Wednesday, March 23, 2011

グランサコネ通信2011-11

グランサコネ通信2011-11

3月14日

東日本大地震のことで、家族は大丈夫か、と聞かれます。仙台に友人が居るが、どうなっているかはわからないと答えています。京都に友人が居るが大丈夫かといった質問もあり、京都は被災地から遠い、と説明しています。福島原発の爆発映像はやはり衝撃的だったようです。

インターナショナル・ヘラルド・トリビューンも一面トップで報じています。一面と五面に大きな写真つき。日本がこんなに大きく報道されるのは珍しい。

ジュネーヴで開催中の国連人権理事会16会期は、3月9日が子どもの権利の集中討論、10日が人権活動家の権利(人権活動家やジャーナリストが襲撃される問題など)、11日午前がテロリズムと人質問題でした。11日午後は議題3の基本的人権の一般討論でした。

私は3日から9日まで一時帰国していましたが、9日の深夜にこちらに戻りました。10日午後には発言の順番が回ってくる見込みだったので、朝からずっと待っていましたが、審議が遅れて進行していたので、今日はもう回ってこないかなと思いコーヒーを飲みに出がけに、出入口のところで、知り合いに声をかけられて、JWCHRの順番が前の方になっていたよ、と教わりました。慌てて確認したところ、まもなくまわってくることがわかりました。私の前の予定だったNGOが15団体ほど、後ろに回ったり、キャンセルしたりで、まもなく私の順番になるところだったのです。予告なしで順番が変わるので時々チェックしないと危ないのです。コーヒーを飲みに行っていたら、発言できないところでした。

1)人権活動家の権利

このテーマはかなり前からいろんな形で取り上げられてきました。古くは赤十字を初めとする医療関係者、さらには人道支援スタッフ、ジャーナリストなどが、誘拐、暗殺、人質などにされてきたからです。マーガレット・セカギャ「人権活動家の権利特別報告者」が、第3回報告書で女性人権活動家の人権を中心に報告したので、各国政府もNGOも、女性の権利問題に絡めて発言していました。約50カ国の発言がありましたが、日本政府は発言しませんでした。アメリカは北アフリカにおける人権状況について発言していましたが、内容が人権k集うかの権利からやや外れていました。おもしろかったのは、アメリカの次がキューバで、アメリカにつかまっているキューバ人のことを取り上げ、「アメリカが許すテロリストは人権活動家であり、アメリカが許さない人権活動家はテロリストとされる」と批判していたことです。

2)テロリストの人質問題

昨秋の人権理事会決議で、今回このテーマについて議論することが決まっていたそうで、最初に、カン・キュンファ人権高等弁務官代理が、人質をとるのは犯罪であり、人質禁止条約に違反する、国際人道法にも反する、国際刑事裁判所規程にも戦争犯罪と規定されているといった導入発言をしていました。人質発生の防止や、被害者の救済・補償にも触れていました。続いて、マーティン・シャイニン「テロとの戦いにおける人権特別報告者」、カメル・レザグ・バラ・アルジェリア大統領顧問、セシリア・キスンビン・フィリピン国家人権委員会コミッショナーなどが基調発言。20カ国ほどが発言。日本政府は発言しませんでした。

ちょっと流れがわかりませんでした。もともと、人権委員会の終わりごろから、アメリカとEUが中心に「悪の枢軸」叩きと、アフガン戦争、イラク戦争がありました。西側は、アフガンやイラクにおける人権問題を取り上げてきました。NGOは、アフガンやイラクにおけるアメリカによる人権侵害を訴えてきました。その対立の中で、アメリカと各国政府によるテロリスト対策と称する拉致と拷問が発覚したことによって、「テロとの戦いにおける人権特別報告者」ができました。「テロとの戦い」を理由としても誘拐や拷問は許されないからです。こうした流れとは別に、テロリスト側による人質作戦を槍玉に挙げるのが今回のテーマになっていたようです。

Tra La Terra e il Cielo, La Meridiana, Barbera d'Asti Superione 2005.

3)羽生善治『大局観--自分と闘って負けない心』(角川ONEテーマ、2011)

同じ新書で先に『決断力』があり、やはり将棋の谷川浩司『集中力』も出ています。

「勝負の手を読む力は若いときが上だが、棋士は年齢を重ねるごとに大局観を身につけ、『いかに読まないか』の心境となる。それは年齢とともに熟し、若き日の自分とも闘える不思議な力を与えてくれるのである。」

天才にしては平凡な話が多いのですが、だからこそ前著は売れたのでしょう。本書でも、100キロのマラソンは大変だが、毎日1キロなら全部で100キロ走れるといったレベルの話が出てきます。毎日毎日の積み重ねこそが天才の秘密であり、決して手抜きしないのです。

4)高橋敏夫『井上ひさし 希望としての笑い』(角川SSC新書、2010)

著者は文芸評論家・早稲田大学教授。2010年4月9日に井上ひさしが亡くなったので急遽書かれた本です。40年にわたる井上ひさしの笑いの世界をコンパクトにまとめて、とてもわかりやすく整理しています。

「希望としての笑い--井上ひさしが求めたもの」/「同時代と共振し、同時代を一歩踏み出す」/「言語遊戯者の騒乱へ、転倒へ、覚醒へ」/「言葉から集団、国家までを視野に入れる」/「フツー人の戦後史と、これからのたたかい方」/「世界をゆさぶり、笑いをもたらす表現のたえまなき模索」/「ふたたび希望としての笑い--井上ひさしから引き継ぐ」。

新書なので、テーマをかなり絞ったとのことで、それだけに圧縮されていて、いい入門書になっています。

評伝ではなく、作品をテーマ別に。作品中心でも、時期区分をするか、テーマ分けするかでかなり違うと思いますが、本書はテーマごと。小説、演劇、エッセイとの分類もしていません。他の方法はないだろうかと考えながら読みました、私なりの井上ひさし論のために。