年)審査の様子



*前回(2014年)審査の様子







8月16日午後3時~

(傍聴のNGO・取材陣等は50数名で満席)



*冒頭に日本政府によるプレゼンテーション

 日本政府代表団は、伊原純一・在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部特命全権大使、岡庭健・同副代表大使、大鷹正人・国連担当大使、杉浦正俊・人権人道課長ほか23名(外務省、法務省、文科省、警察庁など)。

 日本は1919年以来、人種差平等のために努力し、1948年の世界人権宣言、1965年の人種差別撤廃条約が採択されたが、国際社会の基本的価値、民主主義、人権、法の支配を日本も共有している。第二次大戦以後、日本は国連はじめ国際社会に協力してきた。

1.2016年にHS解消法を制定したが、これはHSには寛容ではいられないという意思表示で或ある。人権教育、ヘイト抑止の努力、促進を定め、HS根絶を図っている。日本は人権擁護の観点から、努力続ける。

2.先住民族アイヌについては、象徴的な民族調和のために、アイヌ文化センターを設立する。2020年、白老町にアイヌ・ミュージアムを開設する。これは長期的国家プロジェクトの一つで、アイヌの伝統を展示する。

3.市民社会との対話については、政府外務省のウェブサイトで情報をアナウンスし、NGOとの連絡をしている。政府はNGO活動の重要性を認識しており、継続対話していく。

4.世界中の各地から日本訪問があり、2010年以後、外国からの訪問が増加している。2020年の東京オリパラを控え、スポーツと人権について理解と関心を深め、オリンピック憲章に従って差別問題に取り組む。

5.リストオブコンサーンにある、HS解消法のことだが、差別的言動の廃止の法律である。各国語で容易にアクセスできるようにし、カウンセリングセンターで英語、中国語、韓国語、ベトナム語などのリーフレットを配布している。メディアにおけるHS、インターネットにおけるHSについても、人権侵害申し立ての受理を行い、多数の削除要請がなされているので、プロバイダーが対処するようにしている。

6.アイヌ民族については、閣議決定で先住民族と認定し、UN先住民族権利宣言の元で位置づけている。2009年、政府はアイヌ政策委員会を設置し、これにはアイヌ民族も入っている。北海道のアイヌの状況としては生活条件に格差が残るのが実情であり、政策を継続していく。教育については第3期促進計画(2016年)があり、奨学生計画を進めている。高校進学率も大学進学率も上昇している、雇用促進やアイヌ文化の保持も課題である。ユネスコは日本について危機にある言語を8言語あげたがその一つがアイヌ語、である。アイヌ語を維持するため、財政支援を行い、オーディオ教材作りを支援している。言葉の保存のためアイヌ語話者を支援している。アイヌ文化プロモーション、言語、文化、伝統的生活の記録も重要である。

7.技能実習生については、2016に新制度となり、2017年に発効した。第1に政府の責任、第2に人権侵害禁止、刑罰、第3にアドバイス、第4に監視、第5にそのための監視機関である。

8.人身売買については、パレルモ条約を批准し、越境組織犯罪対策として人身売買の根絶に努めている。2014年の行動計画があり、人身売買対策委員会を設置し、人身売買根絶に向けて努力している。警察は広範な情報収集を行い、不法就労についてホットライン、リーフレットを多数の言語で配布している。女性相談所で申告を受け付けている。警察は入管・移民担当局へ通報している。被疑者の刑事訴訟手続きについては法務省。また、入管、特別在留許可制度なども。政府は国際移住者機関IOMに協力している。

9.「慰安婦」問題は、条約採択以前、日本が条約を批准する以前の問題なのでCERDで取り上げるのは不適切である。しかし、政府の立場を説明する。これは女性の名誉と尊厳の問題であり、日本政府は官房長官談話で、真摯なお詫び、補償を図った。サンフランシスコ条約や二国間条約で法的には解決済みいである。しかし、政府はアジア女性基金を設立し、首相のお詫びの手紙とともに、償い金をお渡しする事業を2007年まで実施した。日本政府と日本国民の誠実な姿勢である。加えて、2015年の日韓合意で、最終的かつ不可逆的解決に至った。



*ボスユイ委員(日本担当報告者)

 人種差別撤廃条約第1条に基づいた人種差別の定義を国内で採用するべきである。

パリ原則に基づいた独立した国内人権機関の設立に向けた動きがあったはずだが、実現していない。

人種差別撤廃条約4条に関連して、メディアにおいてHSが見られる。差別や暴力が起こらないようにしているか。ヘイト・スピーチについてどのような調査、実態報告があるのか。公人によるヘイト・スピーチに対する制裁があるのか。2016年のヘイト・スピーチ消法には、適法居住要件があるがこれはどういうことか。包括的な法律の制定の必要性があるのではないか。差別発言、特に公人による差別発言がいないように、差別発言をした公人は解雇等の必要がある。2009年の京都朝鮮学校事件では、メガホンをもってヘイト・スピーチをしたと言うが、どのような制裁が法定され、実際に課されたのかがはっきりしない。

