Monday, August 06, 2018

アイルランド国立美術館散歩


 ダブリンの中心オコンネル通りで、1829年のカトリック解放令を勝ち取ったダニエル・オコンネル像をみて、光の尖塔を記念撮影する。リフィ川を渡ってカトリック教会カテドラル、聖パトリック教会カテドラル、ダブリン城を回る。ダブリンはどこも歴史まみれだ。植民地の歴史がそこここに息づいている。

 午後はアイルランド国立美術館を見学した。入場無料だ。15世紀以後の宗教画、神話画から近世の風景画、肖像画、そして近代の印象派をはじめ、現代までの美術品が展示されている。観覧者は少なく、ゆっくりとくつろげる時間となった。

 中でもカラバッジョの『キリストの捕縛』(1602年)とフェルメールの『手紙を書く女性とメイド』(1670年頃)はとびきりの有名作だ。他にもヤン・ブリューゲル「マルタとメアリーの家のキリスト」、ピーター・ブリューゲル「農民の婚礼」、レンブラント「出エジプトの光景」、ルイスデール「ベントハイム城」、ターナー「プリマスへの船」、そしてモネ、モリゾー、ドガ、ファン・ゴッホ、シニャック、ボナール、ピカソ、マイヨール、ロダンが並ぶ。

 アイルランドの画家ではウイリアム・ジョン・リーチ(1881~1968年)が光っていた。『日傘』(1913年頃)、『コヴェントの庭』(1913年頃)はいずれも妻エリザベスをモデルにした秀作である。美術館で販売しているカタログも、この2作と『キリストの逮捕』『手紙を書く女性とメイド』を表紙に使っている。

Highlights of The Collection, National Gallery Ireland, 2016.

 美術館を出て近くのカフェでコーヒーを啜った。Procol HarumWhite Shade of Paleが流れていた。懐かしい。でも、アイルランドじゃないよな、と思う。Van MorrisonCrazy Loveだったら良かった。そう言えば、Bob DylanVan MorrisonのデュオのCrazy Loveもあったな。

コーヒーの後、1798年蜂起記念公園まで歩いた。町の中心を流れるリフィ川に沿って西へしばらく歩くと、トラムと鉄道のヒューストン駅の手前、装飾美術歴史博物館の南側に小さな公園がある。町の中心部の公園には市民や観光客があふれていたが、1798年蜂起記念公園では数人の市民が木陰で休んでいるだけだった。

 アメリカの独立とフランス市民革命は西欧世界に多大の影響を与えたが、アイルランドでもイギリスからの独立をめざすアイルランド人連合が組織された。だが、1798年のウェクスフォードの蜂起は鎮圧され、多くの市民が斃れた。公園にひっそりと置かれた慰霊碑に市民の名前は刻まれていない。

 しばらくアイルランドの植民地の歴史を想起しながら木陰で読書。