 アイヌ民族は16700人という統計がある。アイヌの生活実態調査が北海道でなされた。アイヌ語の危機だが、アイヌ文化が教科書に載っていない、学校で教えられない、是正された情報がない。また、学校でも職場でも差別がある。福祉、教育助成金を求めている。地方自治体にも国にも求めているが、解決していない。歴史的差別が継続している。アイヌについて、どのような法が施行されているのか不明確だ。教育権、労働権、文化、言語の権利が保障されていないのではないか。アイヌの歴史を教科書に掲載すべきである。自分の文化を学ぶこと、高等教育を受けることが重要である。

 琉球は1879年に日本に併合された。先住民として認め、権利を守ることが必要だが、日本は先住民と認めることを拒否している。委員会としては、本土から移住したい人は別として、琉球の先住民性を認め、権利を守る必要がある。

 部落民について、定義を採択し、協議することが必要だ。実際にどのような具体的対策を取っているのか。2002年に同和対策事業法が終了した。2016年に部落差別解消法ができて、初の用語使用になった。教育、相談、婚姻にも問題がある。戸籍の違法閲覧の規制が必要であり、差別を撤廃しなければいけない。

 イスラム教徒に対するプロファイリング、民族的宗教的プロファイリングがなされているという情報がある。

マイノリティ女性に対する侵害、先住民女性に対する暴力があるが、データがない。2015年にジェンダー平等計画ができて、良い影響を及ぼしている。

外国人女性と日本人の結婚、離婚、について、離婚した女性の権利保護が図られているか。

「慰安婦」問題では、沈黙を続けているという報告がある。第二次大戦後、被害者のままの状況が続いている。日本軍による「慰安婦」いは十分な調査・報告が必要である。適切な補償、謝罪が必要である。歴史の事実を否定する発言は遺憾、名誉毀損である。2015年の日韓合意で10億円、1995年のアジア女性基金、民間基金もあったが、歴史的に日本軍による深刻な人権侵害であり、日韓合意は「被害者中心アプローチでない」という情報がある。帝国主義軍隊による性奴隷制であり、人権侵害である。さらに情報が必要である。生存者と家族に適切な措置がなされるべきである。

外国人、移住者難民について、第1に移住者が増加している。基本計画、住居支援、教育支援が欠けており、健康、住居、就業にも困難を抱えている、第2に技能実習生問題は人権侵害、濫用である。2016年11月の新制度で、ゲストワーカープログラム、監視機関設立、プログラム監視というが、実態はどうか。63%増加、27万5000人、そのうちベトナム人1万以上という。労働力不足のため導入されているが、十分な措置がないという情報がある。

外国人の生活実態調査(4000人)によると回答者の40%が住居を断られた経験があり、3割が差別発言、25%が就業できない、「日本人のみ」という告知、看板が公に直接出されている例がある。規制する法律がないからと述べるNGOもある。外国人は年金制度からも除外され、年金に入ることができない。居住外国人の年金加入、健康保険、障害保険が必要である。国籍を差別の根拠にしてはいけない。

公務員の国籍要件の緩和も必要である。長期在住外国人も保護されるべきである。家裁調停員の問題もある。40万のコリアンは植民地時代から、何世代も日本に住んでも外国籍のままである。公務就労、奨学金、義務教育、義務教育を受ける権利の保障がなされるべきである。2017年7月の大阪地裁判決は、コリアンの子どもの教育を受ける権利を認めた。2010年以後、いろいろな問題、特に朝鮮(北朝鮮)との結びつきを理由に無償化除外、高校助成金の廃止が行われている。

人身売買について、原因究明、売買者の起訴、報告がなされるべきである。マイノリティについて、被害の詳細な調査報告が求められる。2005年の刑法改正、2014年改正の内容が不明確である。被害者は減っていると言うが統計はどうか。

難民・申請者、難民条約のもとで、申請が2万あるのに、実際の認定はとても低く、い0.17%、17件という。2016年には、430人が収容されたという。在留資格、難民サポート、貧困、社会保障が受けられない、シェルターは満員、申請者が収容センターに収容され、差別されている。



*クート委員(前回勧告フォローアップ報告者)

 2014年の前回勧告はいくつかの項目に1年内に報告を求めた。回答は2016年8月と11月に提出された。

 外国人女性に対する暴力問題では、日本人男性と結婚、離婚した場合の問題が十分に満足できる形で報告されていない。日本政府報告書の付録には、たくさんの統計があるが、意味がわかりにくい。外国人、市民でない者が2015年に、配偶者もしくはその子ども14万、統計は子どものことなのか、不明、日本人でないのか、不思議な数字である。

 「慰安婦」問題は、報告の中で表明されていないが、さきほど政府代表から口頭で説明があった。

 部落民についての、報告が十分でない。